メガヒットゲームを作るための ゲームデザインパターン GameDesign pattern for mega hit Games.

まえがき

いつも記事を見ていたきありがとうございます。新田です。

この資料は2007年に作られたもので、もうだいぶ前の資料になりますが、内容としては普遍的なものを目指しており、今でも十分役立つものと考えています。

私の仕事は1996年頃にゲームプログラマから始まりましたが、そもそもはゲームを作りたい、ゲームを企画してヒットを作りたいという渇望から始まりました。

さまざまな参考資料を探しましたが、ゲームデザインについての資料はほぼ皆無で、「コスティキャンのゲーム小論」が、自分の中では最も密度の濃い資料でした。

ほかでいうと田尻智氏の「新ゲームデザイン」が傑出しており、枝葉の論ではなく、「新しく面白さを生み出す」という点、つまりオリジン、ゲームの樹形図で言う根の部分を作ることに詳しかったと記憶しています。

ゲームデザインは人のこころを動かす技術です。ですので、自然に心理学やNLP、マーケティング、コピーライティングの分野にも「面白さ」の真髄を求めるべく、食指を伸ばしていきました。

その後ビジネスの知識を生かして独立し、食い扶持を作りつつゲーム制作をしてきましたが、ゲーム制作とはゲームデザインだけではなく、コスト計算やチームマネジメントも含めた総合的なものであり、それを前提としたゲームデザインが必要になると、ひしひしと実感しています。

この資料は、そうしたゲームデザインのエッセンスを凝縮し、「使える」ものをピックアップしたものになります。

あなたのゲーム制作に役立つことを願っております。

■目次

■はじめに

■インパクトを作る方法   

●インパクトのおかげでミリオンブレイクしたゲーム

●ゲームにおける衝撃の実際

●プレイヤーを騙す:アサンプションテクニック

●どんでんがえしの文法

■驚かせる流れはあるか

●感情を動かす流れを作れ!

●ブレインダンプで頭の中を全て出し切る

■振り幅:ギャップ・メソッド

●振り幅が大きいほど、衝撃が走る!

■次の日への楽しみの作り方

●ゲームにハマったという既成事実を作る

●ゲームは逆算して作ると、ヒットする

■不思議があると人はハマる

●ゲームにおける不思議はこう作れ!

●純粋な意味でのゲームが、人をワクワクさせる

■プレイの組み合わせが多様か

●底なしの面白さを持ったゲームたち

●底なしゲームの共通項はこれだ!

■ギリギリ感の作り方

●ゲームにおけるギリギリ、スレスレの緊張感!

●わからなくすると、焦る!

■爽快感の作り方

●溜めて溜めて溜めて…まだ溜めろ!

●あらゆるところで溜めて発散=快感!

●任天堂のゲームにおける、高度な「溜めと発散」

●「溜めと発散」のポイント

■プレイ中の「気づき」を作る

●宮本氏の小さいけれど大きな発見

●口コミの合理的な作り方!

●口コミを起こすための考え方

●人の言葉を追え!

■「感情」をゲームジャンルを決める指標にする

●人はゲームに「昂ぶり」を期待している

●スリラー(恐怖)

▼RPGにおける戦慄の恐怖

●ミステリー(謎解き

▼すべてのエンタテインメントの根源になる要素

▼レバレッジでゲームを何百倍も面白くする

▼レバレッジを応用する!

●ジーロット(眩暈的熱中)

▼「熱中」の作り方!

▼「ああっ! 手が回らない!」

▼「100万本売れないゲームは作らない会社」も

▼ゲームでたったひとつの感情を実現する

▼さらに、ゲームの面白さを引き上げる方法

●ジレンマ(戦略の葛藤

▼悩みどころを作るとモチベーションが上がる

▼「読み」を分類する

▼最強を作ってはいけない理由

■終わりに


■はじめに

こんにちは、ゲームのしくみの新田です。

今回は「メガヒットを作るためのゲームデザインパターン」と題して、ヒットした ゲームに含まれている要素を連ねてみようと思います。

ファクターとは「要素」のことです。

おそらく、これを読んでいるあなたもゲームをプレイしながら 感じたことがあると思います。

「ゲームの面白さを感じた要素」を。

それはゲーム・システムの部分かもしれないし、ストーリーの部分かもしれない。

いずれにしろ、ゲームを今後作りたい、仕事で作っている、という場合、 それを感じたらすぐさまメモ! するのをお薦めします。

なぜかというと、そのあなたの経験は、必ずや次のゲーム開発で生かされるからです。

それを題材を変えて使うなり、応用して変形させてみたり。

新しいアイデアなどはこの世界にはなく、新しいと呼ばれるものは今までの ものの組み合わせでしかないからです。

だから「面白さ」のパーツを集めておくと、あとで「トク」をしますよ。

私は自分で自分を「ゲーム右派」と呼んでいたくらい、 ゲームシステム派で、これにはだいぶこだわりがあるので、

ストーリーの部分より、ゲームというメディアが持つ独自の部分の要素に注目して これを書きました。

項目については一応区切りとして書きましたが、あまり意識せず、 散文的に書いています。

とりあえずは、今回のレポートは「メガヒットゲームを作るためのゲームデザインパター ン」の第1弾とします。

いろいろなレポートを書きたいと思っており、ゲームデザインーシリーズの第2弾を 書くかはまだ未定ですが、まずは第1弾です。

このレポートは、あなたが作るゲームがヒットの要素を含んでいるのか? という、 チェックシートとしてもお使いいただけます。

では、このレポートがあなたのゲームデザインライフに役立つことを祈って。

ゲームのしくみ研究委員会 新田法継


■インパクトを作る方法

インパクト。

衝突、という意味ですね。

ダンプカーとダンプカーが正面衝突!

そして大爆発!

みたいな強烈な出来事で、突出した感情の昂ぶりをゲームで実現することが できれば、そのゲームは「感情を動かす」というエンタテインメントの役割をクリア したわけですから、基本的な意味で成功です。

一定以上の強烈なインパクトがあるシーン、もしくはゲームのイベントを 盛り込むことができれば、そのゲームは「口コミ」を生み出します。

Contents

●インパクトのおかげでミリオンブレイクしたゲーム

例えば、これは私がよく出す例えなのですが、初代「バイオハザード」が そうでした。

「バイオハザード」は、発売当初、ゲーム雑誌で30位以内に入ったくらいの、 ごく普通のゲームだったわけです。

ただ、メーカーがカプコンだったため、ネームバリューのおかげで、 初期ロット(最初に製造するゲームソフトの個数)がけっこう出たんですね。

しかし、状況はその後、変わりました。

そしてとうとう1位になってしまった。

当時のことはよく覚えているのですが、このゲームは明らかに「口コミ」を生んで いました。

私のまわりでさえ、

「バイオハザードは面白いよ。ゲームを始めて、ちょっとするとわかる」

こういう人が何人も出たんです。

●ゲームにおける衝撃の実際

実際にプレイすると、その謎は解けました。

衝撃的なシーンとともに。

私はそのシーンで、思わず「うおおお!!!」と大声をあげてしまった次第です。

それだけインパクトがあったんです。

ゲームは、まずムービーで盛り上げたあと、外にはゾンビ犬がいて 出れず、館内を探索するという話になり、主人公も館内を探索することに なります。

少し探索すると、さっそくゾンビに出逢います。

このゾンビは廊下でしゃがんで人を食べており、明らかにゾンビとわかる シチュエーション(状況)になっています。

1匹目はダメージを受けつつも倒すことができました。

ここで、動きが遅いながらも、ゾンビは確実にプレイヤーにダメージを与えることが、 プレイヤーに認識されます。

こいつは敵だと。

噛まれまくっていると、死ぬ、と、わかるわけです。

ごく簡単な「ゲームオーバー」のチュートリアルですね。

プレイヤーはここで、心の準備ができます。

このゲームはあのゾンビにさえ噛まれなければいいんだな、ゲームオーバーには とりあえずなることはないな、と、プレイヤーは思うわけです。

これがゲームに盛り込まれた、心理的な罠とも知らず。

再度、プレイヤーは館内を探索します。

部屋に入ると、すぐにゾンビがいないかを確かめます。

動きが遅いので、いきなり目の前にいなければOKです。

開発者もいきなり目の前にゾンビを出すと「卑怯」と思われることがわかっているので、 そういう配置にはしません。

探索は、ある部屋に必ず入ることになります。

そこは廊下なのですが、奥まっていて、奥が見渡せます。

だからすぐに「ゾンビはいないな」とわかります。

ホッとひと安堵。

そこで「次の部屋次の部屋」と、プレイヤーを進めるわけですが…。

そこで突然「ガシャアアアアアン!!」と 窓ガラスが割れ、2匹のゾンビ犬が出現!!

プレイヤーは予期しない出来事に、強烈なインパクトを受けます。

そして犬が人間のゾンビと違い、
足が速いことにも驚きます。

ダメージを受け、焦るプレイヤー!

そして大安堵。

なんとか向側のドアにたどり着き、廊下を脱出。

ドキドキしている心臓の鼓動を感じながら「なんじゃありゃあ!」とちょっと怒りにも 似た気持ちになるわけですね。

●プレイヤーを騙す:アサンプションテクニック

「ゾンビは部屋に入ればいるのがわかる」

「ゾンビは遅い」

こういうアサンプション(前提)が、直前に植え付けられていたので、プレイヤーは 「この部屋にはゾンビはいない」と勝手に解釈して、安心して先に進んだ。

この、「アサンプションを植えつける」というテクニックは、映画などではよく使われる テクニックです。

おそらく企画の中に、こういうテクニックを知っている人がいたのでしょうね。

このテクニック1つで、「バイオハザード」は
ミリオンセールスのゲームにのし上がることが
できました。

このテクニックを知っているか知っていないかで、非常に大きな差が出るんですね。

(もちろん、カプコンの積み上げられたゲーム開発ノウハウによるゲームクオリティが あったことも、付記しておきます)

「アサンプションを植えつける」という
テクニックは、まず、人の認識を作るところ

から始まります。

人は、一度ある経験をすると、それを覚えますが、「バイオ」の場合はそれは ゾンビとの戦いでした。

ゾンビは動きが遅いもの、とまず記憶に残ります。

ゾンビが遅い、というのはゾンビ映画でもそうですから、この認識はある意味 「ガチ」であり、簡単には壊れません。

(こういうメジャーなものの「認識」は強いので、よくエンタテインメントで利用されます)

それから、部屋に入るとゾンビが確認できる、という部分。


ゲーム的に、部屋に入るごとに、ゾンビに注意しなければ、という気構えができます。

しかし入ってから見当たらなければ、それはここにゾンビはいない。

安心だ。

部屋に入るのを繰り返しているうちに、そういう認識ができるんですね。

繰り返し、繰り返し、同じパターンの状況をプレイヤーに与えると、パターン認識を して、プレイヤーは何も考えなくなります。

このゲームはこういうものなんだ、と安心するんですね。 そうやって安心させたら、こっちのもの。

これで「プレイヤーを騙す」準備が整いました。

あとは、「認識にはない」出来事を起こせばいいわけです。

いきなり窓ガラスを割った大きな音でビビらせるとともに、足の速いゾンビ犬を プレイヤーにけしかけて、「パターン認識」と違うことをして、「今までの常識」を 壊してしまうわけですね。

●どんでんがえしの文法

ここで使われているゲームの文法は、映画や小説などでもよく使われる、 どんでん返しの文法です。

(詳しくはぴこ蔵さんの http://www.arasuji.com をどうぞ)

「Aだと思っていたらBだった」


というやつですね。

「ゾンビは部屋に入ればいると思っていたら、
窓から出てきた」

「ゾンビは足が遅いと思っていたら、
ゾンビ犬は速かった」

こういう形でプレイヤーを騙したわけです。


これは、ヒットゲームを作り出した文法でもあるので、覚えていて損はないですよ。

あなたが作るゲームで応用してみてくださいね。

ゲームの出だしで使えば、大きな評価を受け、口コミが発生すること間違いなしで す。

私はこれを「インパクト・メソッド」と呼んでいます。

セコンドメソッドの1つです。


■驚かせる流れはあるか

「驚かせる流れ」はすでに紹介した「インパクトはあるか?」と通じるものですが、 基本的に、ゲームは

プレイヤーの感情を動かすこと

を大命題として持っていて、「感情を動かす流れ」をゲームに
組み込むことが必要になります。 ゲームを面白くするには…

感情を動かす 流れを作れ!

