メガヒットゲームのためのゲームデザインパターン2

■目次

■0・本テキストの使い方

■1・コンセプトの基礎

●ゲームの「コンセプト」の本来の意味とは?

●ゲームのコンセプト=どういう感情を感じてもらうか?

●ゲーム全体の統一感を作る-絶対はずさない背骨を決める

●ゲームのトータルデザイン・コンセプト

■2・オリジナリティの基礎

●オリジナリティとヒットゲームのパターンを同居させる方法

●オリジナリティの本質

●ヒット・パターンの本質

■3・ゲームデザインの基礎

●どうやってプレイヤーの感情を動かすか?

●認知的不協和の使い方

●ツァイガルニック効果の使い方

●ザイオンス効果の使い方

●痛みと快楽の原則の使い方

■4・アトラクトファクター

●あなたのゲームが感情を動かすのに必ず必要な要素

●アトラクトファクターをゲームに盛り込む

●ゲームはあなたの「宝物」になる

■5・ゲーム要素の基礎

●ゲームの各要素で考えておくべきところ

●フィールド

●プレイヤーキャラクター

●敵(障害物)

●アイテム

●ルール

●世界観、設定

●操作性

●グラフィック

●音楽、SE

■6・画面のインターフェイスの基礎

●ゲームとプレイヤーをつなぐもの

●ワンステップアプローチとは?

●プレイヤーの感情を揺さぶる操作系の実現方法

●感覚的で自然な操作にする方法

●必要な操作まで短縮しない

■1・エモーショナルな状況を想定する

●ゲームが一番盛り上がる「状況」の考え方

●ゲームが確実に盛り上がるしかけ「時間の構造」

●なぜ、最悪から最高の状況へ持っていくのか?

●失敗、成功、失敗、成功の流れを考える

●ギリギリの状況とは?

●絶望を超えた状態を作る

■2・ゲームバランスのテクニック

●バランス調整のゴールとは?

●拮抗状態を長く続かせる方法

●ターン制ゲームの優位性

●永遠に遊べるゲームを作る方法

■3・エモーショナル・レイヤード・ゲームデザイン

●ゲームデザインにおける「レイヤー」とは?

●ジャンルはレイヤーで表現できる

●レイヤーをコレクションする

■4・ゲームにハマらせる方法

●1・ゲームのことを知ってもらう

●2・ハリウッド映画の初の15分

●その後は、どうすればいいのか?

●成功を積み上げてもらう

●さまざまな「報酬」でプレイヤーを魅了する

■5・インパクトを作り出す方法

●思い込みを確実に作る流れ

■6・プレイヤーを焦らせる・パニックに陥らせる方法

●緊張を生み出すための基本

●ソリッド・シチュエーション

●勝てる敵なのに絶対勝てないと思わせる方法

■7・ドキドキ・ワクワクを作る方法

●ゲームの展開に希望を感じてもらうには?

●アイテムの価値を何百倍にも引き上げる方法

●あらかじめ恐怖を与えるということ

●「先に体験させる」ということ

●「謎」を盛り込むということ

●「謎」のレイヤー

●社会現象を起こす「謎」を作り出すには?

■8・圧倒的な恐怖を作り出す方法

●人間が本能的にも恐れるものとは?

●死の恐怖を演出するための重要な「状態」

●恐怖と臨場感の関係

●人間が生理的に嫌がるものとは?

■9・ゲームを何度も何度も遊ばせる方法

●ミスリードテクニック

●二重三重にミスリードを張る

■10・ゲームの面白さを倍増させる方法

●ゲームの本来の役割

●他人同士に「よい交流」をさせるには?

●コミュニケーションの段階を作る

■0・本テキストの使い方

まずは、この教材を買っていただいてありがとうございます。唐突かもしれませんが、あなたは「私的成功」にも近い位置にいる人だと思います。

なぜなら、あなたはこの教材―希少性が高いとはいえ、一般の書籍と比べて高価な―を購入し、「自分の教育・鍛錬」に投資をしている。これは、普通なかなかできないことです。

きちんとした目的を持ち、自己投資ができている人は、おそらく全体の5%もいないでしょう。あなたはその5%に入っている、ということです。 あなたとお会いできて、本当にうれしく思います。

この教材は、私のゲーム研究の成果として、「面白い」「ヒットする」ゲームデザインに必要な要素をこれでもかと詰め込んでいる「ゲームデザインパターン」シリーズの第2弾です。

前回、教材を発売してから、だいぶ長い月日が立ちました。その間、さぼっていたわけではなく、「面白さ」を実現するための具体的な手順、方法をつきつめていた、というのが実際です。

ですので、今回の教材では、新しい概念、より深く掘り下げられた手順が出てきます。そこが新のゲームデザイン手法となりますので、注目してください。

私のお勧めは、まずプリントアウトし、読み進めて行く途中で「これは」と思ったところに線を引き、そこから思いつくことをどんどん書き出していくことです。

特に初読の時が、もっとも頭が刺激されると思います。

肝心なのは、この教材の内容を「まるまる覚える」ことではなく、「自分だったらこのノウハウをどう応用するか?」と考え、すぐに使えるアイデアとして、出していくことです。

このテキストには、随所に「アクションプラン」と呼ばれるメモ欄があります。 そこには、テーマにしたがった質問があります。自身の経験から、回答を記入してください。

その回答は、エクセルなどにまとめましょう。とても大切な「ネタ帳」になります。
あなたのヒット作は、そのネタ帳から出てきたアイデアの組み合わせでできるのです。 また、すでにネタ帳を作ってらっしゃる方は、基礎編の5「ゲーム要素の基礎」の項目に分類してみてください。 たくさん書いてある項目、ほどほど書いてある項目、ほとんど何も書いてない項目が出てくると思います。

たくさん書かれているところは、あなたの長所となりうる点でしょう。書いていないところは、あなたの弱点かもしれません。長所は伸ばし、弱点はさらなる学習によって補っていくことが賢明です。

ゲームデザインはとどのつまり、「自分はいったいどういうものを作りたいのか?」という、自分自身を突き詰めていく作業に集約されていきます。

この教材で提供しているのは、そこで見出された「あなた自身」を表現するゲームのフレームとなり、ゲームをより感情を揺さぶるものにするためのものです。

つまり、主役となるのは、あなた自身です。あなたはいったい、どういう意味をこめて、世の中にゲームを送り出したいのでしょうか?

ゲームのしくみ
新田法継

Contents


基礎編

■1・コンセプトの基礎

●ゲームの「コンセプト」の本来の意味とは?

ゲームを作る際、まずコンセプトを決める必要があります。 しかしそれはなぜでしょうか? コンセプトとはいったいなんでしょうか?

コンセプトとは「概念」と訳されます。 しかし、それでは意味がわかりません。

ゲーム企画におけるコンセプトの意味は、「中心的な概念」のことです。

このゲームにおいて貫き通す、軸のことを言います。 ゲームの「背骨」となるものです。 つまり、このゲームを作る上で、絶対に変えていけない部分を定めるのです。

例えば、「徹底的にリアリスティックを追求する」ことをコンセプトにしたら、そのコンセプトはたくさんのディテールを決定する部分で、中心的な方向性になります。

つまり、ご都合主義的な設定は出てこず、すべては実際にありそうな表現で示されることになります。 絶対にギャグにはなりません。 リアルであるということが、優先されるのです。 絵も音もシステムも、そのコンセプトに従うことになります。

しかしどういうことがリアルなのか、ということは、人によって定義が違いますし、ゲーム的な都合をどこまで許すかの許容量も人によって違いますので、そういうことを明確にするべく、コンセプトを定義し、提示し、意思統一(コンセンサス)を図ることが必要になります。

方向性が初に明確になれば、参加するスタッフも、どういう方向性で作業を進めればいいのか、どういう方向性で考えればいいのかがはっきりしますので、作業がスムーズに進むようになります。

●ゲームのコンセプト=どういう感情を感じてもらうか?

エンタテインメントの基礎となるコンセプトは、ほとんどの場合、「感情を揺らすこと」と思って構いません。 人間は、感情が揺されなければ記憶に残りませんし、インパクトもありません。 だから、プレイヤーのなんらかの感情を揺らすということは、エンタテインメントの基礎になります。

逆に言うと、プレイヤーの感情を揺らすことができなければ、そのゲームは平凡、凡庸であり、なんの影響力も持たない、存在意味の薄いものになってしまいます。

もちろん、そういうものがヒットを狙えるわけもありません。 高い評価ももらえません。

ですから、ゲーム開発はプレイヤーの「感情を揺らす」ことに、全力を注がなければならないのです。

ゲームには多様な感情を揺らすものがありますが、あなたが作るゲームはどんな感情を揺らすのか? それを考えることが、コンセプトづくりの基本になります。

そのゲームで実現する感情は、緊張なのか、恐怖なのか、笑いなのか?

その上で、もっと複雑な感情、ヒーローへの憧れ、強さを手に入れたことの喜びの感情や、もっと抽象的な、テーマ、メッセージと言われるような、プレイヤーに感じてもらうべき感情を決めることになります。

高尚なテーマや、みんなに伝えたい大事なメッセージも、プレイヤーの基本的な感情を高めることができなければ、さっぱり伝わらないのです。

伝えることができなければ、それはないものと同じです。

だから、人を感動させ、プレイした人の人生に衝撃を与えるような、完成度の高いエンタテインメントを作るのであれば、「感情を揺らす」スキルを、がっちりと身につけておく必要があります。

ゲームは「感情を揺らすことありき」なのです。


●ゲーム全体の統一感を作る-絶対はずさない背骨を決める-

コンセプトは、確信的に「プレイヤーの感情を揺さぶることができる」アイデアがあれば、それを中心に据えるのが一番です。

必ず実現したいアイデアがあり、そのアイデアが引き起こすゲーム内外状況が、プレイヤーの感情を大きく動かすことができるという確信があれば、それをコンセプトに据えるべきです。

アイデアを120%面白くするために、たった1つのアイデアにフォーカスすることを「テイクワン」といいます。 これは、1つのアイデアにこだわる、ということとです。

たとえば、「掘る」というアイデアをテイクワンするとしたら、とにかくゲームは掘る行為によるいろいろなフィーチャーが盛り込まれます。

掘ることで宝物を見つけ、掘ることで敵を倒し、掘ることでゲームクリアに向かう。 「掘る」というアクションだらけ、づくし、三昧、オンリーになるわけです。

そうすることで、ほかに類を見ない「掘る」ゲーが出来上がります。 これによって、「掘るといったら…あのゲームだな」という連想ができます。 これは、いわゆるブランドの発端です。 差別化は、1つのことにこだわることで成すことができます。

もちろん、「掘る=あのゲーム」という連想ができあがるだけで、そのゲームがプレイヤーの感情を少しも揺さぶらないゲームなら、その連想は意味を持ちません。 「面白い」という実績があってこそ、ブランドは確立されるからです。

コンセプトは、ゲーム性のよさでもなく、グラフィックの美麗さでもなく、音楽のよさでもなく、ただただ「プレイヤーの感情を揺さぶるもの、こと」に焦点が合っている必要があります。 ゲーム内のすべての要素は、プレイヤーにある気持ち、感情を抱いてもらうために存在します。

たとえ美麗な個性あるグラフィックを作ることをコンセプトにしたとして、それが実現されても、 ゲームがプレイヤーの感情を揺さぶらなければ、「いいゲームなんだけどねえ」「こだわりのあるゲームなんだけどねえ」「グラフィックはすごいんだけどねえ」で終わってしまう。

そんなゲームは世の中にたくさんありますが、要は、コンセプトの焦点が間違っているのです。

テイクワンで秀でている部分はあるが、面白くない、そういうポジションに収まってしまっているのです。

フォーカスのしどころを間違えば、努力の割に評価されない、報われないゲームができあがります。

全体のクオリティが高いにこしたことはありません。 しかし、絶対に押さえなければいけないのは、遊んでもらう人が一番刺激して欲しい部分を刺激してあげる、ということなのです。

●ゲームのトータルデザイン・コンセプト

先にも言いましたが、ゲームのコンセプトデザインは、ゲームのすべての要素に影響を与えます。 コンセプトにゲームのすべての要素が従うのです。

すべての要素とは、グラフィック、音楽、ゲームシステム、それから操作性など、すべてのゲームに関わる要素です。

たとえば、「ジャンプの楽しさを追求する」ということをコンセプトに据えたとしたら、ゲームシステムは当然ジャンプの楽しさを大限に引き出すようなシステムデザインになります。

グラフィック、ここでは、アニメーションパターンなどのことになりますが、これもジャンプにこだわった、ジャンプを目立たせるようなアニメーションパターンになります。

効果音はもちろん、ジャンプの SE にこだわりますし、音楽もそれに合わせてジャンプのボタン を押すのが楽しくなるようなリズムの音楽になります。

ゲームに使われる世界観も、そのジャンプがも楽しくなるような世界観はなんだろうか? というところから考えられます。 ステージの構成も、ジャンプの楽しさを充分に引き出す構成になります。

これが「コンセプトは背骨である」ということの意味です。 コンセプトは、ゲームのあらゆる要素に顔を出すのです。

たとえは変ですが、おでんの具をすべて突き刺している棒のように、ゲームのすべての要素は、 コンセプトの方向性に従っていなければなりません。

コンセプトとはゲームにおいて、実現したい1つの感情のことを指します。 ゲームのすべての要素は、1つの感情を作り出すために、一致団結します。
もう少し具体的に言うと、1つの感情を生み出す「シーン」を作り出すために、ゲームのすべての要素は収束していく、ということになります。

この「シーン」については、後述します。
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質問 1 あなたが作りたいゲームのコンセプトはなんでしょうか?

質問 2 そのコンセプトは、プレイヤーのどんな感情を刺激しますか?

●オリジナリティとヒットゲームのパターンを同居させる方法

オリジナリティとはいった何でしょうか? これを知らずしてオリジナリティを作り出すことはできません。

多くの人は、オリジナリティというものを非常に軽視している傾向にあると思います。 どちらかというと「ウケるお約束」をつかんで、それを盛り込むことに終始しているのです。

一見、私が提唱しているエモーショナル・ゲームデザインも、お約束と似たようなものなのではないか、と思う方もいると思いますが、これは全然違うものです。

ゲームに入れるお約束は、単なる表面的な「ウケる共通項」にしかすぎません。 それは単なるサル真似です。 うまく書けた人の絵を見て、それを写しとっているだけです。

その認識では、オリジナリティとヒットゲームのパターンを同居させることができません。 ウケたものをそのまま真似しているのですから、誰の目から見ても明らかに同じものになってしまうからです。 同じではオリジナリティがあるとは言えません。

ではどうすれば、オリジナリティとヒットゲームパターンは、同居することができるのでしょうか?

