どうもです。
最近はゲームを作ったりビジネスを教えたりしている新田です。
今回は、30年以上ゲームデザインに携わってきて、最も重要な要素と結論づいた要素について解説します。
今後どんなゲームデザインであろうとも、ここだけは絶対にはずせない、超重要な部分です。
ここをおろそかにしてしまうと、全然ゲームのリテンション(継続率)が上がらず、ハマってくれない! ということになります。
逆に言うと、ここだけまず極めておけばどんなゲームでも80%は成功するだろうという要素です。
いわばゲームの軸。
これなしには、ゲームは動かない、という要素です。
では、その要素とはいったいなにか?
それは、「ゲームを引っ張る」ということです。
ゲームを遊んでもらうには、さまざまな「引っ張る」要素で先を見たい、知りたい、遊びたいと思ってもらうことが必要です。
そうして引っ張らないことには、ゲームは続けてもらえず、すぐに飽きられてしまうわけです。
そして、引っ張るために最重要な概念が、「ツァイガルニック効果」です。
これは、人が「不完全なものを完全にしたい」と思ってしまう効果です。
いいですか?
もう一度いいましょう。
ゲームで最重要な概念、それが「ツァイガルニック効果」です。
引っ張る方法
ではここで問題になるのが、なにを不完全にするか、ということです。
そしてどれが、最も効果的なのか?
不完全で人が知りたくなる最もシンプルなものが、「クイズ」です。
質問に対する答え、です。
しかしただの質問ではだめです。
「わからない」答えじゃないとだめなんです。
知らないことで、知りたいと思わせる魅力的なことじゃないとだめということです。
例えば、「あなたのお腹の贅肉をあっという間になくしてしまう成分とは?」みたいな質問だと、多くの人が知りたい、と思うはずです。
「知り得ない」ことが価値なわけです。
あとは、「クイズミリオネア」のみのもんたみたいに、答えをめっちゃじらす。
答えを教えるのをもったいぶる。
そうすると、知りたいと思った人は「早く教えろよ!」と感情的になる。
そう、この感情的になることが重要なのです。
人は自分の感情を揺さぶられるという、レアな状況を欲しているのです。
そして感情が揺さぶられた体験を、「面白い」という記憶として残すわけです。
クイズの発展
クイズは、シンプルなツァイガルニック効果を引き出します。
しかしもっと複雑で「強い」引っ張りを作り出すこともできます。
それは、「状況の結果」です。
テレビではよく、「いったいどうなってしまうのか!?」とか「○○は不思議なことをやり始めた・・・」とか「○○は思わぬことを話し始めた」みたいなテロップが流れたりします。
これは、「その状況の先が知りたい」、という欲求を引き起こすものです。
特に人は、戦争、ケンカ、揉め事、恋愛のゴシップ、試合、チャレンジなど、本能に直結するような状況について、人がどう判断するのか、どう行動するのか、知りたいと思います。
この「状況」を圧縮し、連続させ、面白くなるようにしたのが、物語です。
強力な「物語」
小説、漫画、映画、ドキュメンタリー、舞台、紙芝居などは全部物語ですね。
そして、これらのさまざまな物語はずっと昔からありますが、非常に人気があります。
物語は人々を魅了し続けているわけです。
なぜ物語が人を魅了し続けるのか、その構造はどうなっているのか? ということを紐解き始めると本が一冊できてしまうのでここでは解説しませんが、ゲームにおいても、「引っ張る」ための要素として、物語は多く使われています。
「新しい物語」は、人気化すればオリジナルコンテンツとして多チャンネル化し、多くの人を魅了するようになり、ムーブメントを起こすことができます。
それほど、「物語」は強力なものなのです。
しかしゲームでは、「物語」だけが引っ張る要素ではありません。
ゲームは物語を紡ぐだけのものではなく、インタラクティブ、つまりプレイヤーとゲームが相互作用することで、ゲーム内での体験が大きく変わるというところが最も特徴的であり、「主人公になる」という体験は、物語を見るよりももっとインパクトのある体験になります。
では、ゲームではどういう「引っ張り」があるのでしょうか?