だって、緊張も感じず、驚きもせず、う~んと考えさせられもしない、感情を 動かされないゲームをやっても面白くないですよね?

焦ったり、冷や汗をかきながら画面に集中したり、緊張してボタンを押す指に 力が入ったり、そういう状態にあなたがなったら、それは相当感情が昂ぶっていて、

「ゲームにのめりこんでいる」


ことを示している。

それは言うまでもないですが、面白いゲームをプレイしているからそうなるのです。

「流れ」を作るんです。

「感情を動かす流れ」ですよ。

●感情を動かす流れを作れ!

驚かす流れとは、どういうものだろうか?

先の「インパクト・メソッド」以外にどういうものがあるだろうか?

基本的には、あなたの体験・経験に、

その流れは隠されています。

1・あなたがゲームをやっている最中に、非常にビックリしたことはないか?

2・現実の出来事で、腰が抜けるほど驚いたことはないか?

それを探してください。 それ以外にも、

・大声を出して怒ったこと

・飛び上がるほど嬉しかったこと

・涙が止まらないほど悲しかったこと

・笑いすぎてお腹が痛くなったこと

・涙するほど感動したこと

そういう出来事、ありましたよね?

そして、その流れの中にある要素を割り出してみるんです。

Aがあって、Bになったから、○○になったのだ! と。

私はこういう「流れ」を生み出すときは、「ブレインダンプ」という 発想法を使っています。

●ブレインダンプで頭の中を全て出し切る

まず、上記の質問の答えを、ガーーーーッ!! と、上げていくんです。 とにかくたくさん出します。

私はスケッチブックか、テキストファイルによく書き出します。

頭の中がからっぽになるまで、出します。 10とか20とかじゃ、まだだめです。 それではやる意味がありません。 時間の無駄です。

最低でも、100。 できるなら200は欲しいところです。

出している間は、トイレや食事などをしてもいいのですが、作業は、 ブレインダンプしかしてはいけない。

3日かかってもいいので、とにかく頭の中の情報を出し切る。

そして出し切ったら、その中で特に使えそうなもの、効果が高そうなもの、つまり、 より人の感情を大きく昂ぶらせそうなものを探すんです。

これをやると、非常に大きなメリットがあります。

語彙が増える。

引出しが増える。

やってみてください。

実感できます。

こうして、ゲームの中で使う「驚かせる流れ」を出してみてくださいね。 喜怒哀楽、感動についても、ゲームの中で用いることができます。

とにかく流れを盛り込むことです。

ゲームシステムは、その流れを実現するための構造になるんですね。


■振り幅:ギャップ・メソッド

振り幅という言葉は、番組プロデューサーで有名なおちまさとさんがよく使っている 言葉なのですが、出来事のギャップを表す言葉です。

詳しく説明しますね。

例えば、50点ばかりとっていた生徒がいて、100点を取った。

おお~すごい。やったじゃん。

しかし、これよりも、0点ばかり取っていた生徒がいて、その生徒が100点を 取ったほうが、

おおお~~~~!!?? どうやったわけ!?

と、感じますよね?

しかし、しかし、その生徒よりも、学校には一切来ず、暴走族で街中を 暴れまくっていた、漢字も算数もわからない、生まれながらのバカが、学校にたまに きたと思ったら100点を取った。

このほうがより、

はああ~~?? うそつけ! どうなってるんだよ!?

と、なるわけです。

感動で涙と鼻水を流す人すら出ます(笑)。

●振り幅が大きいほど、衝撃が走る!

マイナスが大きければ大きいほど、

プラスになったときの感動は大きい

 振り幅は、マイナスが大きければ大きいほどいいし、プラスも大きければ大きいほど いい。

先のテストの点数であれば、100点以上はないですから、マイナスをガーーーーッと 大きくするわけです。

そうすると振り幅は大きくなります。

振り幅が大きくなればなるほど、反動がついてプラスになったときの感動が大きく なります。

これはゲームにも応用できるし、実際に使われていますよ。

例えば、RPGなんか典型例。

レベル1でスライムを倒すのがやっとだった主人公が、レベル40くらいになると ドラゴンまで倒せるようになる。

この強さのギャップにしびれますよね?

また、レベルが高くなると、かつて1とか2とかしかダメージを与えられなくて、死にそうに なるほど苦戦していたスライムを、一撃で100以上のダメージを与えることができる ようになる。

するとレベルの低かった頃を思い出して「うほーっ! 楽勝すぎ!」 「どうだ、思い知ったか!」となるわけです(笑)。

昔はこのシステムを知っただけで、みんな「やってみたい!」と思ったわけですね。

今のRPGは、システム的にも、ストーリー的にも、最初から強い感じなので、 全然感動がなくなってしまいましたが。

だからもっと最初が弱くってもいいんですよね。

そのほうが、崖から這い上がった感覚があるし、それが嬉しい。 最後はドラゴンボール並みに強さのインフレが起こってもいいですし。

乞食で死にそうだった少年が、最後は超能力を使えるようになって地球を救う! みたいな。

「振り幅」は、ゲームのあらゆる要素に適用できます。

バランス、世界観、システム、ゲームで実現する「感情」を作り出すときのしかけ、 キャラクタのデザイン、音楽、SEなどなど。

後ほど説明しますが、この「振り幅」は、システム的に「溜めと発散」という形で、 ゲームに盛り込むことができます。

プレイヤーの感動を大きくするために、「振り幅」を活用しましょう。


■次の日への楽しみの作り方

次の日への楽しみ。

これは非常に大事です。

ゲームにハマらせる「モト」です。

次の日への楽しみがあるということは、

「プレイをやめたくないのにやめざるを得なくなった」

という状態が、まず前提としてありますね。

そうでないとすれば、次の日にならないとシステム的に先に進めないとか、 アイテムが出ないとか。

そういうことですね。

では、やめざるを得なくなった状況とは、どういう流れで起こるか? 考えてみましょう。

ここに延々とゲームをしている人がいます。

なぜ延々とゲームをしているのか。

それは先を見たいためであり、先を見たいがために、経験値稼ぎをしたりして 時間が過ぎ、寝る時間になってゲームを止めざるを得ないんだけど、無理をして 朝までプレイしてしまう…。


そういう状況が想像できますね。

こういうように、 人のプレイを想像することは
大事ですよ。

そこから、どういうゲームを作ればそういう状況に持っていけるか、考えれば いいからです。

これ、さらっといいましたが、奥義的な考え方です。

だいたい、「ゲームにハマる」というのは、そういう「ハマった状態」に持っていけば、 ハマったことになります。

●ゲームにハマったという既成事実を作る

え? 意味が分からない?

わかりやすくいうと…。

一般には、「ゲームを朝までやってしまった!」というセリフを誰かから聞くと

「ああ、ハマってるね。そんなに面白いの?」

となりますよね。

朝までやるようなゲームは、ハマるゲームなわけですから…。


逆に言えば、じゃあ朝までやらせれば
いいわけです。

強引にでも。

ゲームシステム的に、そういうふうに
持っていくんですよ。

ハマるゲームというのは。

例えば、これは「チェイン・リアクション・フロー」としてセコンドメソッドで 公開しているので、多くは語れませんが、多くのRPGは、そういうゲームシステムに なってるんです。

朝までやらせるような構造にね。 なんとも、エグいですね(笑)。

例えば、こんな感じです。

1・セーブしたけど、話の先が見たい。

プレイを続けた。

2・話に区切りがついた。

でもセーブポイントがない。

3・セーブポイントまで行った。

そしたら話が進んでしまった。

4・1に戻る。

どうです? そう、

無限ループ

ですよね。

これだと朝までやってしまいそうですよね?

もちろん、話が面白いのが前提ですけどね。

明らかに、ゲームをやめる区切りがつけづらくなってるわけです。

やめても、次の日にしたいことが残っている。

「どこでもセーブ」なんて機能は、実はハマらせるためにはないほうがいいわけ です(笑)。

●ゲームは逆算して作ると、ヒットする

頭のいい人は逆算しています。

「ハマる」という状況を逆算して作っている。

だから、ハマるゲームが作れる。

頭のいい人は、こういうことをしています。

沼地にハマると、足がぬかるんで、片方の足をあげると、もう片方の足が沈む。

だからといって、沈んだ足を上げると、今度はまた逆の足が沈む。

ずっとそれを繰り返していないとズブズブと全身が沈む。

これがまさに「ハマる」という状況ですね。

これを実現したのが先ほどのシステムというわけです。


■不思議があると人はハマる

ゲーム内にある「不思議」は、プレイヤーに「先をプレイしたい!」と思わせます。 なぜか?

先を期待するのです。

シナリオで言えば、伏線です。

伏線があるから、「これからどうなるんだ?」と、読み手はストーリーの先を 知りたくなる。

ツァイガルニック効果ですね。

人は、不完全なものがあると完全にしたくなる
性質を持っているんですね。

クイズがあれば、答えを知りたくなる。

事件があると、解決するかが知りたくなる。

原因があれば、結果を知りたくなる。

不思議があるから、プレイヤーはゲームを続けたいと思う…。

これは普遍原理です。

●ゲームにおける不思議はこう作れ!

ではゲームにおける不思議とはなんでしょうか?