●オリジナリティの本質

初にオリジナリティについて考えましょう。 オリジナリティとは独自性と訳されますが、では独自性となんでしょうか?

独自性とは唯一性です。 つまりそれひとつしか存在しないということです。 ではそれひとつしか存在しないということは、どういうことなのでしょうか?

それは厳密に言うと、ほかに複数あるものと比べてどれとも一致しないということです。 これつまり、ほかとの差別化が図られているということです。 ほかのものと似ないように意識されているということです。

 つまり独自性とは、すでにあるものとの差別化を図られることによって、作られる、ということになります。

すでにあるものと差別化を図るということは、現時点で大勢を占めているもの、つまりは流行っているものや、現在スタンダードになっているものと大きくズレた方向性を持つ、もしくは真逆をいくということになります。

また、秋元康氏も言っていますが、ありそうもない組み合わせを試してみるということがオリジナリティにつながります。

彼は和食レストランの名前に「うんこや」という名前をつけたことがあります。 食と排泄という相容れないものを、あえてくっつけてみたのです。 (その店は話題にはなりましたが、すぐに潰れたようですが)

オリジナリティとは、ほかと比較したときに、まだ陣取られていないポジションを見つけることによって、作られるのです。

自分の作るものが、すでにあるものと、どういう位置関係にあるのか、そしてどういう位置関係になれば、独自性が保てるのか、それをまずは考えるのです。

例えばベン図で考えてみましょう。 据え置きマシンのRPGというジャンルにおいて、どういう競合がいるでしょうか?

私の頭の中では、このような勢力図があります。 RPGは、ゲームシステムと、キャラクタ性がオリジナリティをよくあらわします。 新しく作るとしたら、これらの競合のどれにも属さないタイプのゲームを考えるか、または弱い競合のいるポジションに位置するように考えなければいけません。 そうしなければ、先行している競合に負けて、埋もれてしまうからです 

●ヒット・パターンの本質

ではそのオリジナリティにヒットゲームのパターンをどう盛り込めばいいのでしょうか?

ヒットのパターンというものは時代によって変わるものではありません。 なぜなら、面白いという感情は人から生まれるからです。

人は、そうそう変わるものではありません。 面白いと感じる対象が人である限り、人が面白さを感じるパターンをつかめれば、それがヒットを確実に生み出すのです。

ヒットのパターンは、人の心理から生まれます。 ヒットのパターンは、人の心の動きを研究することによって掴むことができます。 なぜなら、人の心の動きにも、必ずパターンが存在するからです。

そのパターンをつかんでしまえばヒットを量産することが可能になります。 そのパターンが、ゲームのコアになります。

コアは時代が流れても変わりませんが、それにかぶせる外見や世界観などは、時代に合わせて変わります。 それがつまりは、オリジナリティの「居場所」になります。

階層的にいうと、まずヒットパターンが土台としてあり、その上に時代に合わせたオリジナリティが積み上げられることになります。

時代がいくら変わっても、男が女を求める、女が男を求めるということが変わりません。 それを意識することが、ヒットのパターンを意識するということになります。

しかし時代によって、大人の恋愛の場が銀座だったり、西麻布だったり変わります。 恋愛対象が、モーニング娘だったり、AKB48だったりするのです。 これが時代の要請というものです。

このように時代の流れをつかんで、その要請に従ったものを出してヒットを狙うか、その流行が来ることを見越して、その反動で次に来るものを着実に用意し、初のものになるかで、ヒットを狙うことができます。

面白さのコアはいつの時代も変わらない。 外側が時代に合わせて変わるだけなのです。

ヒットゲームは、ヒットパターンという土台の上に時代の要請が乗り、実現される

時代となんの関係のないオリジナリティをいきなり出したとしても、それはメディアが注目しませんから、見過ごされることになります。

もし何か自分で温めているオリジナリティがあるとしたら、それと時代が要請しているものを絡めることによって、ヒットを作り出すことが可能です。

オリジナリティは、時代を読む力と、そのあとにくる反動をうまく組み合わせることによって、時代に受け入れられるオリジナリティとなります。

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質問 1 今から500年経っても変わらないと思われる人間の性質には、どういうものがありますか?

質問 2 現代の人たちは、どういうことに強く共感しますか? 10代、20代、30代で想像してみてください。


■3・ゲームデザインの基礎

●どうやってプレイヤーの感情を動かすか?

コンセプトのところでも述べましたが、プレイヤーの感情をいかに動かすか、ということが、ゲームデザインの根幹になります。

ではどうすれば、プレイヤーの心動かすことができるのでしょうか?

それには人の心を動かすための、心理学的な基礎パターンを知っておく必要があります。

人を動かすための心理学的基礎パターンは、

1・認知的不協和
2・ツァイガルニック効果
3・ザイオンス効果
4・痛みと快楽の原則

この4つです。

●認知的不協和の使い方

認知的不協和とは、人が常識だととらえているものの逆のことを提示することによって、人が気持ちの均衡を崩された状態のことを言います。

たとえば、ゲームは1日1時間、というフレーズがあり、ゲームをやりすぎると体に悪いですよという、ある意味の常識がありますが、ここで「ゲームは1日8時間遊ぶと健康になります」という論説が出てきたら、どうでしょう?

すると、記事を見つけた人は常識を覆され、驚き、「本当なのか?」という気持ちになり、その記事を読もうとするはずです。

こういう気持ちの作用をゲームでも起こすことが可能です。 常識といものは、「常にそうである」という状態を作ることによって、作り出すことができます。

たとえば、宝箱を開けると、毎回ゴールドが入っている。 次のダンジョンに入って宝箱を開けても、宝箱には毎回ゴールドが入っている。

そうすると宝箱にはゴールドが入っているという「常識」ができるのです。

そういう常識が出来たときに、例えば宝箱から大きなモンスターを出してみる。 もしくは宝箱から大量の金塊が出てくる。

そうするとプレイヤーは当然驚きます。 大きく気持ちを動かされます。

このように「これまで当たり前であったことを覆す」ことで認知的不協和を作り出します。

この「認知的不協和」は、インパクトを作り出すときによく使われます。

例えば、バイオハザード1では、「ゾンビは遅いものだ」「ドアを開ければゾンビはいる」という常識をまず作っておいて、それから動きのすばやい犬ゾンビを、窓ガラスから出現させています。

またバイオハザード4では、「ゾンビを全部倒せば音楽が止んで安心」「弾はゾンビを倒すのに足りるようになっている」と思わせておいて、大量にゾンビが出てきて弾が足りなくなる、一定時間耐えればクリアできる場所を作っています。

「認知的不協和」は、いわば「思い込み」を作ることで実現できます。

「こうすればこうなるんだ」という思い込みを作り、それに合致しない状況を作り出すことで実現できるのです。

●ツァイガルニック効果の使い方

ツァイガルニック効果とは、人間の不完全なものを完全にしたいという欲求を使った効果です。

たとえばクイズでわからない質問があると、その答えを知りたくなります。 野球の試合で、9回の裏、ツーアウトフルベース、フルカウントで、4番打者がバッターボックスに立った、そのときにテレビの電源を切られたら、ほとんどの人が結果が気になってしょうがなくなるはずです。

クイズミリオネアという番組がありましたが、あの番組では、大金がかかったクライマックスのクイズになったときに、答えが正解かどうかを言うまでの間が、45秒もありました。

これは番組の視聴者からすると非常に長い時間でした。 「早く答えを言ってくれ!」という強い欲求に誰もがかられたのです。

ツァイガルニック効果を非常にうまく使った番組でした。

ゲームでも、日常茶飯事的にこの効果は使われています。

・このイベントをクリアしたらどうなるのだろう?
・まだ見ていないこのドアの向こうはどうなっているのだろう?

ということを知りたいがために、ゲームを続けることになったという経験は、ゲームを遊んだことのある人なら誰もがあるでしょう。

スーパーマリオの宮本茂氏は、ゼルダの伝説を作ったときに、「目的のわからないゲームは誰もやらない」と反発されたそうです。

そこで、主人公が剣を持っていない状態でスタッフにプレイしてもらい、いかにもなにかがありそうな洞窟を見せ、この状況なら、この穴に入るのは自然でしょう? このやり方でプレイヤーを誘導していくんです、と、プレゼンをして、スタッフを納得させたそうです。

つまり、剣がない、欲しい、という状況で、怪しげな場所があれば、人はそこに近づいていく、剣を見つける行動をする、という、ツァイガルニック効果の基礎をそこで教えたのです。

ゲームは、特に目指すべき目的がなくても、このような局所的な状況を用意することで、プレイヤーを引っ張っていくことができます。

あとはこの状況がどんどんつながるようにすれば、ゲームの後まで導くことができます。 つまり、「常に欠けている状態」を作り出すのです。

●ザイオンス効果の使い方

ザイオンス効果は、親密さを感じさせたいときに使う効果です。 人は1回しか会っていない人よりも、単純に何回も接触している人に対して親近感を覚えます。

これは人でなくても、たとえばゲームのキャラクタや、何かの商品でも、同じ効果が得られま す。

テレビのCMが繰り返し同じ商品を宣伝していますが、何度も見たCM の商品に対しては、人は親近感を覚え始めるので、コンビニでその商品見たときに欲しくなるという効果が期待されます。


ゲームでも、たとえば憎めないタイプの敵キャラクターが何回も登場して、後にどうしても決着をつけなければいけない状況になったときに、プレイヤーは複雑な感情を抱くはずです。

また、ネットゲームで、他のプレイヤーキャラクタと単純に何度も接触するようなイベントが起こったり、そういうことを促すシステムを持っていたりすると、何回も会うプレイヤーキャラクタに対して親密さを抱き始めます。

そして、ゲーム内に友達ができれば、そのゲーム世界に対しての親密さも上がっていくわけです。

プレイヤーをゲームに深くのめりこませたいとき、ツァイガルニック効果とともに、親密感を持たせたいキャラクタを何度も出し、ザイオンス効果を狙うと効果的です。

●痛みと快楽の原則の使い方

痛みと快楽の原則とは、人間が生まれながらに持っている原則です。

人間が生まれながらに頭の OS にインストールされているのは、

「痛みを避け、快楽を得ようとする」

プログラムです。

これは人間の欲求のも根本的なものと言えます。

たとえば人間は、商品の説明の際に、まずその商品を買わないデメリット、不利益、痛みを説明されると、その商品を欲しいと思う度合いが強まります。

さらにそれに加え、その商品を買うことで起こるメリット、利益、快楽を説明されると、さらにその商品を欲しいと思う度合いが強まります。

ゲームでも、痛みを負うかもしれないというリスクを冒しながら、快楽を得ようとする行為は、強い緊張を生み出します。

緊張にさらされながら目的を達成すると、強い快楽を得ることができます。

緊張感はゲームで大きな達成感を感じるために、必ず必要になるものです。 ヒットゲームの面白さには、必ず強い緊張感が伴うものと思ってください。 そしてそこには必ず「痛みと快楽の原則」が存在します。

痛みと快楽の原則では、押さえておきたいことが2つあります。

まず、

「相応に大きなメリットがなければ、リスクにチャレンジするモチベーションはあがらない」

ということ。 ものすごい強い敵を倒すのに、もらうものがただのこん棒では、割に合わないという気持ちが出てきます。 それでもプレイヤーはゲームにその選択肢しかなければその行動をするでしょうが、まったく気 持ちのよいものではありません。

これは逆を言えば、相応に大きなメリットがあれば、プレイヤーは喜んでそれにチャレンジする、ということです。

なので、イベントや「状況」をクリアしたら物質的、精神的、どちらでもいいので、大きなメリットを与えることです。

「風来のシレン」には「モンスターハウス」という部屋がありますが、モンスターだらけのあの部屋にチャレンジするのは、そこに落ちているたくさんのアイテムが手に入るメリットがあるからです。

また、アクションゲームで、なぜプレイヤーは敵の真っ只中に飛び込んでいくのでしょうか? それは、「敵をぶっ飛ばすこと」に快楽があるからです。 勝利することに大きな感情的価値があるからです。

必ず、大きなメリットを用意して、リスクチャレンジへのモチベーションを高めましょう。

もうひとつは、人は快楽を得るよりも、痛みを避けるほうを選ぶ、ということです。 これは生存欲求が人間の第一欲求であるからです。 メリットよりもリスクに敏感なのです。

例えば、朝6時に私のところに来たら、100万円をあげる、というよりも、朝6時にこなければ、 あなたの通帳から100万円を引く、というほうが人は行動します。

強力なモチベーションは、「得る」ことよりも、「失う」ことから発生するのです。

ですから、うまいゲームは、必ずプレイヤーがマイナスの状況、例えば武器も防具もなにもない、逆にケガをして体力が減っていて、今にも死にそうだ、という状況から始めています。

失うことの恐れから、ゲームをスタートさせているわけです。

「メトロイド プライム」では、初、フル装備の主人公を見せ、実際に遊ばせてから、その装備を全部失わせます。 ここで、失ったものを取り返す大きなモチベーションを発生させているわけです。

まずは、大きく失わせ、それを取り戻すためのモチベーションを高める。 そしてそれをとり戻していく快楽を、ゲーム内で感じさせるのです。

「マイナスからプラスへ」

これがゲーム全体への大きなモチベーションにつながります。
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質問 1 認知的不協和とはなんですか?

質問 2 ツァイガルニック効果とはなんですか?

質問 3 ザイオンス効果とはなんですか?

質問 4 痛みと快楽の原則とはなんですか?


■4・アトラクトファクター

●あなたのゲームが感情を動かすのに必ず必要な要素

アトラクトファクターとは、「惹きつけられる要素」です。

あなたの人生、あなたのこれまでの経験の中で、強く感情が動かされた出来事があると思います。

それはゲームの中でもいいし、マンガの中でもいいし、映画の中でもいいし、小説の中でもいいし、現実の出来事でもかまいません。

とにかく、あなたの経験の中で、感情を強く動かされた出来事、モノの名前、シンボル、セリフなどなど、すべてがアトラクトファクターになります。 そのアトラクトファクターを、できるだけ多く書き出してください。

マンガのキャラクタや、映画の中の特徴的なセリフ、ジャンルに強くひきつけられるというのもあるでしょう。 とにかく、感情動かされたものであればなんでもいいので集めましょう。 ファイルに箇条書きにしてもいいし、エクセルでまとめてもいい。

なぜこのようなことをするのか?