ゲームの「引っ張り」システム
代表的な「引っ張り」システムは、「ゲームジャンル」として確立されています。
シューティングゲームは、強制スクロールと敵の出現、その撃破の繰り返し。
格闘ゲームは、勝敗が決まるまでの技の応酬の繰り返し。
RPGは、レベルを上げて強くなり、物語を進めるの繰り返し。
SLGは、資源を集め、ユニットを生産し、戦わせて領土を拡張していくことの繰り返し。
わかりますでしょうか? これがすべて、引っ張るシステムになっているのです。
ゲームは大きく、リアルタイムとノンリアルタイム(多くはターン制)で分かれます。
リアルタイムのゲームは、即対応が求められるゲームで、強制的にゲームが進行します。
状況的にプレイヤーが手を離すことができない、という点で「引っ張り」が作られています。
ノンリアルタイムのゲームは行動の順番を交互に繰り返すので、考える時間があり、じっくりゲームに取り組みたい人に合っています。
この場合、交互に行動するので、いつでもゲームをストップできますが、特にコンピュータ相手だと気兼ねなくやめられてしまいます。
相手が人であれば、「失礼なことはできない」という感情が働いて、手を離すことができなくなる傾向が強くなります。
ゲームジャンルはすべて「引っ張る」システムの体現ですが、ゲームパーツとして「引っ張る」こともできます。
「引っ張る」ゲームパーツ
パーツとして有名なものは「ゲーミフィケーション」としてビジネスで活用されているので、詳しくは調べてみてほしいのですが、代表的なものとして以下のようなものがあります。
・コレクション
コレクションとは、例えば100個のスロットがあり、そこにゲーム内で手に入れたアイテムをはめていき、全部集めるとコンプリート、というものです。
コレクション自体が未完成から始まるので、もろにツァイガルニック効果があります。
特に途中まで集めてしまうと「全部そろえなくては!」と、なんとなくハマってしまうという恐ろしい効果があります(笑)。
・アチーブメント
これは例えば「7日間連続でログインした」「ゲームに10回勝利した」などの条件を満たすことで、「バッジ」がもらえたりします。
バッジはジャンルごとに分かれていて、「ログイン数」「勝利数」など、さまざまなジャンルがあります。
ひとつのジャンルをすべて達成(アチーブメント)すると、ボーナスでゲーム内のさまざまな特典が手に入ります。
・ミッション
ゲーム内でクリアすべきミッションがプレイヤーに与えられて、プレイヤーはそれをクリアすべく動きます。
クリアすると、ゲーム内で役立つ特典がもらえます。
この3つが代表的なゲーミフィケーションです。
ほかにも、RPGなどで出てくる「オートマッピング機能」などは、「引っ張る」ゲームパーツです。
このような「引っ張る」ゲームパーツは、プレイヤーをゲームにハマらせるものなので、ゲームデザイナーは日々このシステムを研究、考案しています(はずです笑)。
世の中にはすごいゲームパーツもあり、そのゲームパーツの発明だけでゲームをヒット作にのし上げたものがあります。
基本は、ゲームジャンルとしての「引っ張り」システムで、これが面白さの根幹に繋がります。
そしてゲームパーツとしての「引っ張り」システムで、ゲームはさらにプレイヤーを引きつけるものとなります。
ここでは基本的な「引っ張り」システムしか説明していませんが、より強力な「応用編」のシステムはメルマガ読者に解説をお送りする予定です。
・緊張した状態を長時間引っ張り、プレイヤーの手に汗を握らせるシステム
・無限とも思えるアイテム生成の楽しさを提供し、冒険を楽しくするシステム
・重厚なゲームの面白さを感じてもらえる「これ作った人はすごい」と思わせるシステム
など、知りたい方はぜひメルマガに登録しておいてくださいね。
それではまた次回!
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