「解かれていない謎」

です。

ゲームで端的にそれが実現しているシステムを持っているものは、プレイヤーを グイグイと引っ張っていく力があります。

ハマらせる力があります。

多くの人はそれに無意識にハマっているんですね。

実は、開発側も、知らずに作っていることが多い。 知らずにシステムに組み込んで、「お、これは面白い」と思っているんですね。

それを意図的に盛り込むと、ゲームはさらに面白くなります。

「解かれていない謎」は、ゲーム内に簡単に作り出せます。

例えば、オートマッピング機能。

行っていない部屋があると行きたくなる。

ツァイガルニック効果です。

アクションゲームにもありますよ。

どうしても取れない高い場所に、アイテムがある。

どうやれば取れるんだよ!

ジャンプしても届かないよ!

諦めて先に進むと、ジャンプ力アップのアイテムを入手。

「そうだ。これがあれば、あのアイテムが取れる!」

シナリオで言う、伏線の回収です。

ほら、こういうの、任天堂のゲームには多くありますよね。

メトロイドだと、敵を凍らせてそれを足場にして上に登るとか。

ゼルダだと、いかだを手に入れて、堀に囲まれたエリアに行くとか。

なにか1つアイテムを手に入れると、今まで謎だったいくつものエリアにいけるように なる。

よし! 謎を解くことができる! ワクワク!

さあ解きに行くぞ!

だから任天堂のゲームはワクワクするんです。

●純粋な意味でのゲームが、人をワクワクさせる

「純粋なゲームとは、宝探しの冒険である」

これはあるゲームデザイナーの言葉です。

冒険とは未知の場所を探り、謎を解き、不思議を解明し、宝を手に入れる 旅です。


この場合、宝を手に入れることは結果に過ぎません。

謎を解いて不思議を解明するのが、楽しみの中心なんですよ。

不思議をゲーム中に用意しましょう。

そして、それをプレイヤーに教え、意識させ、その謎を解く 楽しみを与えるんです。

ゲームがワクワクするものになりますよ。


■プレイの組み合わせが多様か

ゲームというものは、先が見えてしまうと、

「あ、このゲームはこれをクリアすると終わりなんだな~」

と、ゲームの底が見えてしまった氣になります。

アドベンチャーゲームとか、RPGとか、そうですね。 一本道のシナリオを持ったゲームは、シナリオを全部消化しきってしまうと、そこでゲー ムが「尽きて」しまいます。 もうやることがなくなるわけです。

あとに残された楽しみがわかってしまい、なんだか寂しい氣になる。

あなたはそういう気持ちになったことはありませんか?

でも、ゲームの中には、「楽しみの底がない!」と思わせてしまうゲームが ありますよね。

もう死ぬまでずっと楽しめるんじゃないかと思うゲーム。 延々とプレイしていても、飽きない。 いつ始めても、面白い。

やるたびにハマってしまう。 マイ殿堂入りゲーム。 いつ机の中から取り出してやってみても面白い。 久しぶりにやってみても「やっぱりハマる!」なんて感動してみたり。

こういうゲームはプレイしていてその奥の深さに、思わず「すげえ…」と 唸ってしまうことも。

プレイしていて、

「だ、だめだ。ここらでヤメないとハマってしまう!」

そういうふうにすら思えることがある。

ゲーム開発をする人は、できるならこういうゲームを作ってみたいですよね。 では、そういうゲームを作るにはどうしたらいいのか?

それを既存の「底なしゲーム」で確かめてみましょう。

●底なしの面白さを持ったゲームたち

・将棋

将棋は紀元前200~300年に古代インドで発祥したと 言われる、非常に歴史の古いゲームです。

そのころは「チャトランガ」と呼ばれていたようです。

日本には奈良時代に中国から伝わったと言われています。

実はチェスもこのゲームが起源のようです。

根は同じなんですね。

それだけ古くから遊ばれている将棋。

奥が深いのはなぜか?

それは「盤面の駒の取りうる選択肢が多い」
からにほかなりません。

日本の広範囲に将棋が広がっているのは、伝統と歴史があるゲームであるためで、 ルール自体の「面白さ」「刺激の高さ」については、現在のテレビゲームのほうが 圧倒的に高いでしょう。

将棋は抽象化された駒を使いますが、現在のテレビゲームの画像の臨場感や 音声、触感までに至るインタラクティヴ要素とは比べるまでもありません。

ただ「奥の深さ」の基本を、将棋は示して
います。

何百年も「面白い」と、語り継がれてきた「奥の深さ」があるんです。

将棋は、序盤と終盤こそ指し手がパターン化していますが、中盤の「読み」による 攻防戦は、達人の域に達して初めて理解できるもの。

つまりその域にまで、プレイの昇華が可能なゲームであるわけです。

要は、「攻略」のための「読み」の手筋が相当深くなるため、上達の幅が広く、 プレイに「粘り」を生むわけです。

勝つために深い読みが必要なゲームは「粘り」を生みます。

勝つことに固執することで生まれる「粘り」。


「もうちょっと考えさせて!」というやつですね。

これは重要なキーワードです。

・麻雀

麻雀は中国の歴史4000年の中で生まれた…と思う人もいるかもしれませんが、 麻雀の歴史は意外に浅く、もともと中国で19世紀後半(1860 年前後)に 遊ばれていたカードゲーム「マーチャオ(馬弔)」が起源だとされています。

そうなんです、生まれてからまだ140年ほどしか経っていないんですね。 これは意外ですね。

しかし麻雀は驚くほどに大衆に受け入れられているゲームです。

単体のゲームで、駅前に実店舗を構えて商売が成り立つほどに受け入れられて いるゲームは、ほかにありません。

麻雀専門の漫画雑誌があるというのも、考えてみればすごいことです。

私はゲームセンターでアルバイトをし、売上の管理をしていたことがあるのですが、 多くのゲームは新作として入荷してから数ヶ月しか売上が持ちません。

しかし麻雀は常に一定の売上を上げる、粘り強く指示されるゲームでした。 (蛇足ですが、ほかはスポーツゲーム、カードゲームが安定した売上でしたね)

なぜこれほどまでに麻雀は世の中に受け入れられているのか?

麻雀の魅力は、相手の上がり牌の読み合いもありますが、やはり 一番に来るのは「点数の高い上がり役による逆転」でしょう。


麻雀は、狙おうと思えばいつでも高い役を狙えて、逆転することが可能です。

もちろん高い役は上がりづらく、リスクが大きいわけですが。

これは麻雀が持つ「ランダム性」に起因しています。

ランダムとは、乱数、めちゃくちゃな数値のことです。

私はだいぶ前から「ランダム性」に注目しているんですが、なぜ注目しているかと いうと、ランダムによってゲームは、

「毎回違った状況を生み出すことができる」

からです。

これをうまく使えば、「毎回新鮮な状況」を生み出すことができます。

つまり、「何度プレイしても面白い」ということにつなげることが できるわけです。

また、ランダムは、先にも言った「逆転」の要素も生み出します。

将棋は極まってくると、初心者が達人に勝つことは絶対にありえません。 偶然の要素がないからです。 完全に個人の実力が反映されるゲームだからです。

しかし、麻雀はそれが起こりえます。 逆転が起こりえます。

なぜかというと、麻雀は配られる牌の種類が常にランダムですから、上がりやすい 配牌と、そうでない配牌の両方の状況が、対戦者全員に平等に訪れるからです。

麻雀の上級者が悪い配牌、初心者がいい配牌であったとき、勝敗の逆転が 起こりえるわけですね。

「運の差」とでも言えばいいのでしょうけど、例えば以下のような場合ですね。

上記の場合、初心者が運によって最高で2~5までの実力を出せて、 達人が4~8の実力を出せたとするとき、達人が実力を4しか出せなかったとき、 初心者が5の力を出せれば勝てるわけです。

ただ、麻雀の場合、確率を長い目で見るとやはり腕の差ははっきりします。

1回1回の勝負で、初心者でも勝つ可能性があるということです。

それでもランダム要素があると、盛り上がります。

いわゆる「拮抗」が起こりやすくなるからです。

明らかにこの人が勝つ…という状況は、見ていて面白くない。

いったいどちらが勝つんだ? 目を離せない! という状況のほうが、見ていて 面白い。

プレイしているほうも、勝つか負けるかのギリギリを体験するわけですから、 ムチャクチャ緊張せざるを得なくなります。


だからゲームバランスを作る時、「拮抗」を意識することは非常に大事です。

ランダム性を使えば、先の図のような実力のゆらぎが生まれ、「拮抗」が起こりやすく なるんですね。

・ディアブロ

PCゲームのディアブロです。

「100万本売れないゲームは作らない」との理念を持つブリザード社の ゲームですね。

この会社のゲーム、完成度は半端じゃありません。

「ディアブロ I」は完成度が高く、さらにネットゲームの先駆けだったので、売れに 売れました。

「ディアブロ II」は1週間で100万本を販売し、累計では250万本発売しました。

ちなみに「スタークラフト」は350万本だそうです。

ネット上で友達と遊ぶ。 ネット上で誰かと遊ぶ。

ネットで対戦・協力戦ができることは、冒険に無数のバリエーションを生み出します。 また、「モニタの向こうに人がいる」という認識は、プレイの仕方をガラッと変えます。

シングルプレイでは感じない、「ナマの体験」が体験できます。 さらに、他人との「冒険」は、それだけで刺激の強い記憶になります。 ゲームプレイが「思い出」にすらなります。

なぜか?


これは、人が人と関係を結ぶ、根源的な理由に繋がります。

これは、コンピュータとは成し得ないコミュニケーションです。

人が人を恋しく思う原因でもあります。

ではそれはなにか? というと。

「共有」

です。

人と人がゲームをプレイすると「その状況を共有」します。

そうすると、ゲーム内で起こった出来事を、後でそれを話題として話すことが できます。

同じことを体験した、同じものを見た、同じことを認識した、同じ音を聞いた…。

心理学的に、人は自分が認識しているものが本当のことなのか? という不安を、他の人と体験を「共有する」ことで、解消します。

同じことを体験したと認識することで、安心するのです。

ゲームのプレイを話題にして「あのボスは強かったよね!」と盛り上がるのは、 これと同じ作用です。

基本的には、人は人と一緒にいるだけで、共有感が生まれ、安心できます。

例えば恋人がいなくて寂しい、という感覚は、人と一緒にいるだけでとりあえずは 解消されるんですね。

加えて、一緒にいる時間が長いほど、共有感は強くなります。

共有した場所、出来事、時間が多いほど、親近感が強くなります。

実際に共有するだけでなく、自分と相手の過去の共通した出来事を認識する だけでも、共有感は感じられます。

この、共通したものを見出して、安心感のある関係になることを

「ラポールを作る」

と言います。

ラポールとは「掛け橋」という意味です。 人間のこころにかける橋ですね。

では、ゲームにおいて、短時間でプレイヤー同士のラポールを築くにはどうしたら いいでしょうか?