それは、ゲームでプレイヤーの感情の動きを実現しようと思ったら、まず、あなたの経験の中にある「感情」が必要だからです。

なぜなら、実際の体験から感情を再現するのが、も再現性の高い方法だからです。

もちろん、このアトラクトファクターは、あなたの作るゲームに盛り込まれます。

大半のゲームプランナーは、「なんとなくこうすれば面白くなるだろう」という目論見、想像のもとに、根拠のないゲームデザインをして、システムを組み立てています。

これはバクチと一緒です。 何の根拠もない賭けに会社は社運をかけていることになります。

「おそらくこうだろう」という予想よりも、自分が経験したことをそのまま盛り込むほうが、より確 実にその感情を実現できることはいうまでもありません。

●アトラクトファクターをゲームに盛り込む

アトラクトファクターをゲームに盛り込むことは、あなたのモチベーションを上げるだけでなく、ゲームで感情を揺さぶることを、高い確率で実現することができます。

「しかし、それでは自分が感じたことのある感情しか作り出すことができないのではないか?」 「人間の想像を超えた状況で感じる感情を、実現することはできないのではないか?」

という人がいるかもしれませんが、そうでもありません。

アトラクトファクターがはっきりすれば、それを強めたり、組み合わせて複雑な感情を生みだすことが可能です。

映画「マトリックス」は、SFのネタや、科学的な知識、童話、コンピュータサイエンス等の知識をごった煮にした映画です。

この映画は、ウォシャウスキー兄弟が膨大な知識を結集し、その中から面白く惹きつけられる要素だけを抽出し、まとめた結果、できたわけです。

アトラクトファクターは、小説家や漫画家の持っている「ネタ帳」に似ています。 アトラクトファクターはゲームが魅力的になるためのネタだからです。

あなたも、アトラクトファクターを、ぜひ1カ所にまとめてください。 そうすることで、それらが有機的に結びつき、興奮冷めやらぬ面白いゲームのアイディアが思いつくようになるはずです。

●ゲームはあなたの「宝物」になる

会社では、ゲームは独りよがりに作れるものではありません。 個人でも、万人に受けようと思うものを作りたいなら、時代の流れを読む必要があります。 プレイヤーが求めるものを提供する必要があります。

ですが、自分が作っていて面白くなければ、関わる意義はありません。

それに、自分が本当に面白いと思ったことを盛り込むことが、結局は面白いゲームを作る第一歩になります。

 それをまとめて考えると、ゲーム開発は、自分が本当にひきつけられたもの、つまりアトラクト ファクターを盛り込み、自分のモチベーションを高め、そして時代が何を求めているのかということも読み、それを盛り込んで売れるゲームにするのが、ゲーム製作において、ベストな選択肢だと言えます。 なぜなら、それは社会と個人にとって、Win-Win の関係だからです。

そしてさらに、面白さのコア、ヒットパターンを完全に押さえておくことが、ヒットするゲームを作るための必須条件になります。

自分も満足させ、世の中も満足させる。 これがゲームデザインをする上でのベストです。

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質問 1 あなたが思い浮かべる「アトラクトファクター」にはどんなものがありますか? すべて、書き出してみてください。

質問 2 次に、それらの組み合わせには、どのようなものが考えられますか?


■5・ゲーム要素の基礎

●ゲームの各要素で考えておくべきところ

ここでは、ゲームデザインにおける、ゲームの主要な要素について、押さえておくべきことを網羅します。

ゲームはトータルなデザインをイメージしてから、各要素を作っていくほうが作りやすいので、各要素から考えることはまずありませんが、それでも作っているうちに、「各ゲーム要素のベストな作り方」というものが見えてきます。

ここでは経験則を元に、それを書いていきます。

●フィールド

ゲームにおいてフィールドとは、プレイヤーキャラクタが活躍する場となります。 シミュレーションゲームであれば、敵と味方が戦う場所になります。 パズルゲームなどでは、アクションが行われる場所になります。 カードゲームでは、カードが置かれる場になります。

ゲームには、ゲームトークンが置かれたり移動したりする場が必ず必要なります。

アドベンチャーゲームなどでも、場所の移動の概念が存在しますから、フィールドの概念はどんなゲームでもほぼ必要になるものです。

フィールドはゲームの土台となるものですが、ゲームデザインをするときに、フィールドから決めるということはありません。

ゲームを考えるとき、感情を揺さぶるシーンは、フィールドやキャラクタなど、1つ1つの要素を考えていくのではなく、全体をパッと思い浮かべるのが普通です。

どこで、誰が、何で、戦っているのか。 どういうシーンが繰り広げられるゲームなのか。

たとえば、暗雲の中、火花を散らしながら剣をつば競り合う剣士が崖の上で戦っている…その両方の背後から味方のキャラクタが魔法を使って互いに援護を開始する…というようなシーンは、全体の状況がパッとイメージされます。

ですので、ここではフィールドのデザインの仕方、などは説明しません。

フィールドは、それぞれのゲームによって、イメージされたシーンに合ったものがデザインされることになります。

ゲーム要素としてのフィールドは、通常は有限空間です。 空間に限界がない、たとえば宇宙もののゲームがありますが、その場合でも、ある一定のエリアから離れるとアラートが出たり、どんなに先に行っても無が広がっているのが普通です。

要するに、ゲームフィールドはほとんどの場合、箱庭として作られるのです。 限定された有限の世界が、ゲームの中に構築されます。 ゲームの開発的にも、初から有限のフィールドであると決めて作業することになります。

そして、そのフィールドにはいくつのエリアがあるのか、と、大きな枠でまず考え、徐々に敵の配置などのディテール(細部)を考えていくことになります。 そうしておくことで、ゲームをスムーズに作ることができます。

ゲームの仕様を切る場合は、まずフィールドの数とその様子から切っていくと、全体のボリュームが明確になり、スタッフにもゲーム全体の作業量を把握してもらいやすくなります。

・フィールドのコスト意識

フィールドはプログラム的にも、グラフィック的にも、非常に作業コストのかかる部分です。 RPGなどで、イベント1つ作るごとに新しいフィールドが必要になったりすると、加算方式でコストが増えていきます。

経験の長いプランナーはそのへんのコスト意識に長けているので、初からコストを抑えたフィールドにするすべを知っています。

例えば、FPSの「DEAD SPACE」では、すべてのステージが宇宙船の船内であるため、同じモデルやテクスチャを使いまわすことができます。

またゲーム的にも船内をいったりきたりするような作りになっているため、それほど新しい素材が必要ないし、広いマップを必要としません。

しかしながら「DEAD SPACE」はその年のゲームオブザイヤーを取るほど衝撃的なものでした。 まさに、「お金をかければいいってものではない」わけです。

こうした低コスト意識のゲームデザインは、おおもとは任天堂のゲーム構造にあると思われます。 スーパーマリオにしろ、ゼルダにしろ、メトロイドにしろ、フィールドは何度も通過するべくゲームデザインされており、非常に低コストです。 しかしゲームは非常に面白い。

低コスト・高効果、まさに優れたゲームデザインの鏡と言えるでしょう。

・自動生成系ゲーム

また、低コストのゲームデザインには、「自動生成」系のゲームがあります。 「風来のシレン」シリーズは、ダンジョンが自動生成され、モンスターやアイテムの配置が毎回変わるため、いつも新鮮味のあるゲーム展開を楽しむことができます。 しかし、ダンジョンのデザインは多くても数種類あれば足りるので、非常に低コストです。

また、「ディアブロ」シリーズも、ダンジョン、アイテムが自動生成されるのに加え、レアアイテムがレベルごとに生成され、さらにMORPGとして楽しめるので、プレイの「限界」が見えづらいゲームになっています。

すでに発売から何年も経っているゲームですが、いまだに遊んでいる人が多いことからわかるように、優れたゲームデザインです。

フィールドはゲーム全体のボリュームやコストを左右する部分だけに、頭を使って低コストを実現し、それでいながら面白いものを目指したいものです。

●プレイヤーキャラクタ

プレイヤーキャラクタ(以下PC)は、ゲームをプレイする人が操作するキャラクタです。 ですので、非常に重要なキャラクタと言えます。 プレイヤーが動かすので、おのずとPCにはプレイヤーの感情移入が行われるからです。

ほとんどの場合は、PCは自分から言葉をしゃべりません。 なぜなら、PCはプレイヤーの分身なので、勝手にしゃべっしまうと、プレイヤーの感情移入が損なわれてしまうからです。

自分だと思っていたキャラクタがしゃべってしまうと、今まで「これは自分なのだ」と思っていた気持ちがすべて吹っ飛んでしまいます。

ですので、基本的にはPCはしゃべらせないのが普通です。 しゃべらせない方が、自然にプレイヤーが感情移入できるので効果的です。

巷には、映画的なゲームが多く出ていますが、この手のゲームではPCが喋る場合が多々あります。

これは映画と同じく、画面に映っているキャラクタは自分ではなくては他人であって、そのキャラクタに「なりきる」というシチュエーションでゲームをプレイするためです。

この場合は初にプレイヤーに、画面の中のキャラクタは自分ではなく、劇中のキャラクタであり、このキャラクタになりきってプレイするのだということを、認識してもらう必要があります。

それはどうやるかというと、まず初に劇中の主人公を登場させて、自分の状況を語らせます。

そしてそのキャラクタが、今回操作するキャラクタであると、プレイヤーに明確にわかるよう、ゲームに移行するのです。 これによってプレイヤーは、自分はこの物語上のキャラクタで、このキャラクタを操作してゲームを遊ぶのだという認識を頭に入れることができます。

プレイヤーキャラクタはとにかく、プレイヤー自身がスムーズに感情移入できるようにすることが重要です。

ゲームが映画や小説、漫画などと違うのは、プレイヤーが主人公になれるというところです。 ですから、ゲームにおいてプレイヤー自身に確実に感情移入してもらうことが一番重要になります。

これに気を使うことによって、映画や小説などのナラティヴ(単方向性)メディアにはない、強烈な感情移入のレベルをゲームは作り出すことができるのです。

・プレイヤーキャラクタが複数の場合の感情移入

PCがひとつでないゲームは多々あります。 RTS、シミュレーションゲームなど。

この場合、どうやってプレイヤーに感情移入してもらうのでしょうか?

PCが複数ある場合は、キャラクタ個々に感情移入することはなくなります。

それよりも、自分のグループや部隊が作り出した戦局に、プレイヤーは集中します。 戦局がより自軍に有利なようにゲームを運ぼうと意識するからです。

この場合でも、例えば「ファイアーエムブレム」のように、個々のキャラクタに対して物語を持たせたり、感情を持っているように見せるために会話をさせたりすると、感情移入度は高まりま す。

要は、「人間くささ」を演出することによって、感情移入度は高まるのです。

これは、ゲームデザインの方向性の問題で、たくさんのユニットが出てきて戦局の変化を楽しむようなゲームの方向性であれば、個々のユニットは道具のような存在に抑えられるでしょうし、ドラマティックな戦闘ものにするのであれば、個々のユニットに個性を出すことに力が注がれることになります。

いずれにしても、名前を出したり、顔を出したりして「これは自分なのだ」「これは人なのだ」という表現を増やしていけばいくほど、感情移入度は高まります。

プレイヤーキャラクタに尋常でないほどの価値を与えるには

プレイヤーキャラクタにとてつもなく大きな価値を与えるにはどうしたらいいのか?

それには、膨大な時間をかけさせることです。

人は、長い時間、手塩にかけて育ててきたものが死んだり、破壊されたりすると大きなショックを受けます。 これ以上ない悲しみ、絶望に暮れるのです。

例を出すまでもなく、ゲームで事件が起こってしまうのは、長いことかけて育ててきたキャラクタが削除されてしまったり、蓄積してきたゲーム上の財産をパアにされたときです。

キャラクタの育成に時間をかければかけるほど、そのキャラクタへののめりこみ度は増していきます。 この現象があったからこそ、ゲームにはセーブ機能がついたわけです。

しかしながら、近のプレイヤーは、そういった育成要素、蓄積要素を持ったゲームに対して、「楽しいのはわかるが、始めると長い」と、敬遠しがちになっています。

ではどうしたらいいのか?


それは、

「初は自動的に一歩を踏み出させてしまう」

ようにすることです。

どういうことかというと、例えばRPGであれば、初のチュートリアル、遊び方の説明のところで、経験値をあげて、その段階でレベル2にしてしまうのです。 もしくは、プレゼントとして、アイテムをいくつかあげてしまいます。

このしかけを無料の体験版に組み込み、何レベルが上がったところで、続きは有料版で…とすることもできます。

このように一歩を踏み出してしまえば、あとは続けてみよう、という気になります。 まずは一歩を踏み出させる。 これが肝心です。

●敵(障害物)

ゲームにおいて敵および障害物は、プレイヤーキャラクタに対立し、プレイヤーの感情を刺激 するものです。

プレイヤーに対立するものがないということは、なんら乗り越えるものがないということですから、ゲームは非常に無味乾燥なものになってしまいます。

ですので敵もしくは障害物、もしくはルールとして、プレイヤーに対立するものが、ゲームには必ず入ります。

障害は難しいものほどプレイヤーの感情を刺激しますが、あまりにも難度が高すぎると、プレイヤーは諦めてしまいます。

プレイヤーごとにゲームをうまくプレイするスキルは違いますから、すべてのプレイヤーに対してちょうどいい難易度を設定するにはコツがいります。

ではどのようにして、すべての人にちょうどいい難度を設定するのでしょうか?

それは、徐々にゲームの難度を上げていき、すべての人がゲームの難しさと自分の腕前が拮抗するようにすることです。

徐々に難度を上げていくというのがポイントです。 そしてプレイヤーの強さと障害物の難度が、ぎりぎりのバランスを保つようにすることです。

このギリギリの状況が長い時間続くようにすることで、ゲームは高い評価を得ることが可能になります。

なぜなら、緊張状態が長く続くゲームほど、感情を強く長く刺激できるからです。

・高い評価をもらえるゲームバランスの肝

ほとんどのゲームは、この「緊張状態を長く続けること」ができずにいるので、高い評価をもらえないのです。 あっと思ったらすぐに死んでしまうか、微妙な感情の緩急しかないゲームがほとんどです。

緊張状態が長く続けるには、いろいろな手法がありますが、ここでいくつか簡単なサンプルをあげましょう。

たとえば格闘ゲームで、お互いの体力が少なくなってくればなるほど、ダメージを受けて減る体力の量を少なくします。 これによって、体力がもうギリギリ、あと少しで死ぬ、という状況が長く続くので、手に汗握ることになります。

また、ある3人称視点のFPSでは、アイテムでゲームにスローモーションをかけることができます。 これは、危険な状況でスローモーションを使うことで、その危険な状況の時間が引き伸ばされるわけです。 緊張する時間を引き伸ばしているわけです。

ほか、バイオハザード、テトリス、GTAシリーズ、どれも、「緊張を持続する」ことに成功し、ゲームをヒットさせることに成功したものばかりです。

「このゲームはどうやって緊張を長く続かせることに成功しているのだろうか?」と、考えてみてください。

・エスカレートの本質的な意味

ゲームには「エスカレート」がつきものですが、これは「レベル・コンフリクト・フロー」でも言ってい るように、プレイヤーとコンピュータの強さを拮抗させ、緊張状態に持っていくためにあります。

ゲームのジャンルで言えば、アクションゲームよりも、「シヴィライゼーション4」などのターン制のSLGや、「風来のシレン」のような同時移動のほうが、実は長く緊張状態を感じやすいと言えます。

なぜなら、ターンを終わるまでの間、「時が止まる」からです。 ゲームの展開が非常に緊張を伴うような拮抗した状況で、どうしようかと熟考している間、プ レイヤーはずっと緊張状態になります。

そして反射神経のいらない緊張状態ですから、誰でもこの状況に対面させることが可能です。

また、拮抗状態を誰でも平等に作り出すという観点で言えば、「将棋」よりも「麻雀」のほうが優れていると言えます。

なぜなら、「将棋」は完全情報のゲームであり、運の要素がなく、プレイヤーの腕前、思考能力が反映されるからです。 逆に「麻雀」は、不完全情報のゲームであり、運の要素があるので、プレイヤーの腕前だけでは勝負が決まらないゲームです。

つまり、腕前の差があっても、運の要素で勝っていれば勝負は拮抗することになります。 これがあるからこそ、麻雀は誰がやっても緊張感のあるゲームになるのです。

●アイテム

アイテムはゲームにおいて、プレイヤーの所有欲を満たすものですが、ただ存在するだけでは、 アイテムに所有欲は生まれません。

では、プレイヤーの所有欲を満たすためには、どのようなアイテムにしたらいいのでしょうか?

それは、必ずゲームの中で、なんらかの「意味」を持たせることです。 持っているとプレイヤーが有利になるような、そんな使い道が必要になります。 具体的に説明しましょう。

ゲームには、プレイヤーに関するさまざまなパラメータがあります。 たとえば、体力、お金、強さ、すばやさ、防御力、それからレベルや、コレクションしているものの数、持っている武器の弾数、などなど。

これらのパラメータが増えることで、プレイヤーにはメリットが生まれます。

メリットがあるだけにとどまらず、ゲームを進行させる、クリアするのに必要なものもあります。

プレイヤーが、「これはゲームを進行させるために必要なものだ」と認識したとき、そのアイテムには「価値」が生まれます。 ゲームを始めたときからある、プレイヤーの当面の目的は、ゲームを進行させ、ゲームをクリアすること(ゲームに勝利すること)だからです。

ことに、

・プレイヤーが死なないために必要なアイテム(体力回復等)
・ゲームを終わらせるために必要なアイテム
・敗北の原因を無くす、もしくは回避できるアイテム(補充の必要な銃弾等)

であれば、その価値は大きくなります。

・アイテムの価値を増大させる方法

この価値は、意図的に上げることが可能です。

砂漠でカラカラで死にそうになったとき、水は大きな価値を持ちます。

これは瀕死の状態で体力回復アイテムを見つけたときのうれしさと同じです。 アイテムの価値が、非常に高まっているといえます。

つまり、アイテムの価値を増幅させるには、

「そのアイテムが必要でどうしようもない状況」

を作り出せばいいわけです。

これはたとえば、体力ゲージのある戦闘ゲームであれば、回復アイテムの出現率が、その状況を作り出すか否かにを左右します。

回復アイテムがバンバン出るのであれば、回復アイテムの価値は低いですが、あまり出ないとしたら、プレイヤーキャラは体力が減ったままゲームを進めることになり、緊張感が増します。 つまり回復アイテムは「貴重品」になるわけです。

こうなると、プレイヤーはいろいろ考えるようになります。 戦闘でダメージを受けないように慎重に進める方法を考えたり、戦わないようにしたり、回復
アイテムを溜め込んでおいたり、などなど。

つまり攻略を考えるようになるわけです。

回復アイテムがゲーム攻略のための「資源」となり、ゲームに深みを加えることにつながるわけです。

バイオハザード系のゲームでは、体力回復アイテムのほかに、銃の弾数が資源として、ゲー ムに緊張与えるよう、よいバランスで出現するようになっています。

●ルール

ゲームのルールは大別して3種類あります。

1・勝利(条件を決める)ルール
2・アンフェア禁止ルール
3・エクストラ(特別)ルール

ルールは、じゃんけんで言う「グーはチョキに勝ち、チョキはパーに勝ち、パーはグーに勝つ」というような、勝敗の条件を決定するものがまず軸として存在します。

サッカーや野球など、メジャーなスポーツはすべてそうです。 勝利、という概念は、対戦相手に勝つだけでなく、なにかを達成する、提示された条件をクリアするときも勝利です。 この「勝利条件」が、すべてのルールの基本となります。

そのルールの周辺に、フェアなゲームにするためのルールや、ゲームを面白くするためのルールがあります。 ですので、まずゲームを作る際は、「勝利条件」からゲームを考えます。

といっても、勝利条件の種類はほぼ決まっており、

1・相手に勝つ条件を満たす(相手の体力を0にする、相手より多く得点を得る等)
2・勝利のための条件を満たす(目的地に到達する、指定の得点に達する等)

主にこの2つになります。

これは今後どんなゲームが出ようとも、おそらく変わらないルールです。 ゲームというものが、その基本を「勝利」に置く限り、変わらないでしょう。

アンフェア禁止ルールとは、一定の操作をしていれば勝ててしまうような禁じ手や、ゲームが単調になってしまうのを避けるためのルールです。

一定の操作をしていれば勝てる状態とは、たとえばサッカーで言うと、点を取ったらあとは相手チームにボールを触れさせないようパスしまくる、というような状態です。 これでは消極的なつまらないゲームになってしまいます。 ゲームが単調にもなりますね。

この手のルールは、勝利条件を決めたあとにゲーム実際に遊んでみて、不備として発見され、ふさがれることが多いです。

・ゲームを面白くするための「機能」と「ルール」の関係

後のエクストラルールとは、「ゲームを面白くするためのルール」です。

特にコンピュータゲームは、シリーズを重ねるたびに新しいルールが付加されることが多いですが、この手のルールは、常にゲームをさらに面白くするために設定されたものです。

使えるアイテムが増える、操作性が向上する、プレイヤーの声をフィードバックして便利機能をつける、などなど。

コンピュータゲームでは、オートマッピング機能など、ボードゲームだったら紙と鉛筆を使うようなことを、コンピュータが代わりに行ってくれます。

これはゲームの「機能」で、ルールの意味合いは薄いのですが、その機能があることで、ゲームのプレイの仕方は大きく変わります。

たとえば、先のオートマッピング機能があれば、マップを書きながらゲームを解かなくてもいいので、その分ゲームに集中できるようになります。

そうすると、そのゲームでも楽しい遊びの部分に、プレイヤーを没頭させるよう作り変えることができるようになります。 この意味で、ゲームの機能とルールは、相互作用関係があるといえます。

ゲームのルールと機能は、どちらもプログラム的にはゲーム上に「実装」されるものです。

ですので、扱いを同じに出来ると考えれば、ルールも「実装」するものと考えることができます。

「ポーズ」画面を例に説明します。 ゲームの中には、ポーズや、アイテム画面があるものがあります。

ポーズ画面に入ると、ゲームの進行はストップします。 ゲームの進行がストップするので、何か考えなければいけないところで、ポーズをしてしまえば、じっくりと考えることができてしまいます。

ゲームの中には、そのようなことをさせないために、意図的にアイテム画面をゲームのプレイ画面に用意して、ポーズをさせないようにしているゲームがあります。

残酷表現の問題で日本版は発売されていませんが(英語版等を輸入することは可能) 「DEAD SPACE」というゲームでは、アイテム画面は主人公のスーツの機能として、ホログラ ムで空中に表示されます。

アイテムを出しても、ゲームが中断されず、その間に敵に襲われることがあります。 プレイヤーは、ポーズの手段がないため、常時緊張にさらされることになるわけです。

このように、ゲームの機能によって、ルールが変更されてしまったり、進行が変えられてしまう場合があります。 ゲームの機能とルールは、合わせて考えなくてはなりません。

・「機能」と「ルール」をレイヤーと考える

RPGにはよく、毒によって体力が減っていくというシステムがあります。 毒によって、体力が減る、回復薬によって、毒が消えるというシステムが、RPGに載っているわけです。

この機能は「毒」という機能を、ゲームにつけたり、取り外したり、ということをゲームを作るうえで考えることができます。

これを立体的に考えると、「毒」の機能はゲームを構成するひとつの「レイヤー」であると、考えることができます。

毒だけでなく、

・時間制限
・格闘ゲームのコンボシステム
・空腹で体力が減っていく
・オートマッピングシステム

などの「機能」や「ルール」も、レイヤーとして、ゲームの中に積み重ねることができると考えられます。 これらのレイヤーは、ゲームにつけたりはずしたりすることができます。 (これらは、これまでのゲームでは、○○システムと呼ばれることが多いです)

このように「機能」や「ルール」をレイヤーとして考え、それを折り重ねてゲームを構成する…というように考えると、ゲームを非常に考えやすくなります。

先ほどのレイヤーを重ねていくと、たとえば、毒を受けながら、空腹で体力も減ってきて、しかも一定時間で敵を倒さなければならない(時間制限)、という状況を作ることができます。

複雑なゲームの状況を作りたい場合は、レイヤーを考えて、積み重ねていくことで、複雑な状況を作ることができます。

コンピュータゲームの「機能」と「ルール」を考えるとき、これらをレイヤーとして考え、積み重ねて構築していく方法を、N2IJでは、

「エモーショナル・レイヤード・ゲームデザイン」

と呼んでいます。

これについては、詳細を後ほど説明します。

●世界観、設定

世界観も、ターゲットとする感情をコンセプトとして持っています。 目的とする感情を刺激するのに適な世界観を選択することが大切です。

たとえば、恐怖や、緊張を実現したいとします。

この場合、今までの自分の体験から、恐怖を感じたことを思い出して、恐怖を実現する材料とします。

例えば、

・「エルム街の悪夢」「13 日の金曜日」「リング」「バイオハザード」(ゲーム)を見ていたら、夜恐くなった体験
・自分の体験として、一人で墓地に行って恐ろしくなった・車に引かれそうになった体験
・バンジージャンプをした体験

など、自分が恐怖の感情を刺激された経験を思い起こすわけです。 これらの体験が持つ「世界観」は、どういったものだったでしょうか?

また、このような体験から、恐怖の感情を刺激しやすい舞台装置をイメージすることも考えます。 恐怖の感情の場合は、

・暗闇
・洋館
・墓地
・つり橋の上
・列車の上・戦場

などがよく使われます。 これ以外にも、あなたの恐怖体験で恐怖を増幅させた、ほかにはない独特なもの…を思い浮かべてみてください。 こういったものには、新しい恐怖ゲームを作り出す要素があります。 例えば、私の場合であれば、

「病院の廃墟に書いてあった、死にたい、というスプレー描き」 「自殺の名所と呼ばれている崖に添えられた花」 「名前すら言うな! と言われている殺人サークルの名前」

などが、あまり有名ではないですが、怖かったものの代名詞として思い浮かびます。

こうしたものが「新機軸のゲーム」と言われる要素になります。

・感動するゲームの世界観

別の感情、たとえば、「感動」を売りにするゲームでは、自己犠牲の要素を入れることが考えられます。

人は自分のために他人が犠牲になる状況に感動するからです。

 パニック映画で感動する映画の先駆けというと、「ポセイドン・アドベンチャー」があります。

この映画では、転覆した船から脱出するためにグループで行動し、脱出行の途中で、一行が蒸気に脱出路を阻まれるシーンがあります。 そこで、グループのリーダー格の神父が、熱くなった蒸気バルブにぶらさがり、バルブを閉めようとするシーンがあります。 閉めるのに成功した後、神父は海の底に落ちて行ってしまいます。

このシーンがこの映画の見所のひとつで、たくさんの人を涙させたわけですが、このシーンでは、 危機に立ち向かい、自己を犠牲にしたのは誰のためなのか、なんのためなのか、という問いかけを生み、生きることの尊厳を考えさせます。 (↓そのシーンの画像です) http://info.movies.yahoo.co.jp/detail/typh/id21504/pidview001

別の映画の例として、「プライベートライアン」をあげましょう。

この映画は、第2次大戦中、ナチスに捕虜になったライアン上等兵を、8人の部隊で助けに行くというミッションを描いた映画です。

軍上層部の命令で 8 人部隊がライアン上等兵を救いにいくのですが、その途上で、部隊員が一人またひとりと死んでいきます。 後は隊長も死んで、部隊の生き残りが一人と、ライアン上等兵のみが生き残ります。 部隊員が亡くなっていくシーンは、ショッキングで、強い印象を残します。

が、それだけでは、ただリアルだ、という感想しか抱かせない恐れがあります。

この映画を人の心に訴えかけるものにしているのが、一人を助けるために、8 人が死地に向かう、実際 7 人が死んでしまう、という状況です。

誰かのための自己犠牲ということが、部隊員の感情というよりも、戦争の自己矛盾という舞台設定として埋め込まれているわけです。

誰かのための自己犠牲を通し、カタルシスを伴った感動を観客に提示することで、「戦争とはなんだろう」という問いかけをより鮮明に描き出しているのです。

このような感動を呼ぶ状況を作り出す舞台設定として、自己犠牲以外には、

・親子の絆
・子供や子犬などの無垢な存在

などがよく使われます。

世界観とは、プレイヤーに、ある感情を呼び起こすために使われますが、1つのあるテーマに関係する感情をごった煮にしたものが、世界観です。

世界観は、グラフィック、音楽によって構成される、「状況」によって表現されます。

あなたはどのような感情を刺激するために、どのような世界観を作るでしょうか?