それは、共有する出来事を濃密にすることです。

共有する出来事が濃密であればあるほど、強い「共有感」を感じます。

また、五感を多く使った状況を共有しても、共有感は強くなります。

簡単に言うと、


「半ば強制的に、 つらい状況から脱出するために、
協力し合う状態」

または

「半ば強制的に、なにかを達成するために、
協力し合う状態」

を作り出せばいいわけです。

「半ば強制的に」というところがポイントですよ。

この状態で、五感を多く共有できるようにします。 同じ音を聞かせ、同じ絵を見せて、同じ気持ちを感じさせる。

なるべく多く五感を共有できるようにすればするほど、効果的です。 共有できるものが増えると親密感が増しますから。

共有した出来事が多くなり、共有する時間が長くなればなるほど、 そのゲームの「底なし」感は強くなります。

なぜかわかりますよね?

人間関係の心地よさにハマっていくんです。


良くも悪くも。

さて、ディアブロの「底なし」要素は、説明してきたようにマルチプレイによる 「共有感」でした。

しかしゲームシステムにも、実は「底なし」要素が入っていました。

「自動生成」です。

この要素は「I」にもありましたが、強く出てきたのは「II」からでした。

「 I」はダンジョンだけが自動生成でしたが、「II」ではダンジョンだけでなく、敵、 アイテム、魔法効果にまで自動生成要素が盛り込まれました。

やればやるほど新しい敵、よりよい新しいアイテムが出現し、それがプレイの新鮮さを 維持していたわけです。

すでに知っているダンジョンを探検するよりも、未知のダンジョンを探検するほうが、 緊張感が高くなります。

毎回ダンジョンが変化すれば、毎回緊張感を与えることができるわけですね。

これに加え、「II」はゲームバランスが自動的に調整されるシステムを搭載しており、 敵との戦闘もほどよく緊張を感じられるようになっています。

このように、「ディアブロ」は「新鮮さを生むシステム」と「緊張の調節」機構を 持つことにより、ゲームをプレイすればするほど緊張を感じられるようになっていました。

非常に質の高い「底なし」のゲームシステムを持っていたわけです。

・スーパーマリオブラザーズ

スーパーマリオブラザーズは、誰もが知っている世界で最も売れたゲームの ひとつです。

全世界で累計1億本以上、売れています。 すごいですね。

こういうゲームを分析することは、非常に勉強になりますよ。

スーパーマリオの底なし要素は、私が分析するに2つあります。

1つ目は、「ゲーム性のスイッチ」という
要素です。

この革新的なシステムは、「ゲームを2重に楽しめる」ようにしました。

「ゲーム性のスイッチ」は、チビマリオとデカマリオでの機能の違いによって実現されて います。

ブロックが壊せる、壊せないの違い、

細いところを通れる、通れないの違いが、

一度クリアしたステージでも、「やり残し」を生み出したのです。


まだ壊していないブロックがある。 まだ叩いていないブロックがある。

もしかしたら、ブロックの奥にはコインブロックがあるかもしれない。 隠されたなにかがあるかもしれない。 細くて通れない道の先にはなにかあるかもしれない。

小さいマリオだからこそ、叩けるブロックがあるかもしれない。

こういう気持ちを、プレイヤーに起こさせる。

ゲームに「やり残し」がたくさんできるから、こういう気持ちになる。

そうすると、それを解決しに、何度もプレイする。

ゲーム性のスイッチは、「一粒で2度おいしい」みたいなものですね。

こういう、残された謎を解きに行くとき、プレイヤーはワクワクするんですね。

スーパーマリオ以降の任天堂のゲームは、ほとんどこういった要素が入っています。

一度見出した面白さ、ゲームデザインの 方法論をキチンとあとのゲームにも踏襲して いるわけです。

だから出すゲームにハズレがないわけなんですね。

さすが宮本茂氏、としかいいようがないです。

さてもうひとつの「底なし」要素ですが、

それは「隠しブロック」です。

これは驚くべき発明です。

この発明ひとつだけで、ゲームが無限の広がりを持ちました。

スーパーマリオには、ブロックを叩いて隠されたものを探す楽しみがあります。

プレイヤーは最初、目に見えるブロックをすべて叩けば、この ゲームの謎はすべて解明され、完全な意味でのクリアになる、と想像します。

ゲームの底はどこなのか、どこまでやればコンプリートなのか、 どこまでやれば「征服」できるのか、想像するわけです。

しかし、このゲームでは、「隠しブロック」の存在がわかった時点で、なにもない空間で すら謎のある場所なのだ! ということが発覚します。

つまり、すべての空中を叩いてみないと、謎はすべて解明されないわけです。

空中のブロックをすべて探す作業はバカにならない量です。

この時点で「スーパーマリオブラザーズ」における隠しブロックは、難度の高い 「伝説級」の謎です。

つまり「底なし」の謎を探すことができるようになったわけです。

後から攻略本ですべて解明されてしまいましたけども(笑)。

こうした、「謎」や「不思議」がゲームの中に残っていると思わせ、それをコンプリ-ト させる欲求をかきたてるしかけは、おおもとを辿ると「ツァイガルニック効果」に 行き着きます。

「ツァイガルニック効果」とは、先にも説明しましたが、不完全なものを完全に したがるという人間の「さが」を利用したものです。

まだ取れていないアイテム、まだ制覇していないフィールド、まだ見ぬ敵。 まだ行っていないステージ、まだ会っていない人

こうしたものを人は放ってはおけないのです。

この効果のポイントは、「謎や不思議を残しておく」ことではなく、

「謎や不思議が残っていることを認識させる」

ことです。

いくら謎や不思議が残っていても、それが残っているんだよ、ということをプレイヤーに わからせなければ意味がないんですね。

例えば、行っていないマップを別の色にしておく。 行くべき場所に「行ってないマーク」を表示する。 こういう方法は直接的ですが、ないよりはあったほうがよい。

スマートなのは、自然に「気づかせる」ことです。

認識してしまえばあとは自然とプレイを続けてしまう。

多くのゲームは知らず知らずのうちにこの効果を使っていますが、 ゲームのすべての空間をツァイガルニックにしてしまうゲームは、 家庭用ではスーパーマリオが初めてだったんですね。

・エンドレスのゲーム

昔はエンドレスのゲームがたくさんありましたよね。

最終面をクリアすると1面に戻り、永遠にループして、難度が青天井に上がって いくゲーム。

「グラディウス」に代表されるようなシューティングゲームに多かったですね。


終わりがないということは、それだけで「底なし」の要素を持っています。

当たり前ですけどね(笑)。

しかし、難度が青天井だと、ゲームにおのずと限界が出ます。

プレイヤーの腕前がついていかないからです。

ただ、「グラディウス」や「サラマンダ」などのシューティングゲームは、難度が異様に 上がるものの、プレイヤーがクリアできないレベルまでには上がりませんでした。

なので、延々とプレイして1000万点達成! みたいなチャレンジも行なわれ ました。

懐かしいですね(笑)。

ただ、この場合はゲームの本来的な楽しみとははずれたマニアックな挑戦です。

普通の人は、難度的に限界がきて、「このゲームはもうこれ以上難しく ならないし、自分が死ぬこともない」と思った時点で、極めたと認識し、途中で やめてしまうでしょう。

そうすると、この時点で「底なし」状態はストップです。

まあ、ここまでプレイさせるゲームも相当なものだと思いますが、究極的に 「底なし」を目指すのであれば、

「永久にプレイしてしまうほど底なし」

でなければならないでしょう。

終わりがきてはだめなわけです。 ゲームに永遠の広がりがないといけない。

永遠にプレイヤーを魅了させることが、究極。

ナンバーワンを越えた、チャンピオン。

これこそゲームデザインの極みでしょう


●底なしゲームの共通項はこれだ!

この項目で挙げているゲームは、この意味での「極み」に達しているゲームが ほとんどですが、これらには、大雑把ですが、共通項があります。

将棋にも、麻雀にも、ディアブロにも、スーパーマリオにもあった共通要素。

それは、「多様性がある」ということです。

多様性とはこの場合、幅広いプレイバリエーションが楽しめる、ということです。

対人戦で「底なし」のゲームは、対人であることで、プレイに常に新鮮さが出ます。 人の考える戦略というのは無限だからです。

誰が相手か? というだけでも、戦略を変えてくるのが人間です。 それだけ人との対戦にはバリエーションがあり、かつ複雑です。 だから面白いわけです。

スタンドアロン(一人用)のゲームでは、プレイに多様性が出る工夫がされている ものほど、延々と遊ぶことができる。

「ディアブロ II」などは、その最たる例です。

アイテム、敵、ダンジョン、それらが毎回新しい配置になり、何度プレイしても 同じシチュエーションがない。

ゲームに出てくるすべての要素が自動生成により作られ、毎回違った緊張する 「状況」を生み出します。

だからこそ、何度プレイしても面白いわけです。

エンドレスで、多様性がある。

究極の底なしゲームを目指すならこれで
しょう。

柔軟性のある多様性を生み出すためのキーワードは、「自動生成」と「ランダム」 です。

そして、ツァイガルニック効果を生むために「隠されていること」。

これらの要素に注目してみてください。


■ギリギリ感の作り方

ギリギリ感とかスレスレ感は、人をヒヤーッとさせるのに非常に有効な感覚です。 この描写は、かの宮崎駿氏のアニメにはふんだんに使われています。

例えば「風の谷のナウシカ」では、

・じいさん達が乗った戦車が橋を崩し、落ちそうになりながらも助かる

・腐海に落ちたアスベルが崖から飛び降り、空中で蟲に食われる寸前でナウシカに 助けられる

・ナウシカの乗ったガンシップが、全速力でエンジンが爆発しそうになりながらも進む

・ナウシカの乗るメーヴェが、ツボ型の飛行機から発射されるミサイルの連射を スレスレでよける

こんな場面がありましたね。

すべて、ギリギリ、スレスレで助かるシーンです。

「天空の城ラピュタ」にもあります。

・飛行船から落ちたシータが飛行石で助かり、パズーに抱えられようとするが、 重さが戻って落ちそうになる。しかしパズーがギリギリ踏ん張って助ける

・谷に作られた木の橋脚をドーラのトロッコが壊してしまい、パズーがシータを 片手一本で落ちまいと耐える

・パズーがムスカの軍隊に捕まったドーラたちを助けようと下から回り込もうと するが、飛んだ先の足場が登るたびに崩れていく

・パズーがラピュタの下に回りこみ、木の根をつたって移動している最中、爆風で 吹き飛ばされてロボットの射出口にたどり着く

宮崎監督のDVDを持っている人は、ギリギリ、スレスレの数を数えてみてください。 面白いですよ。

実に、10分に1度は必ず出てきます(!)。

ちなみに「ルパン III 世カリオストロの城」もかなりあります。 「未来少年コナン」にも、かなりあります。

宮崎監督は、もうルパンのころから観客をハラハラさせる方法論を確立していた んですね。

これは舞台設定からしてそうしてるんでしょうね。 城の屋根をルパンが連続ジャンプするシーンとか。 屋根の上で戦ったりするシーンが多いとか。

こうしたギリギリ感、スレスレ感は、ゲームでも形を変えてよく使われています。

●ゲームにおけるギリギリ、スレスレの緊張感!