●操作性

操作とは、入力、つまりプレイヤーからのゲームに対する働きかけです。 ボタンを押す、十字キーを傾ける、コントローラーを振る、キーボードを打つ、マウスをクリックする、などですね。

操作性で大切なことは、直感的に分かりやすくすることです。 では、直感的にわかりやすいとはどういうことでしょうか?

例えば、アイテム画面などで、ボタンを押した瞬間に反応しないゲームがあります。 「決定したいのになぜか反応がワンテンポ遅い」ということは、自分の感覚と直結していない、つまり直感的でない、ということです。

人間の感覚は、「過去に一度体験した感覚」をもとにしています。 マニュアルの車を運転するとき、右足の右側はアクセス、左側はブレーキですが、これが逆になっていると、感覚的におかしいのです。

ゲームにも、こういった「過去の感覚」に沿った、自然な操作を入れ込むことで、快適な操作性を作り出すことができます。

「ゼルダの伝説 神々のトライフォース」に、「引っ張る」という操作がありましたが、これは、普通に考えると、「引っ張れる対象に近づいてAボタンを押すと自動的に引っ張る」という操作にしがちです。

しかしゲームデザイナーの宮本氏は、この操作を

「対象のほうに向き、Aボタンでつかみ、方向ボタンを引っ張りたい方向に倒す」

という操作にしました。
これは体感覚的な、直感的な操作と言えます。

・操作に感情を入れ込む

私は「ボタンに感情を込める」と呼んでいますが、ボタンを押すことそのものに、「感情が刺激される行為を入れる」ことを心がけると、よい操作感覚ができます。

具体的な例を挙げましょう。

例えば、格闘ゲームを例に取ると、キックする、銃を撃つ、剣をふる、などのアクションがありま す。 これらの操作は、現実でやっても気持ちのいいアクションです。 「銃を撃つ」アクションは、現実では出来ないけども、「やってみたい」という欲求の強いアクションです。 こうした行為、アクションが、ボタン操作に割り振られていると、それだけで直感的に気持ちの いい操作になります。 FPS(一人称視点シューティングゲーム)などは、視点が自分自身ですから、 まさに自分が銃を撃っている気分になれます。

また、「ICO」というゲームでは、ボタンを押し続けることで、女の子と手をつなぎ続けます。 操作に温かみのある行為を入れることで、人とのつながり、愛情のようなものをプレイヤーに抱かせることができるのです。

ここで、逆に感情を刺激されない操作とは何でしょうか? それは、現実においても、あまり感情を刺激されない行為です。

「ぞうきんを絞る」「ボールペンのキャップをはめる」「ほうきで掃く」…こうした、現実においてあまり感慨を生まない行為は、ゲーム内であっても同じで、あまり感情を刺激されません。

つまり、ゲーム内のアクションには、現実でやっても気持ちよいアクションを盛り込むことで、気持ちよい操作を実現できるということです。

操作の中には、直接的気持ちが良いものだけでなく、間接的に、快感を呼ぶものもあります。

たとえば、スーパーマリオブラザーズのように、ジャンプをしてブロックを壊す、ジャンプをしてはてなボックスからアイテムを叩き出す、というアクションがあります。 これは、ジャンプという操作が、気持ちのいい行為につながっているわけです。

いずれにせよ、ボタンを押したら、気持ちがいいことが起こるということが大切です。

・あえて操作性にひとくせ入れる

もうひとつ、操作性について別の感情を考えてみましょう。 たとえば緊張感を生み出す操作として、バイオハザードの、ラジコン操作を考えてみます。

バイオハザード3までは、以下のような操作方法です。 十字ボタンを前に倒すと、前進します。 右に傾けると右回りに回転します。 左に傾けると左回りに回転します。

以上が基本の操作なのですが、これがなかなかいうことを聞きません。 敵だと思って、旋回して回避しようと思っても、回転角度が足りなくて、壁に引っかかってしまい、敵に追いつかれる、などということがよく起こります。

これは焦りを生むために、意図的に操作性を悪くしているようですが、逆にそれが、このゲー ムの緊張感を増す効果を与えています。

「与えたい感情を生み出すためなら、操作性の悪さも犠牲にする」という選択は、例えば慣性のある操作性を持ったゲームも、似たようなことをしています。

ジャンプ系アクションで、急ブレーキをかけると少しだけ滑る、という操作性は、ギリギリで危ない、という状況をよく作り出します。

またガンシューティングで、手のブレの再現として、ターゲットスコープが勝手に移動する、という処理がありますが、これは狙いが定まらずじれったい、という気持ちを作ります。

単純に、プレイヤーの望む操作をそのまま実現するのではなく、「感情を作り出す」ことを意識して操作を作れば、ちょっとした処理でプレイヤーの気持ちを大きく動かすことができます。 操作の部分は、プレイヤーの「こうしたいという思い」に直結する部分ですので、調整による感情の変化は大きい部分です。

●グラフィック

グラフィックとは、映像・画像のことです。 グラフィック・デザインで大切なことは、コンセプトに沿った「感情」を刺激することです。

基本的に、人は「きめ細かい、描き込まれた」グラフィックに引き込まれます。 なぜかというと、シンプルで平坦なものは認識することが易しく、注意を払わなくても全貌が把握できますが、細かで繊細なものは注意を払って見る部分がたくさんあるからです。

また、人は止まっているものより、動いているものに目を奪われます。 これは人間の、外敵から身を守ろうとする本能がそうさせます。

ゲームにおいて、視覚情報は非常に重要なものです。 ゲームの完成度の評価は、グラフィックの出来に大きく左右されます。 内容がしょぼくてもグラフィックの出来がよければ、それだけでゲームを買う人がいるほどです。

しかし、それはなぜでしょうか?

心理学に、「メラビアンの法則」というものがあります。

コミュニケーションにおいて、人が影響を受ける要素を分類すると、

・話の内容が 7% ・口調など聴覚情報が 38% ・見た目など視覚情報が 55%

になるというデータが出ています。

マーケティングデータには、ゲームを買うお客の58%は、店頭でゲームのパッケージに描かれ た絵が気に入り、衝動的にゲームを買うという統計があります。

「絵買い」という専門用語(?)もあるように、絵で購入を決めてしまう人はかなりの数になるのです。

ですからゲーム製作のとき、グラフィックのクオリティについては、細心の注意を払って高める必要があります。

・グラフィック・デザインについての注意点

グラフィックに力を入れる際の注意点があります。 デザイン主導のゲームだと、時々やってしまう間違いです。

それは、例えばキャラクタ、アイテムなどゲームプレイに大切な要素を、背景に隠れて見えくなってしまうようなデザインにしてしまうことです。

デザインは大切ですが、ゲームに支障をきたすようではいけません。

例えばシューティングで、背景がオレンジなのに敵の弾もオレンジだと、ゲームに理不尽さが加わってしまいます。 自機、弾、敵など、ゲームプレイに大切な要素は、きちんと目立ち、プレイヤーが明確に認識できるようにする必要があります。

よく使われるのは、背景の色のトーンを暗めにし、弾やキャラクタが浮かび上がるよう、デザインする方法です。

・感情を揺さぶるグラフィックとは?

どのようなグラフィックが感情を揺さぶるかは、ゲームのコンセプトにもよりますが、共通項として、「感情を共有しているシンボル」があります。

シンボルとは、象徴のことです。

例えば、恐怖のシンボルとしては、

血、傷跡、死体、6が3つ絡まったバイオハザードのシンボル、幽霊、etc.etc.

などがあります。 どれも恐怖を覚えさせるものです。

次に「懐かしさ」のシンボルとはなんでしょうか?

田舎の田園風景、夏、おじいちゃん、おばあちゃん、長屋、etc.etc.

では「悲しさ」のシンボルとはなんでしょうか?

涙、うつむき、手紙、薄暗い部屋、亡くなった人の写真、形見のなにか、etc.etc.

こうした、特定の感情を呼び起こすシンボルはいろいろなものがあります。

あなたが作るゲームがテーマにしている「感情」は、どんなシンボルから感じるでしょうか?

それを考え、シンボルを集め、ゲームに盛り込みましょう。

かつてウェブ上で、蓮の画像をコラージュして、腕などに貼り付けた、生理的に気持ち悪い画像が流行ったことがあります。

これが流行ったのは、「生理的に気持ち悪い」という感情を1枚の画像が生み出していたからですが、この「感情」の伝播は爆発的に起こりました。

なぜなら、誰しもが「気持ち悪い」という感情を共有できたからです。 画像の気持ち悪さはどうあれ、「同じ感情を共有できた」というところに、つながり、親和性を感じていたのです。

だから、「見てみろよ、気持ち悪いから!」と、自分の感情と同じ感情を抱くであろうと期待し、その衝撃を人に伝えざるをえなくなったわけです。

感情の共有できるシンボル、これは、同じゲームをプレイしている人の間で、共有できる話題になります。

●音楽、SE

次に、ゲーム中に使われる音楽、BGM、SE について考えます。 ゲーム中の音の役割も、プレイヤーの感情を刺激するためのものです。

ある感情を呼び起こす音にも、かなりのパターンがあります。

たとえば「恐怖」の感情を呼び起こしたいときは、

・人の叫び声
・ドアのギーと開く音
・時計のコチコチという針の音

などがセオリーですね。 記憶の中にある感情と、音が連動しているのです。

これは一般的な例ですが、もいいのは、やはりあなたの記憶の中から、感情を伴う音を見つけることです。

例えば、あなたが子供のころ、一人で家で留守番したとき、眠れなかったとき、そういう時に感じた寂しさや不安、恐れを思い起こさせる音は、どういう音だったでしょうか?

 多くの人に共通する感情を呼び起こす音があります。 蚊の飛ぶ、プーーンという音を聞くと、「うわっ」となる人は多いと思います。 誰もが生きているうちに経験する共通体験の音、それをゲームに盛り込めば、多くの人の感情を動かすことが可能になります。

大きく俯瞰すると、「ある世代に通用する音」というものもあります。 同じジャンル、同じ音楽でも、世代によって、捉え方は変わります。

・そのターゲットの思春期はいつか?

「サザン・オールスターズ」や「B’z」などは、1970年代生まれの人にとって、思春期の甘酸っぱい思いを想起させる音楽になっています。

しかし演歌は、1950年代の人が聞くと、しみじみとした感情を想起する場合が多くても、 1970年代以降の人が聞いてもなんとも思わないことが多いのです。

ターゲットによって、感情を刺激する音楽が違うということです。 「時代の音」「時代の曲」というものがあるわけです。

これは、ターゲットとする「世代」を考える時に、どういう音や曲が、彼ら、彼女らの心を揺り動かすのか、ということを考える時に有効です。

音楽は、ジャンルによっても起こる気持ちが違います。 コード進行によって、感じる感情も変わってきます。 アーティストと、その音楽から想起される感情もかなり結びついています。 曲の特定の音色で起こる感情もあります。

特に思い出の曲は、複雑な感情を想起させます。 懐かしさ、甘酸っぱさ、若さ、悩んでいたこと、好きだったあの人、学校の思い出、などなど、すべてが入り交ざるのです。

このジャンル、このアーティストの音楽はこのような感情を感じる、ということを把握しておくと、 自分が実現したい感情を、的確に表現できるようになります。

・感情を刺激する人の声とは?

高い音は、記憶に残りやすいです。 小室哲哉さんの作曲などは典型例ですが、サビの部分は、一番高音域です。

また、宇多田ヒカルの曲がヒットした理由に、彼女の声が男女の行為中のあえぎ声を想起させるからだという説を唱える人もいます。

切ない声は、行為中の声を想起させるようです。 少なくとも男性はそれに惹かれるようです。 演歌でも、八代亜紀さんの声は、そのような要素があるようです。

・再生頻度の高いSEにこだわる

特に頻繁に起こる SE は、なるべく感情を刺激する音にします。

シューティングゲームでは、弾を撃つ音、爆発する音、これらは、ひっきりなしに起こっています。 この種類の音は、バリエーションを多くしておきましょう。 爆発音など、3種類ほど用意しておくのです。 すると、ゲームに多様性が感じられるようになり、リアリティが出ます。

あとは、出現する音に緩急をつけることです。

どういうことかというと、常に起こる音と、たまに起こる音を区別し、例えばシューティングゲームであれば、中ボスの爆発音は、通常の爆発音と比べ、より快感を刺激するようにします。

頻度の高いSE は、それなりの音、それなりの気持ちよさなのだけれども、中ボスを倒した後は、すごく気持ちいい SE が鳴る。 音の構成がそのようになっていると、プレイヤーはその音の快感を求めてプレイするようになるのです。

気持ちよさを予告するために、一面だけは、簡単にクリアできるようにしておくことも考えられます。

・グラフィックと音の相乗効果を狙う

SE や楽曲が感じさせる感情は、グラフィックと合わせることで相乗効果をもたらします。 実現したい感情を刺激する世界観を、グラフィックと音楽で、ゲーム内に集大成するわけです。

ゲームは、音とグラフィックでその世界観を感じさせることができます。

ゲームの中に展開される世界は、結局のところ、2つの意味で、プレイヤーを刺激します。

ひとつは、人間の本能的な部分への刺激。

人は「痛みを避け、快楽を求める」という、行動の第一原理を持っていますが、ゲームは(敗北、失敗など)痛みをもたらす障害物を避け、その後に待っている自己実現(勝利、達成)という快感を得るように、だいたい、作られます。

ですから音楽もグラフィックも、大別すると「痛み」と「快楽」をもたらすものに分けられます。

ゲームで表現される世界観は、その痛みと快楽がちょうどよいバランスであるほど、プレイヤーは飽きずに続けることができます。 なぜなら、痛みばかりでは辛いだけだし、快楽ばかりでは飽きてしまうからです。

ですからグラフィックと音で世界観を作るときも、痛みだけでなく、快楽だけでもない、両方が対になって交互に現れるような世界が望ましいことになります。

映画「風の谷のナウシカ」は、腐海の痛みと人間世界のよさの交錯した世界を現していました。 ゲーム「バイオハザード」は、ゾンビがさまよう死の洋館の中で、生きていることの貴重さを感じさせるバランスで作られていました。

これらは感情を刺激する、とてもよい「痛み」と「快楽」のバランスができていました。

どんなに痛々しいグラフィックを作っても、その世界が楽勝で攻略できるなら、それはグラフィックの意味がないことになります。

音も同様で、いくら感情を刺激する音でも、その世界で展開されることがどうでもよいことなら、音の意味がなくなります。

ゲーム世界の中で展開されることのもうひとつの意味は、プレイヤーの「原体験」への刺激で す。

プレイヤーが子供の頃や少年、青年の頃に、初体験した出来事、そのショック、それが蘇ってくるほど、大きな感情をプレイヤーは抱きます。

特に、先の本能的なことの原体験は強く残ります。


バイオレンス、セックス、スピード、これらから派生するものを考えれば、死へ近づいたときの記憶、恋愛の記憶、自転車にはじめて乗ったときの高揚感など、初体験のことは非常に強く記 憶に残っているのです。 脳生理学によれば、人は感情によって、記憶をインデックスすることがわかっています。 そして初めての記憶は、人間の生存しようとする本能が、生き残るための資料として、強烈 に記憶に残るようになっているのです。

ですからそれを追体験させることは、ゲームとして非常に強い感情を感じさせることになるの です。


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アクションプラン(アトラクトファクター編) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

質問 1 あなたの今までの経験、見た・プレイした映画、ゲームなどで、印象的なシーンには、 どのようなものがありますか?