例えば「ワイプアウトXL」の機体のかすり。

このゲームは、空中に浮いた機体でレースをするゲームで、機体のグリップが ないため、カーブを曲がるときに慣性を考慮に入れて曲がります。

そのときに、いいラインを取ろうとすると壁ギリギリに曲がることになり、機体が壁に 「スレ」ます。


そのときに火花が「ギャギャッ!」と散って、ギリギリであることを知らせるのですが、 この演出が秀逸でした。

スピードが早いほど、コースにカーブが多いほど、火花が多く散り、ギリギリ、 ヒヤヒヤ感を味わうわけです。

この火花の演出があるとないとで、このゲームの評価は大きく変わっていたと 思います。

この火花があったからこそ、ギリギリのスピードでレースをしている感覚が味わえた んですね。

それから別の例で言うと、ヒットポイントの表示。

これも、ギリギリ感が出るように工夫している例がけっこうあります。

例えば格闘ゲームは、ヒットポイントが少なくなると、ダメージを受けても減る量が 少なくなるタイプのものがあります。

これは明らかに、試合が「拮抗」しているように見せるために作られたシステムです。

またこのシステムのために、「削り」や「大技」で勝負が決まりやすくなっています。

うまいですね。 すべてギリギリ感を出すためのしかけです。

●わからなくすると、焦る!

また、面白い例としては、「バイオハザード」があります。


「バイオハザード」は明確なヒットポイントの値を出さずに、「安全」「注意」「危険」と いう色による曖昧な表示をすることによって、

「あと何回ダメージを食らったら死ぬ だろうか?」

という、プレイヤーの不安を煽るシステムになっています。

「危険」の状態で1、2回ほどダメージを食らった時点で、もうギリギリな状態で あるとプレイヤーは予想します。 そうなるとドキドキしながら先を進むことを余儀なくされますね。

これがプレイヤーの「焦り」を掻きたてるわけです。

これがヒットポイントの数値が見えていると、「あと1回ダメージを受けても大丈夫だ」 という認識が可能になり、死が予見でき、ギリギリまで焦らなくなってしまいます。

曖昧な表示が、焦りを感じ始める時間を早く、

長くしているんですね。

これと格闘ゲームのところで説明した、ヒットポイントが少なくなるとダメージを 受ける量が少なくなるシステムを組み合わせると、面白いことになりそうですね。

このように、ちょっとした工夫で、プレイヤーの感じるギリギリ感・スレスレ感は 倍増されます。

この小さな違いが、ゲームを大きく飛躍させることに繋がるわけですね。


■爽快感の作り方

まず、爽快感とはなんでしょうか?

辞書には「さわやかな、気持ちのよい」と書かれていますがこれではあまり役に 立ちません。

勝手に厳密に定義しても独り善がりになってしまうのでそれはせず、 ちょっと「体験」的な爽快感を挙げてみましょう。

共通体験であればわかりやすいですからね。

「スッキリ」

「快刀乱麻」

「スカッとさわやかコカコーラ」

「スポーツの試合での汗をかいた後の勝利」

「汗をかいたあとでのシャワー」

私が想像したのはこんな感じです。 ここから想像できるのは、爽快感とは、

溜まり溜まった問題を
一気に解決したあとの気分

と言えそうです。

例えばシューティングゲームのボンバー。

銃を撃ちまくって敵を倒すFPS。

「戦国無双」系の、多くの敵を一度になぎ倒すゲーム。

連鎖が起こって一気にブロックが消える落ちものパズルゲーム。

溜めた兵士や装備を一気に敵に送り込むSLG、RTS。

溜まったものを一気に解決するシチュエーションがありますね。

ここに挙げたものは一定の評価を受けている爽快感のあるゲームですが、 これらに限らず、ゲームは少なからずなんらかの爽快感があります。

しかしゲームが面白いと評価を受けるには、この爽快感を大きく高める必要が あります。

では、爽快感を高めるにはどうしたらいいのでしょうか?

●溜めて溜めて溜めて…まだ溜めろ!

これは非常に大事な考え方です。

そして、ここから生まれる概念は非常に大事です。

これを最初から知っているかいないかでゲームの出来が大きく 変わります。

ゲーム企画とは、ゲームを構成する要素をいかに有機的につないで、

それらがゲームをプレイしているうちに1つの感情に向かっていくよう計算するのが 仕事。

つまり「感情を実現する」のが、ゲームデザイナーの役割。

だからいかにプレイヤーを、自分が望んでいる感情に持っていけるかなのですが、 この概念はその最も基礎となるものなんですね。

では、その基礎概念とは何か?

それは、

「溜め」の時間と「発散」の時間を明確に
すること。

これが最も基礎的な概念です。

この「溜めと発散」の構成要素がまずゲーム全体を包み、そしてその中にまた 大なり小なりの「溜めと発散」があるわけです。

とても大事なので、覚えておいてくださいね。

●あらゆるところで溜めて発散=快感!

前項で「振り幅」の話をしましたが、「溜めと発散」はこれを構造化したものです。 「緩急をつける」という意味とも似ています。

この概念を前提にすると、ゲームを作る際、あらゆる場面で、

「いかに溜め」

「いかに発散するか」

を考えることになります。

まずゲームシステムで、どう溜めてどう発散するか。

そしてステージ構成で、どう溜めてどう発散するか。

さらに障害物の配置で、どう溜めてどう発散するか。

考える部分はたくさんあります。

企画部分だけでなく、キャラクタのアニメーション部分でも、溜めてからアクションを する、ということを意識すると、プロらしいモーションができますよ。

シューティングゲームの「R-TYPE」の爆発は、この「溜めと発散」の考え方を 取り入れており、非常に印象に残る爆発の仕方をします。

当時のアイレムのアニメーションはこのような緩急のついたものが多く、 特徴的でした。 まあこれは余談ですけども。

でも複雑にする必要はないんですよ。

例えば「テトリス」のように、4段消しを作るまでが「溜め」、4段消すのが「発散」。

こういうシンプルさでもいい。

わかりやすいですね。

テトリスはさらにブロックの落ちてくるスピードの変化に、「溜めと発散」が入って います。

一旦スピードを速くして、再度遅くする。

ゆっくりになったときに緊張が発散されていますね。

これがあるから「はあ~~っ、楽になった…」という安堵が生まれる。

「溜めと発散」で、感情を作ってますね。

こういうのが、基本です。

●任天堂のゲームにおける、高度な「溜めと発散」

任天堂のゲームはどうでしょうか。

任天堂のゲームは、「宮本メソッド」として、ひとつアイテムを手に入れたら、 それを使って解明できる謎が増える、というのがパターンでありますね。

例えば「ゼルダの伝説」で爆弾を手に入れると、いろいろなところに洞窟を 発見できます。

「メトロイド」でも、「丸まり」など新しいアイテムを手に入れると行ける場所が 増えるというのがあります。

これも「アイテムを手に入れると解明できる謎が増える」系ですね。

この場合は、アイテムを手に入れるまでが「溜め」になり、手に入れると「発散」に なります。

今までいけなかったところが解放された! というのが、発散になるわけです。

ほかのジャンルではどういう流れで「溜め」と「発散」があるか?

パズル、シューティング、SLG、RTS、ADV…。

自分でプレイしたもので、考えてみてください。

大きい溜めと発散、小さな溜めと発散、たくさん発見できると思います。

これをやると、ゲームの見方が大幅に変わってきますよ。 やるとやらないとでは、面白いゲームを見極める力が全然違ってきます。

●「溜めと発散」のポイント

「溜めと発散」の考えるべきポイントですが、

溜めに溜めたものを、
いかに一気に発散させるか

という部分が、かなり重要です。

これを考えたゲームと考えないゲームは、もう全然面白さが違うでしょう。

どんなゲームシステムにすればいいか? どんな構造にすればいいか? というところは、それぞれのゲームによって違うのでなんとも言えませんが、既存の ゲームをサンプルにして、まずは実現してみる。

そこから伸ばしてみる。

または、別のジャンルをサンプルにして、自分が作りたいジャンルに応用してみる。

自分が好きなゲームなんだけど、溜め方と発散の爆発力が足りなくて失敗して いるゲームを、どうすればもっと溜めることができるか?

どうすればもっと爆発力のある発散を作り出すことができるか? それを考える。

そういう方法があると思います。

これはゲームを作りながら面白くなるように変えていく「プロトタイピング」の 考え方です。

ゲーム作りは机上だけでは限界がありますので、まずは作りながら試してみて くださいね。

ただ、どう「溜め」るか、どう「発散」するかのバリエーションは、机上で吟味の 対象としてたくさん出せますので、やってみてください。

先に説明しましたが、私は「ブレインダンプ」という、頭に浮かんだものをとにかく ダーーーーッと書き出す方法で、「溜め」を100、「発散」を100、考えます。

「ブレインダンプ」では、先にも書きましたが、アイデアを10とか20出しただけでは 意味がありません。

1日かけてでも、3日かけてでも、100は確保。

脳の中がカラカラに干上がるまでやる。

ほかの作業は一切せず、ひたすらそれだけを考え、書き出していく。

これをやると、非常に疲れます。 脳のブドウ糖が足りなくなります(笑)。

しかしそういう意気込みで出したアイデアには、素晴らしいものがたくさんありますよ。

■プレイ中の「気づき」を作る

よいゲームは、ゲーム中に「気づき」があります。 では、気づきとはなんでしょうか?