質問 2 そのシーンであなたが味わった感情はどのようなものでしたか?

質問 3 以上を踏まえ、あなたのゲームが目的としている感情を決めるとしたら、なんでしょうか?


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アクションプラン(操作編) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

質問 1 あなたのゲームに盛り込みたい感情は、なんでしょうか?

質問2 その感情を体感してもらうために、組み込みたい操作はどのようなものになりますか?


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アクションプラン(シーン編) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

質問 1 あなたが今まで見たことのある印象的なシーンには、どのようなものがありますか? (実体験でも、映画、ゲーム、コミック等で見たものでもかまいません)

質問 2 そのとき呼び起こされた感情に名前をつけるとしたら、なんという名前になりますか?

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アクションプラン(サウンド編) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

質問 1 あなたの今までの経験から印象的な音楽、好きなアーティスト、記憶に残る BGM をあげることはできますか?

質問 2 それを聞くと刺激される感情に名前をつけるとしたら、どのような名前になるでしょうか?


■6・画面のインターフェイスの基礎

●ゲームとプレイヤーをつなぐもの

インターフェイスとは、ゲームとプレイヤーをつなぐ部分です。 ゲームの中でプレイヤーに必要な情報、例えば体力ゲージ、アイテム、マップ、スコア、残機数など、これらをストレスなく参照し、スムーズにゲームを進められるようにするのが、インターフェイス製作の要諦になります。

●ワンステップアプローチとは?

インターフェイスについてのコツですが、

「なるべく少ないステップで希望する操作ができるようにする」

ことが大切です。

私は、ワンステップアプローチと呼んでいますが、なるべくワンステップで希望する操作ができるようにするのがベストです。

ですが、無理に全てをワンステップにしようとすると、かえって情報量の多い画面になってしまい、見づらくなります。

そのような場合は、グルーピングし、2 ステップにします。 どんなに長くても、 3 ステップまでです。 4 ステップの操作が入ると、その操作は、冗長なストレスのある操作になります。 何度もその操作をすることが苦痛になります。

ですので、ワンステップアプローチを実現するには、基本的にはプレイヤーに与える情報を少なく押さえたほうがよい、ということになります。 シンプル・イズ・ベストです。

情報量が多くならざるを得ない場合は、その分工夫をすることになります。

例えば、よく使う操作はワンステップでアクセスできるようにし、あまり使わない操作は2ステッ プ以上の場所に置いておく、というような工夫です。


パソコンのアプリケーションなどでもそうですが、よく使う操作は基本的に数種類に固まってきますが、そういった操作はダイレクトにボタンに割り当てておくのがベストです。

それがもストレスのない操作になります。

●プレイヤーの感情を揺さぶる操作系の実現方法

先ほどのゲームの操作にも絡む話ですが、プレイヤーが「したい」ことを操作に盛り込むと、そのゲームは気持ちのいいものになります。

例えば、剣を振る、銃を撃つ、という行為は、男心を揺さぶるものです。 それがボタンに割り振られていれば、男としてはとりあえずやってみたくなります。 剣や銃の操作はありがちなものですが普遍性があります。

しかしこれだけでなく、例えば「ICO」では手をつなぐという操作が情緒を出していましたし、シミュレーションゲームでは、軍隊を指揮するという、「指揮官の気持ちよさ」を味わうことができます。 プレイヤーが「したくなる」ような気持ちよい操作は、いろいろなものがあります。

●感覚的で自然な操作にする方法

体感的な操作というものがあります。 体感的な操作を実現できれば、プレイヤーは自然にその操作に慣れるので、ゲームに入りやすくなりますし、インターフェイスのストレスをなくすことができます。

例として、何かを「引っ張る」という操作を考えてみましょう。

引っ張りたいものの近くに行き、ただボタンを押せば引っ張れるのでは、体感的にはなりません。

引っ張りたいものの近くでボタンを押すと、そのものを掴み、引っ張りたい方向に十字キーを傾けると、その方向に引っ張る、という操作であれば、自然で体感的な操作と言えます。 現実にする行為と似た操作になるからです。

現実の行為を模倣した操作にすると、一度その操作を現実で体験しているので、「体感 的な」操作になるわけです。


●必要な操作まで短縮しない

操作が体感的になるということは直感的な操作に近づくということでもあります。 このような体感性を重視する場合は、ワンステップアプローチでなくてもOKです。

操作が効率的である、ということと、操作が直感的であるということは、相反する方向性を持つことがあります。 その場合はケースバイケースですが、その操作が「気持ちのいいもの」であれば、ステップ数が多くても体感的なのでよい場合があります。

基準になるのは常に「プレイヤーの感情を揺さぶるかどうか」です。

このように、必要な操作まで短縮しないことが大切です。

アップルの製品は、そのへんをよく研究しています。 iPhone/iPodTouch は、画面を指で触ると、その方向にスクロールします。 指ではじくように触ると、その分、触っていなくてもすべるようにスクロールします。 これはまるで、スロットマシンのドラムを指で回しているような感覚です。

この操作は直感的でもあり、スクロールバーを目的の位置までいちいち張る必要もなく、効率的です。 直感的であり効率的でもある。 非常に優れたインターフェイスだといえます。

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アクションプラン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
質問 1 インターフェイスの基礎とは、簡単に言うとなんですか?

テクニック編


■1・エモーショナルな状況を想定する

●ゲームが一番盛り上がる「状況」の考え方

エモーショナルゲームデザインのコンセプトは、プレイヤーの「感情を揺さぶる」ことですが、その 大きな要素として、「状況」(シチュエーション)があります。

状況を考えるときに大事なのは、「感情が刺激される状況を想定する」ということです。

では感情が刺激される状況とは、どういう状況でしょうか?

男性であれば、感情が刺激される状況として、戦場などが考えられます。 あるいは、闘技場に入って、これから戦う、ということ状況が考えられます。

もしくは、ごくありふれた日常の中でもいいのです。 あなたの今まで生きてきた経験の中で、大きく感情が刺激された「状況」があるはずです。

待ちに待った映画の公開日に並んだときの興奮、漫画に興奮し何度も読み返した経験、死ぬ寸前の緊張を感じた、恋愛をしてドキドキした、病気になって死ぬ思いをした…等々。

あなたが実際に体験した、感情を動かされたその状況こそが、あなたのゲームデザインのも大事なポイントになります。

なぜなら、その経験こそが、あなたが実際にゲーム上で実現できる「感情の大きな揺れ」になるからです。

映画でも、実体験でも、感情を揺さぶられた状況を思い返してみて、どの要素に惹かれたのか、分析し、集めておいてください。

そして、その状況をゲームに盛り込むようにすれば、ゲームは現実にプレイヤーの感情を揺さぶるものになります。


そして、「もプレイヤーが感情を揺さぶられる状況」…それがゲームのゴールになります。

その状況から逆算して、状況設定に必要なシステムや素材、そこに行き着くまでの感情の盛り上げを想定し、ゲーム全体が計算される、というわけです。

そうやってゲーム製作をすると、必然的に「もプレイヤーが感情を揺さぶられる状況」がゲームのクライマックスになり、そのゲームが持つ、大の「感情を揺さぶる」状況ができあがるわけです。

「自分が実際に経験した状況を盛り込むしかないの?」というと、そうではありません。

その状況を抽象化して、別のガワをかぶせれば、あなたが経験した「感情の揺さぶり」を実現しつつ、世界観はまったく違うものにすることにできます。

●ゲームが確実に盛り上がるしかけ「時間の構造」

抽象化の話が出たところで、「人がも感情を揺さぶられる」状況のひとつを、ここで挙げます。

緊張感があるシーンは、たいていの場合、時間制限と結びついています。

TV ドラマの「24」はその典型で、大統領の暗殺を阻止することや、核兵器の使用を食い止めるなど、1 つのドラマ全体に関わる大きな時間制限があります。

そしてその中に、中規模の時間制限が複数(たいていの場合3つほど)があり、その中にさらに、目の前にある解決しなければならない小さな時間制限があります。

このように、大・中・小の時間制限が入れ子になっているので、観客は常に時間制限の中で戦う主人公を見続けることになり、目が離せなくなるのです。

これは、ゲームにも応用できる構造です。

●なぜ、最悪から最高の状況へ持っていくのか?

感情を大きく揺さぶる次の方法は、感情のギャップを意図的に作り出すやり方です。 ではギャップとはなんでしょうか?

ギャップとは、「差」のことを言います。 いつもとの差があればあるほど、人は驚くのです。

たとえば、いつもテストで0点の生徒が100点を取ったら、すごい! となりますね。 いつも80点の人が100点を取っても、驚くべきことではありません。 いつも0点なのに100点を取るから、驚きがあるわけです。

では、これ以上に、感情の揺さぶりを作るにはどうしたらいいでしょうか? それには、2つの方法があります。

まず1つは、マイナスから始めること。

学校も行かない、暴走族で漢字もかけない、算数もできない自他共に認めるバカが、ひょんなことから学校に来てテストで100点を取った、となれば、0点のやつが100点を取るよりも、さらに驚きが大きくなります。

もうひとつは、結末が、予想される結末よりも大きく上回ること。

100点取れば最高だと思っていた結末が、MITの教授がやってきて「これは…この解き方はいまだかつて見たことがない! これは数学の革命だ! 君には1000点をあげてもおかしくない!」などとなれば、またさらにギャップは大きくなります。

このギャップによって感情の揺さぶりを大きくする方法を、「ギャップ理論」と呼んでいます。 基本的には、ふり幅を大きくすることです。

いかにマイナスを大きくするか。 そしていかにプラスを大きくするか。 それを考えるのです。

任天堂の「メトロイドプライム」というゲームでは、主人公のサムスは初、完全装備で登場します。


しかし序盤、ある事件で、着けている装備が全て取れてしまいます。 つまり、マイナスの状況からのスタートになるわけです。

ゲーム中にアイテムを取っていくと、段々初期の完全装備の状態に近づいて行きます。 終的には、初の完全装備の状態よりも強力な状態になっていくのでしょう。(私は結局クリアできていないので、わからないのですが…)

またFPSの例で考えてみます。

敵は銃を持っているのに、自分はバットしか持っていない状況があったとします。 それは、お互いの装備の状態からして、バットの方が圧倒的に不利です。 敵に見つかれば、あっけなく蜂の巣にされるでしょう。

そういう状況から始めて、逃げ回り、ひょんなことからバズーカを手に入れたとします。 そのあまりの逆転状態、状況のギャップに、人は大きな興奮を感じるのです。 これも、マイナスの状況から、大きなプラスの状況になっていますね。

RPGも、基本はそのような作りになっています。

初はスライムに苦戦し、死にそうになります。 しかしだんだんと経験値を積んでレベルアップし、強い装備を手に入れて、強くなってくる。 スライムなど一撃で倒せるようになります。 そして後はドラゴンをも倒せるようになるわけです。 これも、マイナスの状況から、考えもしなかった大きなプラスの状況になっています。

ゲームの展開全体でマイナスからプラスという流れを想定しておくと、途中が面白くなり、さらにゴールのときに大きな驚きを作ることができます。

●失敗、成功、失敗、成功の流れを考える

ゲーム全体の展開をマイナスからプラスに持っていけばいいのはわかりました。 では、ゲームの途中はどうすればいいのでしょうか? ゲームの途中も、マイナスからプラスの流れを入れ込んでいきます。

具体的に言うと、ゲーム中にはなんらかの障害物や、達成すべき目標が登場しますが、そ れが超えられていない状況をマイナスとし、超えた状況をプラスと考えるのです。


障害物(や達成すべき目標)がゲーム中に配置されるということは、その障害物を乗り越えるまでの工程があり、その障害物を越えた結果があるということです。

その中で、マイナスとプラスのギャップを大きくするというわけです。

ゲームは障害をいくつも越えて、終的なゴールに到達するわけですが、ゲーム全体とその障害の関係を図に表すと以下のようになります。

何度も死んで攻略法を覚える「死にゲー」と呼ばれるジャンルのゲームは、失敗、成功、失敗、成功の流れです。

死ぬのを繰り返し、やっと障害物を越えると、そこには達成の快感があります。 その快楽がまた得られる、という期待のもとに、次の障害物へと挑戦するわけです。

RPGも、システム的にこのような流れを実現しています。 初のエリアで勝てない敵がいなくなっても、次のエリアに行けば、また死にそうなバランスになっている。 そしてそのエリアでまた勝てない敵がいなくなっても次のエリアに行けば…というわけです。

 この場合、マイナスとは「敵に苦戦する状態」であり、プラスとは「勝てない敵がいなくなった」状態です。

この「波」の繰り返しが、プレイヤーを次へ次へと押し進めるわけです。

●ギリギリの状況とは?