それは以下のように「思い当たる」ことです。

「あ、こうすればいいのでは?」

「このアイテムを取ったら、あそこに行ける
ようになる!?」

「あ、こうすればいいのか」

「まだこの選択肢が残っているな…」

こういう気づきがあると、「それをやってみよう」という気になる。 「それをやってみよう」は、要するにモチベーションです。

モチベーションの出るゲームというのは、飽きることなく続けることができる。

つまり、ハマる要素を持っているということになる。

これは、実は小さなことに見えて、すごいことなんですよ。

●宮本氏の小さいけれど大きな発見

その昔、宮本茂氏は、ゲームを考えている最中に、

「どうしたらプレイヤーに繰り返しプレイしてもらえるだろうか?」

ということに悩んでいた。

そこで宮本氏の出した結論は、ミスをした際に、「どうしてミスをしたのか?」を、 わかりやすいように工夫することを考えたわけです。

「どうしてミスをしたのか?」がわかれば、次のプレイでは「そのミスをしなければ いいんだ」と、考える。

そうすると、また「それをやってみよう」と思うわけです。 そのプレイでうまくいくだろう、だからやってみよう、となるわけですね。

どういうふうに、どうしてミスをしたかがわかるようにしたか。

ちょっとここで、私が昔メルマガに書いた文章を引用します。

例 え ばスーパーマリオで、スピードを出 しすぎていたために
カ メ に ぶ つ か っ て し ま っ た … そ う い う 原因が わ か る と 、 じ ゃ あ 直前で
スピードを緩 めよう、ということになる。

ス ー パ ー マ リ オ に 出て く る 敵と い う の は 、 比率的に マ リ オ を 狙っ て
攻撃し て く る も の が 少 な い 。

マ リ オ と 関係な く 、 各自勝手に 動い て い る も の の ほ う が 多 いんですね。

そうなると、プレイヤーがミスして敵 に ぶつからない限 り 、
失敗は な い こ と に な る 。 す る と ミ ス の 原因は 非常に 明確に な り ま す 。

ミ ス の 直前の プ レ イ ヤ ー の 行動が 、 ミ ス の 原因だ と は っ き り す る わ け で す 。

(ハマるしかけを作 る ! 10年 目 ゲームクリエイター・ムーブメント研 究 !
第 84回 「トライアル&エラー・メソッド」より)

要するに、敵の動きが単純であることで、プレイヤーのミスが明らかになる。 次のプレイの選択の余地に「氣づく」わけですね。 そうなると、また次に挑戦しようという気になる。

うますぎますね。

私はこの発想の応用が、おそらくは宮本氏のゲームデザインの骨格を作って いったのではないかと、睨んでいます。

例えばゼルダの伝説。

「イカダを手に入れれば、あの孤島に行ける! 川を渡れる!」

「炎を手に入れれば、木を燃やせるのではないか?」

「笛を手に入れれば、いろいろなところで使うことでなにかが現われるのでは ないか?」

アイテムを手に入れるたびに、こういう気づきがある。 アイテムは、プレイすれば自動的に手に入る。 アイテムが手に入ると、それを使って謎を解きたくなる。 そのアイテムで解ける謎をすべて解いてから寝ようかな、となるわけです。

結局、延々とプレイしてしまう。 朝まで、プレイしてしまう。

気づき = モチベーション。

気づき = プレイを続けるきっかけ。

気づき = ハマり!

プレイヤーに知らず知らずのうちに気づかせるしかけ。 任天堂のゲームにはこれが山ほど盛られていますね。

●口コミの合理的な作り方!

朝までプレイ、これに関連して…。

ゲームを流行らせるには、1つ、確固とした方法があります。

プレイヤーを「この状況」、「この事実」に持ち込んでしまえば、ゲームはヒットする 可能性を持つ。

前に話しましたね。

「この状況」「この事実」は、強力な口コミが発生させるきっかけになります。 事実、多くのヒットゲームは口コミでヒットするわけです。 口コミには、「弱い口コミ」と「強い口コミ」があります。

じわじわ効いてくる口コミもあります。

ゲームをヒットさせるには、強く、じわじわと効いてくる口コミを起こせばよい。

考えてみてください。 口コミとは、どういうときに起こるでしょうか?

これを知ることが、口コミの起こるゲームを作る第一段階ですよね? 口コミを起こすことができれば、そのゲームはヒットする可能性を 持つ。

であれば、意識的に、口コミを起こす構造をゲームに持ち込めばいいわけ ですよね。

そんなことができるのかって?

はい、可能です。 理論的には。

まだ、ゲームデザインによって口コミを実際に起こした、という人を確認しては いないのですが、他の業界では、盛んに行なわれています。

特に、アメリカのトップマーケッターは、口コミを起こす術を何百種類も知っています。

それを応用すれば、ゲームデザインでも、口コミを意識的に起こし、ゲームを ヒットさせるのは可能です。

話を戻しましょう。

口コミはどういうときに起こるか?

まずこれを考えるのが第一段階です。

●口コミを起こすための考え方

では、口コミのプロはどう考えるか。

口コミは、自分の体験、人の体験を、

人に伝えたくなったときに起こると考える。

ある体験とは?

ある、衝撃的な体験。

ある、強烈な体験。

ある、夢中になった体験。

ゲームで言えば、どういう体験でしょうか?

ひとつ、挙げるなら。

朝までプレイしてしまったゲームの体験。

前にも話しましたね。

昼食のとき、職場の同僚が眠そうな顔をして、こう言います。

「このあいだ、○○っていうゲームを
朝までやっちゃってさ」

いいですか?

このセリフは、非常に大事なセリフです。

このセリフ。

このセリフを人に言わせればいいんです。

朝までプレイしてしまうゲーム、そのゲームはそれだけの魅力があるということを 示しています。

口コミをする人の体験が、それを物語っています。

その人の「朝までゲームをプレイした」という事実が、そのゲームがそれだけの 吸引力を持っていると、聞く人に教えます。

これを聞いた人は、興味を持つはずですよね?

「そんなに面白いのか?」

そして、自分もやってみたくなる。 そのゲームを貸してくれ、と言うかも知れない。

 たまたまゲームソフト屋でそのゲームを見て、あ、このゲームはあいつが朝まで ハマっていたゲームだ…と思うかもしれない。

そして、買ってしまうかもしれない。

「朝までやってしまった」という言葉は、ゲームが売れるきっかけ、ゲームを買わせる 動機になっている強力な言葉なんですね。

ほかにも、こういう言葉がたくさんあります。

売れているゲームほど、プレイヤーにそれらの言葉を言わせている。

●人の言葉を追え!

人の言葉を想像し、追うんです。

どういう言葉を人に言わせれば、そのゲームは魅力的だと伝わるのか?

あなたの体験の中にもあるはず。

雑誌の記事でもいい。

ネットの書き込みでもいい。

ふとした言葉が、あなたにそのゲームを
強烈にプレイさせたくなったことは ありませんか?

どういう文章を、掲示板に書き込ませればいいのか。

そのためには、どういう状況、事実を作るゲームを作ればいいのか?

それを考えるわけです。

朝までプレイしてしまうゲームを作る。

気づきが連続して、ついつい朝までプレイしてしまう構造のゲームを作る。

なかなか止めどきが見つからなくて、ついついプレイしてしまう構造を持ったゲームを 作る。

そして朝までやらせてしまう。

そうすると、状況、事実が出来上がります。

すると、

「このあいだ、○○っていうゲームを
朝までやっちゃってさ」

というセリフが生まれてくる。

まずは、考えてみてください。

どういうセリフを人が言えば、ゲームが魅力的になるか?

そしてそのセリフを実現するには、どういうゲーム構造が必要か?

どういうセリフをプレイヤーに言わせれば、そのゲームが流行るのか?

このレポートの中には、そのためのヒントが多くあります。

読み返して探してみてくださいね。

■「感情」 をゲームジャンル を決
める指標にする

あなたの作るゲームは、なにを目指していますか?

私は、「ある感情」をいつも目指しています。

私はいつも、ゲームとは感情を動かすものである、と言っていますが、人は誰でも 例外なく、「感情」が動かされることを潜在的に望んでいます。

例えば、「感動」 。

感動する映画があるよ! 泣いてしまった! と言われれば、見たくなって、 なんて映画? と聞きたくなりますよね?

感情を動かされたがってるからです。

例えば、「興奮」 。

友達があまりに面白いゲームをプレイして、そのゲームがいかに面白いか? を 興奮しながら話しているのを見ると、そんなに面白いならやってみたい! と 思いますよね?

感情を動かされたがってるからです。

例えば、「恐怖」 。

人が体験した恐い話、ヤクザの話に心霊の話、事故の話、病気の話、
それは、みんな興味を抱きます。

恐怖は感情の中で、一番強い感情。

強烈です。

なぜ強烈か?

もちろんそれは今後の危機を避けるために、記憶に留めておくためです。

動物的な本能ですね。

だから恐怖を映し出すゲームは、恐い反面、強い魅力もあるのです。

ちなみに、人間が生まれながらに持っている恐怖は、

「大きな音」

「落下する恐怖」

というデータがあります。 生まれたての赤ちゃんは、この2つだけを恐がるそうです。

人は感情を動かされることを望んでいる。

だからゲームを作るときも「感情」をゴールにするのです。

●人はゲームに「昂ぶり」を期待している

余談ですが、人の行動はほぼ感情によって決められています。

なにかを買うときでも、旅行に行くときでも、恋人を決めるときでも、結婚する ときでも、みんな自分がどんなに感情を動かされたか? を指針にして決めて いるんですね。

買い物で迷ったときは、ちょっとでも多く感情が動かされたほうを、直感的に 買っているんです。

話は変わりますが、私は就職の面接を受ける人には

「感情を込めることができれば勝ち」

といっています。

感情を込めて話すことができれば、その感情は面接官に伝わります。 感情は伝わるものだからです。

「きみの情熱が伝わってきたから採用した」

実はこれ、採用された人がよく聞く言葉です。 面接官も、自分が感じた感情で、採用するかしないかを判断している。

閑話休題。

ゲームを作るときは「感情」をゴールにする。 しつこいですが、これをゴールにすると、面白いゲームができる確率が非常に 高くなります。

では、どんな感情を動かすか? どんな感情を動かせばベストなのだろうか?

ゲームを最高に面白くするためには、動かす感情を明確にすることが必要です。 それをコンセプトにするのがベストです。

動かす感情がわかっていなければ、どうゲームの流れを組み立てればいいか わかりませんからね。

そこで、私は「動かす感情」を大きく4つに分けました。

これは今までの経験から、ヒットしたゲームが動かす感情にはパターンがあり、 それを意識して感情を動かすようにすれば、面白いゲームができる可能性が 高くなる、と推測したものです。

では、以下に説明しますね。

●スリラー(恐怖)

スリラーでヒットしたゲームは、

・ディアブロ

・弟切草

・バイオハザード

・カウンターストライク

・GTA3(追いつめられ死ぬ恐怖)

・風来のシレン等、ローグ系ゲーム

などがあります。

 どれもシリーズ化されたほどのヒットですね。

これらのゲームには、どれも「恐怖」と「緊張」があります。

恐怖の感情は、人の中で一番強いものです。

前にも書きましたが、恐怖は生存の危機を回避するための感情ですから、 恐怖を感じる出来事は、非常に強いインパクトがあります。

これは、恐怖を感じさせるゲームも非常に強いインパクトがあるということです。

ですので、ヒットしたゲームというのは、往々にして恐怖の感情を使っているものが 多かったりします。

では、どうすれば人に恐怖の感情を与えられるのでしょうか? まずわかりやすいのがこうですね。

プレイヤーに恐怖を感じさせるには「死」を

予感させること。

▼RPGにおける戦慄の恐怖

例えば、RPGでも入っているんです。 死の恐怖。

「戦闘モードがうまくできている」という場合、それは敵の強さのバランスが うまく取れている場合です。

死にそうな戦闘がバランスよく起こって、ドキドキすることが多ければ、そのゲームは いいバランスを持っています。

RPGの戦闘で死の恐怖を感じさせるには、パターンがあります。

それは以下のような戦闘バランスにすることです。

ちなみに戦闘はターン制を想定します。

・5~6回ダメージを受けると死ぬバランス

このバランスだと、プレイヤーは非常に安全であると感じます。 楽勝に感じます。

・3~4回ダメージを受けると死ぬバランス

このバランスだと、プレイヤーは危険になってきたと感じます。 薬草などでの回復の回数が多くなるに連れて、危険だと感じるのです。

・1~2回ダメージを受けると死ぬバランス

このバランスだと、プレイヤーは最高に危険であると感じます。 非常に緊張した戦闘になります。

パーティ制のRPGであれば、何度も死ぬメンバーが出るバランスです。

こういったバランスを意識して盛り込むことができれば、ほどよくプレイヤーを 緊張させるゲームを作ることができます。

ポイントは、プレイヤーを死の恐怖によって、長
時間、緊張させること。

長時間というところ、これが肝です。

非常に大事なので、もう一度書きますよ。

長時間というところ、これが肝です。

長時間の緊張は、プレイヤーを本気にさせる。

これがスリラー(恐怖)系のゲームを作る時の肝心なところです。

緊張する時間の持続時間が長ければ長いほど、「溜め」になります。

「溜め」が長いほど、緊張から脱出したときの「安堵」「達成感」、つまり「発散」の レベルが高くなります。

これが「面白い!」という感情に繋がり、ヒットの条件である「口コミ」にも繋がる わけです。

●ミステリー(謎解き)

ミステリー系のゲームでヒットしたものは、

・スーパーマリオ

・ゼルダの伝説

・メトロイド

・多くのRPG

・多くのアドベンチャーゲーム

・育成系ゲーム

等々、任天堂系のゲームが並びます。

ミステリー系のゲームは、「知りたい」という感情をターゲットにします。

実はこの「知りたい」という感情は、日常的に刺激されています。

テレビなどで、

「この結果はいかに?」

「いったいこのあとどうなってしまうのか?」

「この問題の解答は?」

などと、「引っ張られて」からCMに入ってしまう番組、多いですよね?

でも、「知りたい」からついついCMが終わるのを待ってしまいますよね?

結果を隠されると、人はどうしてもその結果を知りたくなる。

このような「不完全なものを完全にしたい」という人間の欲求を 利用した効果を、

「ツァイガルニック効果」

と言います。

もう何回も説明しましたね。

何回も書きますが、本当に重要なので、覚えておいてください。

▼すべてのエンタテインメントの根源になる要素

この効果はテレビ番組だけでなく、小説や映画の「伏線」としてなくては ならない効果として使われています。

物語の中に解決されていない「伏線」をバラまいておき、それでグイグイと物語の 中に引き込んでいくのです。 物語の魅力の根源と言ってもいい。

ゲームでも、基本的に「先が見たい」という欲求のもとにプレイされるので、 この効果が根底にあります。

ミステリー系のゲームは、この効果を大量に、しかも強力にして使っています。

ではどういうふうに強力にしているのか? というと。 それは、「レバレッジ」という考え方を使います。

「レバレッジ」とは、「てこの原理」と訳されます。

てこの原理、あなたは知っていると思いますが、わかりやすく説明しましょう。

▼レバレッジでゲームを何百倍も面白くする

将棋倒しってありますよね。

将棋の駒を1つ置き、その後ろにも1つ駒を置いて、前の駒を倒すと、 連続して倒れます。

これを、駒の後ろに多くの駒が倒れるように並べたら、どうなるでしょう。 まるでドミノ倒しのように。

1つのアクションだけで、多くの駒が一斉にバーーーーッと倒れますね。

こうした、1度で2度おいしい、

だけではなく、1度でたくさんおいしい、

というのを実現するのが、レバレッジです。

ではこれをどうやってゲームデザインで実現するのか? ですが。

最もわかりやすいサンプルは任天堂のゲームです。

任天堂のゲームには、必ずと言っていいほど、以下のような構造が 使われています。

1つ鍵を取ると、複数のドアを開けることが
できる。

ゼルダしかり、メトロイドしかり、マリオシリーズしかり。 こういう構造ありますよね?

任天堂のゲームは、さらに、

1つ鍵を取ると、複数のドアを開けることができる。

そのドアのどれかを開けると、また複数のドアを開けることができる鍵が 入っている。

またそのドアのどれかを開けると、また複数のドアを開けることができる鍵が 入っている。

こういうふうに、レバレッジが入れ子構造をしています。

ドアを開けるたびに(アイテムを手に入れるたびに)、解くべき謎がフィールド全体に 広がる。

この構造に、プレイヤーはハマっていくわけですね。

▼レバレッジを応用する!

このようなハマる構造は、ほかには作れないでしょうか? 応用すれば、いろいろできそうですね。

例えば、RPGではどうか。

通常のRPGは、1つのアイテムを手に入れると次のフィールドへ行ける 道が開くだけですが、レバレッジの応用では、1つのアイテムを手に入れると、 複数のフィールドを探索できるようになる、というのが考えられます。

こうすると探索の楽しみが増えますね。

また、複数のフィールドに入れないダンジョンなどを仕込んでおき、 先に進むとそれがいけるようになる、というふうにすると、1つのフィールドで 2度3度楽しむことができます。

これは同じマップを再び訪れてもらうわけですから、コスト面でも 優れた方法と言えますね。

任天堂はこのように、1つのマップを1度使って終わりにするのではなく、 何度も使って遊べるようなゲーム構成を作るのも得意です。

ミステリー(謎解き)系のゲームは、任天堂のゲームを参考にすると、 素晴らしいゲームデザイン手法をいくつも吸収できます。

ちょっと蛇足でした。

あなたも、レバレッジを自分の作りたいゲームに応用してみてください。

ゲームに深みと味わいが加わることうけあいです。


●ジーロット(眩暈的熱中)

ゲームに熱中するあまり、頭で考えず、脊髄反射でコントローラーを 操作する…。

ゲームにハマったことのある人なら、こういう経験があると思います。

ルールの熟知、操作の熟知と、ゲーム内の極限状態で起こる、本当の意味での 「熱中」です。

この「熱中」は、リアルタイム性のあるゲーム、つまり、アクションゲーム、 シューティングゲーム、FPS、RTSなどで起こるものです。

この「熱中」で起こる興奮と自在感、そしてゲームへの感情移入の感覚、 没入感は、非常に麻薬的で、中毒になるほどです。

特に若いうちにゲームにハマる人は、この快感にハマっていきます。

まさに、「我を忘れる」快感です。

この「熱中」を作り出す方法。 これがわかれば、面白いゲームが作れそうですね。

実は、この「熱中」を作り出すことは、比較的簡単です。

あなたもなんとなくわかるのではないでしょうか?

ゲームに熱くなったときは、ゲーム中、どういうときだったか。 それを思い出せばわかりますよ。

この「熱中」させる方法は、多くのプランナーは知っていると思います。

比較的簡単な「面白さの作り方」です。

▼「熱中」の作り方!

では、その「熱中」させる方法はなにか? というと。

それは、

忙しくさせる

ことです。

だいたいにおいて、「熱中」というのは、

「ああして、こうして、こうすれば完成する」

ということを既に知っていて、それをなにも考えずに淡々と作業することで得られる 感覚です。

仕事中でも、淡々と作業をしているときに人に話し掛けられて、 「今、忙しいんだ」と言ってしまいそうになった経験、ありませんか?

手順を既に熟知していることが、重要です。

それがあるから、なにも考えずに作業に没頭できるわけなんですね。

こういった「忙しさ」は、特にアクション性のあるゲームで、すぐに実現できます。

既存の例で言うと、RTSなどは、その最たる例ですね。

例えば日本で言うと「ピクミン」、海外で言うと「エイジ・オブ・エンパイア」 「スタークラフト」、などがそうです。

「ピクミン」は部隊が独立分散しないし、指示を出す建物もないので忙しさは それほどでもないのですが、ゲームデザイン的に各種の忙しさが多く設けられています。

非常に成熟したゲームデザインを感じるゲームです。

▼「ああっ! 手が回らない!」

それに対し、洋もののRTSはとにかく忙しい。

部隊を移動させ、斥候を出し、建物を建て、部隊を生産し…、とにかくやることが たくさんあります。

あっちこっちに画面を移動させて、どんどん指示を出さないといけないので、 特に後半はかなり忙しく、熱中します。

FPSを例に挙げると、このジャンルのゲームは一瞬の判断が命取りになるものが 多く、短い時間にたくさんの判断と操作が必要になり、これもまた「忙がし面白い」。

ゲームデザイン的に、「常に死の危険を感じさせる」状況を作れば、ゲームは おのずと面白くなりますが、FPSはこの状況を実現しています。

「メタルギア」などのエスピオナージアクションゲームも、「常に死の危険を感じさせる」 タイプのゲームですね。

FPSは、瞬間的に敵に狙いを定めて当てる、という動作が、人の集中力を 瞬間的に研ぎ澄まさせています。

この一瞬一瞬への集中力が、ゲームを盛り上げています。

アクションゲームやシューティングゲームは、言わずもがな難度が上がってくると 相当忙しくなりますね。

常に集中していないといけない時間が多くなる。

単純ですが、この「忙しさ」が、アツい。

▼「100万本売れないゲームは作らない会社」も…

また、何度も例に出しますが、100万本売れないゲームは作らないと豪語する ブリザード社のゲーム「ディアブロ」も、この「忙しさ」を存分に利用しているゲームです。

「ディアブロ」は、画面をスクロールさせると配置されている敵が動き出し、 プレイヤーを追ってくるというシステムなのですが、この一見普通のシステムが、 「忙しさへの緊張」を生み出しています。

「ディアブロ」の場合、前半は楽勝です。 敵の移動が遅いですから、画面の中にどんなに敵を入れても勝てます。 だからかなり忙しく、面白い。

しかし後半は一度に受けるダメージ量が多くなり、一度に多くの敵と戦うと 死亡率が非常に上がるので、なるべくちょっとずつ敵を画面に入れ、おびき寄せて 戦うのが安全な方法です。