HP(ヒットポイント)理論と呼んでいる手法をシェアしましょう。

これはどういうものかというと、ゲームには、「緊張するHP量のやり取り」というものがあります。 たとえば、RPGでの例を挙げましょう。

5 回以上敵に殴られても自分は死なないとなれば、プレイヤーは安心します。 ちょっと逃げて、回復させてから倒せばいい。

3~4 回で死ぬ場合、「そろそろまずいな」と思い始めます。 回復させながらの戦闘で、回復を使う回数が多くなるからです。 回復薬は、そのうち切れてしまいます。

1~2 回で死にそうだと思うと、プレイヤーは焦ります。 攻撃できずに回復を使い続けなければいけないか、一撃で倒されるからです。

「バイオハザード」も、同じバランスで作られています。

一番初めのバイオハザードの場合ですが、ヒットポイントの表示は、

・グリーンは 5 回以上殴られても死なない状態 ・イエローは 3~4 回殴られたら死ぬ状態 ・レッドは 1~2 回で死んでしまう

というような感じで設定されています。

このヒットポイントバランスは、ゲームにおける黄金パターンです。

もちろんリアルタイムゲームなどで、攻撃の頻度、間隔などで若干の違いはありますが、3~4 回叩かれれば死ぬバランスの期間が長くなるように調整すれば、常に緊張感のあるゲーム内 容になります。


ほかに考慮する要素としては、敵のエンカウント率、やむを得ず食らってしまうダメージがあり ます。 これらも計算に入れて回復アイテムを配置しましょう。

このバランスから少しでも外れてしまうと、とたんに難しすぎたり、易しくて退屈なゲームになっ てしまいます。 絶妙なバランスの維持が必要なのです。

ぎりぎりの状況、死ぬのが間近だ、という状況をいかに引っ張るか、これ如何で、ゲームはすごく緊張するものになるのです。

●絶望を超えた状態を作る

ぎりぎりの状況というのは、要するに「拮抗する状況」です。 しかし、これ以上の状況があります。

どういう状況かというと、

「拮抗状態を超えさせる」

ことです。

つまり、「限界状況を作る」ことです。

詳しく説明しましょう。

たとえば、アクションゲームで、HPが2しかない。 もう死んでしまう。 けれど、このドアを開けなければならない。

ドアを開けると、大量のモンスターが毒液を飛ばしてきて死ぬことがわかっている。 でも、開ける以外に先に進む選択肢はない。 そこでプレイヤーは絶望するわけです。 それが大きく感情を揺さぶるのです。

予測の中で、死ぬことをわからせる。

この状態になると、プレイヤーはこれ以上なく悩みます。
どうしたらこれを切り抜けられるのだろうか? と。

別の例では、「GTA」シリーズで、限界状況を演出しています。

「GTA」では、プレイヤーの犯罪度が高くなると、カーチェイスが激しくなり、大量に警官が出てきて、さらにヘリが出てきて空から撃ってきます。 そして後は軍隊が出てきて、戦車が現れます。

そうなるともう地上にはいられなくなり、建物の陰に隠れて、ヘリを避けつつ下にいる警官と銃撃戦になります。 バズーカ砲でヘリを打ち落とすのですが、必ず弾切れになります。 敵には絶対に勝てません。

絶対に勝てない、死ぬしかない状況で自分は生きている! という状況になるわけです。

この状況を作ると、普段感じる感情からは、群を抜いている、刺激の強い感情をプレイヤーは味わうことになります。

そして、ここからが大事なのですが、この状況を乗り越えさせることで、プレイヤーは奇跡にも似た感情を感じることになります。

「GTA」であれば、この状況から脱出する方法は1つだけあり、乗っている車の色を塗装屋のガレージで塗り替えることです。

ガレージまでの逃走は非常に難度が高いのですが、これに成功すれば、思わず握りこぶしを握ってしまうような達成感を実現することができます。

限界状況を作るには、まず、絶対に勝てない、絶対に超えられない、という限界をプレイヤーに認識させること。 たとえば、必ず削られるHPの予測をさせたり、持っている銃の弾から、勝てる敵の数を予想 させることです。

そしてその中で、逃げ延びて生き残ることができ、自分が望まない限り死なない状況を作ることです。

そしてこの状況から脱出させることができれば、プレイヤーはこれ以上ない歓喜を感じることができるでしょう。


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アクションプラン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

質問1 あなたが経験した、エモーショナルな状況(実体験でも、映画や漫画、アニメ、ゲーム の中のことでもかまいません)には、どのようなものがありますか?

シチュエーション:

感じた感情 :

シチュエーション:

感じた感情 :


シチュエーション:

感じた感情 :


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アクションプラン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

質問 1 今まであげた例をもとに、あなたの作るゲームのゴールは、どのようなものになります か?(必ずしもエンディングということではなく、プレイヤーに味わって欲しい感情が実現されてい る状況)

質問 2 質問1 の状況を実現するために、どのようなゲームシステムにすればよいでしょうか?


■2・ゲームバランスのテクニック

バランスとは、プレイヤーと相手(敵やプレイヤーを取り巻く状況)との均衡のことです。 これを考えていきましょう。

●バランス調整のゴールとは?

バランス調整は何を目標、ゴールとすればいいのでしょうか?

感情を揺さぶる、という観点から言えば、「拮抗状態」を実現し、ゲームによって程度こそあれ、プレイヤーに「緊張」を与えるのが、バランス調整の目標になります。

ではなぜ緊張なのでしょうか?

人間はどういうときに緊張するかというと、日常的にありえない場面に遭遇したときに、緊張します。

つまり、「異常な状況」のときに、緊張するのです。 恋愛ゲームであれ、アクションゲームであれ、RPGであれ、パズルゲームであれ、ゲームは日常では低頻度な、ありえない達成感や勝利、うれしい状況に遭遇するために、感情が揺さぶられ、面白いと感じます。

ゲームで感じることのできる感情はさまざまですが、いずれにしろ、「痛みの状態」から「快楽の状態」へ至る過程があります。

恋愛ゲームであれば、恋が成就していない状態から恋が実る状態への過程がありますし、 アクションゲームであれば、敵がはびこっている状況から、敵を一掃した状態への過程があります。 そしてその過程の途中には、かならず解決すべき障害があります。

その障害を乗り越えるためには、なんらかの努力、挑戦が必要ですが、それをこなした結果、障害を乗り越えると、快楽がそこにある、というわけです。 ストレスのあとに、開放感があるのです。

どんなゲームであれ、「痛みの状態」からなんらかの障害を乗り越え、「快楽の状態」に至ります。

これは、映画でも小説でも漫画でも、物語をつづるメディアには必ずある構造です。

ゲームはプレイヤーがリアルタイムで物語を作り出していくメディアですが、構造的には同じです。

ゲームが「拮抗状態」を維持し続けるように作ったほうがいいのは、物語において、一時も目を離せない、飽きさせない展開を作るのと似ています。

●拮抗状態を長く続かせる方法

「ストリートファイター」のシリーズで、HPが少なくなると、その分HPの減りが小さくなる仕様がありました。 そのしくみによって、ゲームの拮抗状態が長く続くようにしたのです。

ナムコの「ファイナルラップ」という通信対戦のレースゲームがありました。 このゲームでは、トップを走る車はスピードが遅くなります。 順位が下であればあるほど、車のスピードが上がりやすくなっています。 そのようにして、拮抗状態が生まれるようにしていたのです。

なぜ拮抗状態が長く続くといいのでしょうか?

端的に言うと

「拮抗状態は、誰が勝つのか結果が出るまで見ていないとわからない」

からです。

初から片方が圧倒的有利で、優劣も明らかだと、見ていなくても結果がわかります。 それは後まで見なくてもいい試合なのです。

しかし拮抗していれば、結果は後まで見なければわかりません。 後まで見なければいけない状況は、時間を使います。

人は時間をかけた物事に対しては、その使った時間分の対価を取ろうとします。 「せっかく時間をかけたんだから」という思いです。 これが、「ハマり」につながっていくのです。


●ターン制ゲームの優位性

リアルタイムゲームよりターン制ゲームのほうが、拮抗状態を長く続かせやすい作りにできます。

ターン制ゲームの「風来のシレン」では、モンスターハウスというイベントがあります。

「風来のシレン」は、通路と部屋のダンジョンが自動生成され、そこを探索するゲームですが、ランダムで部屋のひとつがモンスターで詰まった部屋になります。

この部屋を「モンスターハウス」というわけです。 モンスターが詰まっている代わりに、貴重なアイテムもいっぱいあります。

モンスターハウスでは、プレイヤーはたいていの場合、悩みます。 まず、大量のモンスター相手にどう生き伸びるか。 そして、落ちているアイテムを何とか全部取りたい、と考えるわけです。

その間、プレイヤーは、悩み、緊張しっぱなしになるのです。 深い階層まできたのに、ステージが始まったらモンスターハウスのど真ん中に出て、モンスター に囲まれてしまったときなど、状況が深刻であればあるほど、緊張は高まります。

この悩んでいる間、ターン制のゲームなので時間が静止している、というところが、ターン制ゲームの優位なところです。

ほかのターン制のゲームでも、似たような状況が発生します。 例えばマージャンであれば、他の3 人がリーチをしてしまった! 自分は振り込んでしまうかもしれない! 自分の順番で、どの牌を捨てるか悩みます。 その間、緊張しっぱなしなわけです。

リアルタイムのゲームでは、このような緊張状態を維持するのが割と難しいのです。 プレイヤーがその緊張状態に耐え切れず死んでしまえば、緊張はほどかれてしまいます。

シミュレーション、パズルなど、非リアルタイム系のゲームは、緊張感を引っ張ることができるのです。

ターン制のゲームを作る場合は、この「緊張状態が持続する」優位性を活かして、も緊張するであろう場面を引き伸ばすよう、システム的に工夫しましょう。

●永遠に遊べるゲームを作る方法

もうひとつ、拮抗状態を引き伸ばすには、三つ巴を作ることです。 これは対戦ゲームなど、プレイヤー同士が試合をするゲームでよく用いられるしくみです。

三つ巴で一番分かりやすい例は、じゃんけんです。 じゃんけんでは強がいません。

じゃんけんでは、どの手を出しても勝てる確率は1/3です。 勝つか負けるか引き分けか、になります。 これは、ひとつには有利、ひとつには不利、そして同じであれば拮抗する、ということです。

これがなにを示すかというと、たくさんの試合をしたときに、平均して勝率は五分五分になる、 ということです。 つまり、買ったり負けたりを繰り返して、結局は拮抗する、ということです。

日本ではあまり話題になっていませんが、1998年にブリザード・エンタテインメントより発売されてから現在に至るまで、世界的には大人気のゲーム、「スタークラフト」なども、三種族の三つ巴による戦略シミュレーションゲームです。

十年以上遊ばれているゲームですから、驚異的です。

また、世界初のトレーディングカードゲームであり、「ポケットモンスター」、「遊☆戯☆王」の元 ネタともいえる、「マジック・ザ・ギャザリング」というカードゲームがあります。

これは1993年の初版から、2009年までで第10版まで出て、遊ばれ続けています。

これだけ長く遊ばれているのは、五つ巴で強がないため、戦略が生まれ続けているからです。 奥の深さがあるのです。

これらのゲームがいつ遊んでも面白いのは、バランスがいくつかの「巴(ともえ)」になっていて、「拮抗」を内包しているバランスになっているからです。

三つ巴を実現するには、まずは簡単なバランスから始めてみることです。

例えば、シミュレーションゲームで三つ巴を実現するとしましょう。 考え方としては、シンプルに、じゃんけんを作ることです。

弓兵は、遠距離攻撃ができるので、戦士に強い。 戦士は、地から強いので、忍者に強い。 忍者は、すばやいので、弓兵に強い。

というバランスのユニットを用意します。 攻撃頻度でバランスをとってもいいですし、特定のユニットに対して攻撃のボーナスがつく、というようなシステムでもいいでしょう。

この3つのユニットを持ち、対戦するとなると、どうなるでしょうか? プレイヤーは、相手が弓兵を出してきたら、忍者を出してくるでしょう。 相手が戦士を出してきたら、弓兵を出してくるでしょう。

お互いに、相手の出方を調べたり、予想したりして、ゲームは進むはずです。 索敵のシステムが重要になるかもしれませんね。

このように基本的な三つ巴のバランスができたら、あとはそれを拡張していくことです。

3つのユニットだけでなく、6つにして、それぞれどれにどれをぶつけると有利か、不利かでバランスを調整する方法もあります。

これはそれぞれのユニットの関係が複雑になりますので、バランス調整は非常に難しくなります。

わかりやすい方法としては、地上、空中の種類を作り、それぞれで三つ巴を作るという方法があります。 地上と空中のユニットは、戦うと拮抗するようにします。

また、RTSのように、ゲームの進行レベルでユニットを分け、レベルごとに三つ巴を作る方法も、比較的わかりやすいバランスの作り方です。 低いレベルのユニットは、高いレベルのユニットに勝てないようにすればOKです。
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アクションプラン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

質問 1 あなたが今作りたいゲームで、拮抗状態をできるだけ長くするとしたら、どういうゲーム システムを構築すればいいでしょうか?


■3・エモーショナル・レイヤード・ゲームデザイン

●ゲームデザインにおける「レイヤー」とは?