こうなるとかなり慎重なプレイを要求されるので、緊張感が高まります。


一度ダメージを食らうとヒットポイントが1/3~1/2減るので、慎重に ならざるを得ないんですね。

こうなるとギリギリの状況です。

そんな状態で、ダンジョンの中のドアを開けるということが、ディアブロでは さらなる恐怖でした。

部屋に入ると、一度に多くの敵が襲ってくるからです。

ギリギリのときに、大勢の強敵が来ると
「すくみあがり」ます。

私もプレイしたひとりなんですが、もう、恐くてしょうがない。

恐がりながら、緊張しながら、死なないことに忙しい。

▼ゲームでたったひとつの感情を実現する

この「すくみあがり」の状況を実現した「ディアブロ」はさすがでした。

普通のゲームは、なかなかプレイヤーを盛り上げることができないのに、 プレイヤーを「すくみあがり」という感情高い状態まで持っていった わけですから。

ゲームでひとつの感情を実現する。

これ重要です。

ディアブロでは、「忙しい」状況に、さらに追い討ちをかけるような衝撃的な イベントとして、部屋での襲撃がありました。

これがゲームの面白さを一段引き上げていました。

もうひとつ、わかりやすい例で言うと、これはアクションゲームではありませんが、 「風来のシレン」での「モンスターハウス」がそうです。

▼さらに、ゲームの面白さを引き上げる方法

モンスターがたくさんいる部屋にぶち当たり、かなり危険であるかわりに、 アイテム大量入手のチャンスでもあるイベントですね。

「シレン」も後半ステージは歩くだけで危険になっていくゲームですが、 これにさらにモンスターハウスが重なると、非常に衝撃的です。

「シレン」ほどに明確にイベント化されていませんが、リアルタイム性のある ゲームでヒットしたゲームは、この衝撃的な状況を持っているものが多いです。

「スタークラフト」も、例えばテランのユニットであるゴーストの 「核攻撃」の予告が衝撃的ですし、「エイジ・オブ・エンパイア」で言えば、 「部族の象徴」の建設開始予告や、「アーク」のコンプリート予告などが 衝撃的でした。

忙しい中での衝撃的なイベント


これが、ゲームプレイをさらに緊張させているんですね。

忙しいゲームを作ることができたら、それにさらにダメ押しとして、焦るイベントを 盛り込みましょう。

盛り上がること間違いないですよ。

●ジレンマ(戦略の葛藤)

シミュレーション系ゲーム、ターン制のゲームなどのじっくり考えて遊ぶゲームで、 この「ジレンマ」、葛藤の面白さを味わうことができます。

つまり、勝利のために頭を使って戦略を考えるタイプのゲームですね。

このジレンマの面白さは、パズルゲームの面白さとは違います。

パズルは1つもしくは数種類しかない解法を導く面白さであり、戦略はなく、 「手順」をスタートからとゴールから考え、それをつなげて解を見出し、達成する 面白さです。

ジレンマ、つまり葛藤の面白さとは、曖昧としてわからない勝利への道を 大局的に導き、戦略を立て、無数にある解法の中から最も最適化された勝利を 模索する面白さと言えます。

こう書くと難しいですが、葛藤についてわかりやすい例があります。

▼悩みどころを作るとモチベーションが上がる

それは、「究極の選択」というものです。

例えば。

嫁と母親が同時に溺れている。 同時にひとりしか助けられないとしたら、助けるのはどっち?

とか、

美しい男性とブスな女性。 必ず結婚しなければならないとしたらどっち?

とか、

カレー味のう○ことう○こ味のカレー。 必ずどちらかを食べなければいけないとしたら、どっちを食べる?

葛藤しますよね?(笑) 難しい決断です。

ジレンマとはこのように、選ばなければいけないものが、等価値か甲乙つけがたい ときであるにも関わらず、どちらかを選択をしなければいけないときに起こるものです。

この決断が難しいほど、面白い。

なぜなら、判断に苦労すればするほど、決断したときの確信が深いからです。

確信が深いほど、行動のモチベーションが上がります。 つまり行動に自信が出るんですね。

ゲームのプレイに自信が出ると、躍起になってプレイするわけです。

だから、プレイヤーを葛藤させよ! なんですね。


では、そのジレンマをゲーム上でどう作ればいいのかというと、それぞれの ゲームジャンル、ゲームタイプでの作り方があるので、いちがいには言えませんが、 強引にまとめてしまうならば、

考えさせる局面

を作る、ということになります。

では、どういうふうに「考えさせる局面」を作ればいいのか?

例えば、将棋。

将棋は自分がこう打てば、相手がこう出る、というのを読みながら 遊ぶゲームです。

前半は打つパターンがだいたい決まっているのですが、後半は自分の 一手一手が勝負を決することに繋がるので、かなり考えながら打つことに なります。

次の一手がほんとうにベストか? ということを、あーでもない、こーでもない、と 考え、葛藤します。

つまりは、

「読み」を入れさせる

ことです。

例えば既存のゲームで言えば、何度も例に出しますが、「風来のシレン」。


敵に囲まれ、危険な状態になれば、手持ちのアイテムをすべて使ってでも 生き残ろうと考えますね。

そうすると考えなければいけないのが、どういう順番でアイテムを使い、どういう順番で 敵を倒していくか、どう移動するか、ということ。

「こうすると、こうなって、これをすれば、こうなるから…」と、頭の中でシミュレーション。

考えることが山ほどあります。 ほんとに詰め将棋みたいになります。

生きるために葛藤し、

詰め将棋みたいなことを始めるわけです。

この状態から、なんとか生き残る。 脱出する。

これはもう、嬉しいわけです。

自分の頭脳をフル回転させ、機転を効かせ、なんとか生き残った。

勝利した。

すると、「これは面白い!」となるわけですね。


▼「読み」を分類する

ジレンマがなぜ面白いか、わかりましたよね?

ジレンマが起こる状況があるから、それから脱出したときに、 大きな達成感を感じることができるんですね。

ここにも「溜め」と「発散」があるわけです。

では考えさせる局面をどう作るか? ですが、 リアルタイムゲームでも非リアルタイムゲームでも、基本は一緒で、 「順序」を考えさせるようにすることです。

ではどうすれば「順序」を考えさせることができるか。 最も単純な順序を考える例は、「マルバツゲーム」です。

「マルバツゲームは」最初の1手以外、次の次を読まないと負けますよね。

自分が次に打つ手は、次に打つ相手が勝ちを確定してしまう手かどうか。

これを読む必要があります。

つまり「負けないための読み」 。

また、自分が相手にどう打たせたら、自分の勝ちが確定するか。

自分の勝利が確定する手をあらかじめ知っておくと有利です。

つまり「勝つための読み」 。

この2つをゲーム上で実現するには、

単純にプレイヤーに 「勝敗を意識させること」です。

つまりプレイヤーに「次は絶対に勝つ!」と思わせることなんです。 そう思わなければ、頭は使わないですよね?

勝敗を意識するようになれば、「負けないこと」「勝つこと」のために、手を探そう、 手を打とうとします。

手を探そう、手を打とうとすることが、「読み」に繋がるんですね。

▼最強を作ってはいけない理由

「次は絶対に勝つ!」と思ってもらうには、「次はこうしたら勝てる」と思ってもらう ことです。

自分が負けた理由を明確にし、次にとれる手が分かれば、「次は勝つ」と なるわけです。

この「次はこうしたら勝てる」という思いを実現するために便利な構造として、 「三すくみ」の構造というのがあります。

つまりジャンケンの構造です。

兵士は忍者より強い。

忍者は弓兵より強い。

弓兵は兵士より強い。

つまり、最も強い存在がないバランスです。

この構造だと、

兵士が弓兵に負けたから、次は弓兵に忍者をぶつければ勝てる。

弓兵が忍者に負けたから、次は忍者に兵士をぶつければ勝てる。

忍者が兵士に負けたから、次は兵士に弓兵をぶつければ勝てる。

と「次は勝つ!」と思わせることができますね。

実質はエンドレスに拮抗するバランスを作っているわけです。

多くのシミュレーションゲームは、ユニットごとにこの三すくみを設定し、それらを 組み合わせ、戦術の優劣に最強がないようにしています。

ユニットの組み合わせによって、他のユニットの弱点を補強することができますが、 それでもその組み合わせに強い組み合わせというのが存在します。

こうすることで、次は勝てると思わせつつ、常に拮抗したゲームが実現するわけです。


■終わりに

最後に、個人ゲーム開発について、少し書きます。

個人でゲームを作る方法として、私が注目しているのが、

「アジャイル開発手法」

というものです。

通常のゲーム開発は、「ウォーターフォール型」と言って、 最初にゲーム全体の仕様書を作ってしまい、それをすべてのもとにして、 ゲームを作りきる方法を取っています。

しかし、ソフトウェア開発は「仕様変更」が入ることだけが完全に決まっている、 というジョークがあるように、何度も仕様変更が入るのです。

特にゲーム開発は、「面白さ」という曖昧なものを実現するわけですから、 途中で面白さを確認し、だめだったら修正する、という作業が何回も入ります。

ウォーターフォール型の開発だと、最初に書いた仕様を何度も 変更することになります。

すると、仕様書のいったいどこを変更したのか? わかりづらくなるんですね。

仕様書を見る側もわかりづらいし、仕様書を書く側もそれを伝えるのが 大変です。

そこで出てくるのが、「アジャイル開発手法」です。

アジャイル開発手法は、大雑把に言うと、開発する単位を小さな機能に 分割し、1~2週間、もしくは1ヶ月単位でできる作業の仕様書を作り、 そのつどリリースできる形に持っていく手法です。

反復的開発手法とも呼ばれ、 計画、要求分析、設計、実装、テスト、評価を 1つのサイクルとして、これを繰り返して全体を形作っていきます。

また、たくさん仕様書を書くよりも、そのつどスタッフが集まり、意思疎通を 図ることを強調します。

ここで言いたいのは、「いきなり大きなゲームを計画せず、少しずつ作っていこう」とい うことです。

多くの個人ゲーム開発者は、いきなり大きなゲームを想定し、 自分に大きな課題を課すために、途中で挫折してしまう傾向が見られます。

しかしこのアジャイル開発手法を使えば、まずはゲームの形にしてしまう、 それからゲームの中身を追加し、面白くなるか評価していく、という工程を 自然に行なうことができます。

まさに「面白さのテストありき」のゲーム開発に、うってつけの開発手法と 言えるでしょう。

私も現在、個人ゲーム開発として、小規模に集まって、 ファミレスにノートパソコンを持ち込んで一緒に作り、 できなかったところは持ち帰って課題にする、という制作方法を実践しています。

なかなか楽しい開発になっていますよ。

あなたもぜひ試してみてください。

最後に。

今回のレポートは、いかがでしたか?

ゲームを面白くするためのエッセンスをかなりの密度で盛り込みました。

あとは実践するだけです。

最近私はアジャイル開発手法を用いつつ、 非常にゲームが簡単に作れる「FLASH」によってゲームの雛形を作り、 そこから面白さを練り上げる、という流れでゲームを作っています。

あなたにもゲームを公開できる日が来ると思いますが、私もブリザード社の ように面白くなければリリースしませんので(笑)、あまり期待せずにお待ちください。

今回のレポートのほか、今後はサンプルつきの教材や、3ヶ月や半年スパンでの ゲーム開発講座を構想しています。

これをお披露目して、ひとりでも多く、「自分が作りたいゲーム」を作れる人が 増えるように、頑張っていきたいと思っています。

それでは、今後ともゲームのしくみを宜しくお願いします。

あなたのゲーム開発ライフが充実することを祈って。

2007/03/15 6:32 自宅オフィスにて
ゲームのしくみ研究委員会 新田法継

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