ここで、ゲームデザインにおいての、重要な考え方を公開したいと思います。

ゲームシステムの構成の仕方で、迷っている人は多いと思います。 どのようにシステムを組み合わせたら、プレイヤーの感情を効果的に刺激できるゲームシステムを構築できるのだろうか? というように。

ここで説明するのは、非常にわかりやすい、ゲームシステムの構築法です。

まず、この話の理解を促進するために、前提となる話しをしましょう。

ゲームに実装されるものは「機能」と「ルール」がありますが、これらは密接な関係にあります。

「機能」とは、例えば「ポーズ機能」などがあります。 これはルールではなく、ゲームを快適にプレイするための機能です。

ルールとは、例えば「毒を食らうと体力が徐々に減っていく」というルールがあります。 これはゲームの勝敗、達成・未達成を左右するので、ルールです。

しかし、「ポーズ機能」は、これがない場合に、プレイに大きな変化が出る場合があります。

例えばアクションゲームで、敵が複数迫ってきた。 その際にポーズをかけ、この場面で使うアイテムを考える時間を取るとします。 すると、ポーズ機能がある場合とない場合では、プレイの仕方が変わってくるわけです。

これは、ある意味「ルール」に変化を生じさせている、と言えます。 ポーズがなく、考える時間がなければ、慌てふためいてダメージを食らう回数が多くなり、難度が上がることも考えられるからです。 これはゲームの進行に大きく影響する要素です。

この意味で、「機能」は「ルール」と密接な関係があります。 まとめやすいよう大雑把に言えば、「機能」と「ルール」とは、ゲームシステム構築において、同義と捉えてもいい要素です。

ここで、これらのシステム要素を、「レイヤー」と考えて見ましょう。

レイヤーとは、階層構造の中の、ひとつの階層を意味します。 ゲームシステムを、このレイヤーの重なりと考えるのです。

ゲームシステム概念図

例えばRPGでの、毒のシステム、空腹でHPが減っていくシステム、あるいは武器を使うと磨耗するというシステムは、一つ一つが感情を揺さぶる「レイヤー」と考えられます。

RPGというジャンルは、平均して、以下のようなレイヤーを持ちます。

・世界観 音楽、グラフィック
・フィールド移動システム
・ターン制戦闘システム
・アイテム収集
・装備システム
・魔法習得システム
・経験値でのレベルアップシステム

また以下に示すような追加的なレイヤーがつくこともあるでしょう。

・毒システム
・ムービー
・空腹システム
・装備磨耗システム

こうしたレイヤーが重なって、ゲームが出来上がっています。

レイヤーを重ねていくことで、複雑な状況を作り、複雑に感情が刺激されるシステムを作ることができます。

先ほどのRPGで言えば、追加的なレイヤーがつくことで、毒を受けていてながら空腹で、行動するたびにHPが減り、なおかつ武器も防具も磨耗していて、もうまずい! という、緊張する状況を作り出せるわけです。

ここで注意してほしいのは、これらのレイヤー1つ1つが、感情を揺さぶる要素として存在する、ということです。 ですから、「エモーショナル・レイヤード・ゲームデザイン」なのです。

感情を揺さぶらないレイヤーは組み込む意味がない、と考えてください。

レイヤー1つ1つは、どんな感情を刺激するのだろうか? と考えてください。 そして、レイヤー1つ1つを、感情を刺激するようにするのです。 そうすれば、ゲームシステム的に無駄な要素はなくなります。

レイヤーは、単純に緊張感を生むレイヤーもあれば、情緒的な感情を生むレイヤーもあるでしょうし、その種類はさまざまです。

そのレイヤーが重なれば、さまざまな感情が重なることになり、そこで生まれる状況は複雑な 感情を生み出します。 感情が重なることで、思いもよらない情緒が生まれ、その組み合わせが相乗効果を生み出します。

レイヤー同士の重なりで、まさに「面白さを織り込んでいく」ことができるわけです。

●ジャンルはレイヤーで表現できる

ジャンルの基盤となるシステムは、レイヤーの重なりで表現できます。

先ほど、RPGというジャンルをレイヤーの集合で表しましたが、世の中にあるRPGは多かれ少なかれ、共通のシステムがあります。

例えば、


・フィールド移動
・経験値でのレベルアップシステム
・アイテム収集
・装備システム
・魔法習得システム

などは、どんなRPGでもほぼ載っています。

これらのシステムの、フィールド移動をトップビューにしたり、クォータービューにしたりして様相を変化させたり、転職システムなど、新しい要素を乗せて違う遊びを盛り込んだりしたものが、世の中に出回っているたくさんのRPGというわけです。

こうしてレイヤーで考えると、既存のゲームジャンルを踏襲してゲームを作る場合に、

「どのレイヤーを変えれば、もっと感情を揺さぶるものにできるだろううか?」 「どんなレイヤーを追加すれば、ゲームの面白さをもっと強化できるだろうか?」

というように考えることができます。

レイヤーで考えると、取り替えなくてもいい「基盤となるレイヤー」と、「入れ替えて試行錯誤するレイヤー」というふうに、分けて考えることができます。

また、レイヤーの数でシステムの規模をイメージでき、実現したい感情をどう盛り込むかという ことをレイヤーで考えられるので、ゲームシステムを整理しやすくなります。

●レイヤーをコレクションする

レイヤーはあなたの作るゲームシステムの要素として、「コレクション」することができます。

例えば、RPGの、

・毒システム 毒を食らうと、時間が経つか解毒するかしないと体力が減り続ける
・眠りシステム 眠りの効果を食らうと、時間が経つか目覚まし薬を飲まないと動けない
・カウントダウン死システム 死へのカウントダウンが始まり、解かないと死んでしまう

といったようなシステムレイヤーは、別のジャンルのゲームにも応用して組み込めるものです。

ほかにも、ゲームのモチベーションを続けさせるためのレイヤーとして、

・コレクションシステム100個等、アイテム等を集めるとコンプリート
・アンロックシステムレベル等の指標が増えると、アイテムなどが使えるようになる
・チェインリアクションシステムセーブしようと思ったら、シナリオの2/3が終わっていて、クリアしてからせーブしよう、となり、それを繰り返す

というようなレイヤーを集めておくこともできます。

こういったゲームデザイン「資産」を蓄積しておくことは、いつでも質の高いゲームシステムを考えたい場合に、非常に有効な手段です。


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アクションプラン ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

質問 1 あなたが今までプレイしたゲームには、どのようなレイヤーが使われていたでしょうか? あなたがプレイしたゲームのベスト3で、レイヤー分析してください。


■4・ゲームにハマらせる方法

基本から言えば、プレイヤーをゲームにはまらせるには、ゲームに時間をかけてもらうことです。 人は、時間を費やしたことに対して、強い執着を持つようになるからです。

では、時間をかけてもらうにはどうしたらいいのでしょうか? それには、例えば、

・RPGのレベルアップシステム
・コレクションアイテム収集システム

などの、ゲームに大量の時間を使うシステムを組み込むことです。 これらは時間がかかり、一回のプレイで全てをやり尽くすことができません。

しかし、ただこういったシステムを盛り込めばいいというわけではありません。

ゴールまでの道のりに、「そんなに時間を使うのはもったいない」と、プレイを躊躇する人もいます。 それから、始めたはいいものの、プレイするモチベーションが上がらなくてプレイを放棄する人もいます。

こうしたプレイヤーに、いったいどうやってプレイのモチベーションを上げてもらえればいいのでしょうか?

人は、ちょっと時間をかけただけでは、それほどゲームに執着を持ちません。 少なくとも1時間は時間をかけてもらわなければ、使った時間に「もったいなさ」を感じることはありません。 逆に言えば、初に1~2時間の時間を使ってもらえれば、リピートしてゲームをプレイしても らえる確率がぐっと高くなります。

では、1時間の時間をかけてもらうにはどうしたらいいでしょうか?

具体的には、2ステップあります。

●1・ゲームのことを知ってもらう

まず初に、ゲームのプレイ方法、操作方法をステップ・バイ・ステップで丁寧に教えたり、ムービーで世界観を見せたりします。

「バイオハザード」等、ヒットしているゲームは、ムービーなり、チュートリアルなりで、ゲームの遊び方、操作方法を教えています。

これは、初で勝手のわからないプレイヤーに、スムーズにゲームに入り込ませるという目的があります。

そして、操作やルールを一度覚えたら、まずは覚えたことを試してみたい、という欲求が生まれるので、すんなりとゲームの導入を始めてもらえるわけです。

さらに、人はある物事に詳しくなると、それに関わりたくなるという傾向があります。 ここでゲームについて詳しくなってもらえば、関わっていきたくなるわけです。

この段階は、チュートリアルがなくともごく簡単な操作で進められて、すんなりゲームに入っていければ、それにこしたことはありません。

●2・ハリウッド映画の最初の15分

その次の段階で、ゲームの序盤に突入していくわけですが、ここで大事なのは、初の中断までに、「感情の高ぶり」を経験させてしまうということです。

初の中断とは、RPGで言えば1回目のセーブポイントであり、アクションゲームであれば1回目のゲームオーバーもしくは1ステージクリアのことを指します。

つまりプレイヤーが初めてゲームを離れることができるタイミングです。

ハリウッド映画では、冒頭の15分以内にインパクトのあるシーンを見せ、観客に先のシーンを見たくさせろ、というセオリーがあります。

ゲームもそれと同じで、初のゲーム中断ポイントまでに、どうしても先を見たくなるようなインパクトがあれば、次をプレイする強力なモチベーションになります。 寝る時間になり、しかたなくゲームをやめて、ふとんの中で「早くやりたい! 早く明日になれ!」と思ってしまう状態になるわけです。

ではインパクトとはなんでしょうか? どう作ればいいのでしょうか?

基本にあるのは、ツァイガルニック効果です。 不完全なものを完全にしたいという欲求の効果です。

パズルのピースがひとつ残っていると、どうしても埋めてみたくなります。 この、どうしても埋めたい、という気持ちを引き出すことを考えます。

近では、美麗なムービーを挿入して、次はどうなるのか、次はどんなムービーが見られるのか、という期待をさせることが多いですが、これだけではありません。

基本は、なにかが不完全な状態である、ということを認識させればいいのです。

例えば、

・道端で人が怪我をして倒れているところを見せ、「地下二階のモンスターに親を殺された… 仇をうちにいって返り討ちにあうなんてな…くやしいよ…」と、しゃべらせ、死なせる。

・チュートリアルで経験値を貯めさせて、あともう少しプレイすれば、レベル2になるという状態から始めさせる。そしてレベルが上がったら、盛大にほめる。

などとするのです。

人は、一度自分で目標を設定すれば、なんとかそれを達成しようとがんばります。 注意したいのは、プレイヤー本人に達成したいと思わせることです。 決して「これをやれ」と、頼んではいけません。 あくまで自発的に目標設定するからこそ、強いモチベーションになるのです。

もうひとつ肝心なことは、「ちょっとやればすぐに完全になる不完全を用意」することです。

例えばアクションゲームで、いきなり30面クリアしてくれ、と言われても、ゴールまでの道のりが 長すぎて、モチベーションになりません。

しかし、まず3面クリアすれば、新しいアイテムが手に入るよ、とすれば、「すぐにできそうだしま ずはそこまでやってみよう」、と、プレイのモチベーションが非常に高まります。

ゲームの冒頭に「ちょっとやればすぐに完全になる不完全を用意」して、即、プレイにのめりこ んでもらうようにしてください。

●その後は、どうすればいいのか?

では、冒頭でのめりこませたら、その後はどうすればいいのでしょうか?


これは前章でも書いたことですが、「ツァイガルニック効果の入れ子」を作り、ゲームのゴール までツァイガルニックで引っ張ります。

ツァイガルニックの入れ子

ツァイガルニックの基本は「不完全」ですが、そこから広がるバリエーションとして、

・時間制限
・疑問と解決
・痛みと快楽
・混沌と秩序

なども考えられます。 いずれにしろ、プレイヤーのモチベーションとなるのは、「やれるのにやっていないこと」を用意することです。

例を挙げましょう。

例えば、オートマッピングシステムを使って、行けない場所を見せる。 これは多くのRPGが使っているシステムですが、行っていない場所が明確に見えます。 すると、プレイヤーはマップを踏破しようとするので、その場所に行こうとします。 これは「目の前の不完全」と言えます。

別の例では、マップを進んでいったら、「行けないところ」がたくさんあることに気づいた。 そしてそこには、宝箱が置いてあるのも見える。

こうした作りは、「ゼルダの伝説」など、任天堂系のゲームが典型的です。 はしけの先にハート(命の器)があるのに、初は行けません。 アイテムのはしごを取ると、行って取れるようになります。 これは、「中規模の不完全」と言えます。

「大きな不完全」は、終ゴールを意味します。

大きな不完全
中規模の不完全
目の前の不完全

「ドラゴンクエスト1」では、スタート地点にラダトームの城があって、竜王の城がはじめからもう 見えています。 そのようになっていると、竜王の城に行ってみたくなるのです。 それが、ゲームを後までプレイしてみようというモチベーションになります。

先ほども話しましたが、任天堂のゲームでは、セオリーとして、アイテムを取らないと行けない場所をマップに用意しています。

メトロイドでは、丸まりを取らないと、狭い通路の先に進めないところがあります。 通路の先が見えているのに、丸まりを取っていない時点では、行けないわけです。 そこでプレイヤーは、「行きたい!」と、じらされるわけです。

スーパーマリオブラザーズでは、土管です。 土管の先に何かがあるかも、と、土管に乗って、十字キーを下に押して、土管に入って見たくなるわけです。 空中に隠しブロックがあるかもしれないと思って、叩いていない空中を叩きたくなるのです。

●成功を積み上げてもらう

プレイヤーにゲームにハマってもらうには、「報酬」や「お祝い」を忘れてはいけません。

プレイヤーに時間をかけさせるのが肝とはいえ、ただぼんやりと時間をかけさせることはできま せん。 プレイヤーは、退屈な行動にすぐに飽きてしまいます。

プレイヤーにゲームを長く遊んでもらうためには、成功を積み上げてもらうことです。 成功を積み上げるとは、明確に「成功である」と認識してもらうことです。 そこで、「報酬」や「お祝い」が出てきます。

もわかりやすいのは、なにかを達成したら、プレイヤーキャラになにかを「プレゼント」すること、もしくは「ほめて」あげることです。賞賛することです。

RPGのレベルアップシステムは、非常にわかりやすい「報酬」と「お祝い」があります。

プレイヤーが敵を必要数倒すと経験値がもらえて、それを積み上げるとレベルアップします。 レベルアップするとファンファーレが鳴り、賞賛が与えられます。 そしてステータスを振り分け、キャラクタを育てる楽しみが、成功の報酬としてあるわけです。

RPGや戦国シミュレーションゲームのレベルアップシステムは、小さな成功がシステムとして組み込まれているわけです。

またレベルアップによって、さまざまな「魔法」が使えるようになるのも、よくあるシステムです。

レベルの低いうちは「小さな成功」なので弱い魔法がもらえるだけですが、レベルが上がってくればその経験値稼ぎの労力に見合った「大きな成功」、つまり強力な魔法が与えられます。

成功の規模によって、プレイヤーに与えられる報酬、お祝いが変わるというわけです。 これはプレイヤーの努力に見合ったものが与えられるわけですから、プレイヤーもそれだけ報われ、喜びます。 逆に言うと、時間をかけた分、もしくはそれ以上の報酬を与えなければ、プレイヤーは飽きてしまいます。

ゲームが持っている報酬やお祝いが消費しつくされ、与えられるものがもうない、とわかってしまえば、プレイヤーは必然的に「このゲームはやりつくした」と考えるので、そこでゲームの寿命は尽きたことになります。

●さまざまな「報酬」でプレイヤーを魅了する

報酬はゲーム内で「役立つ」ものであることが必要ですが、なにもパラメータやアイテムだけではありません。

任天堂の「メトロイド」では、アイテムを手に入れることで、「丸まり」、あるいは「ロングビーム」、 「アイスビーム」、「波動ビーム」等が手に入ります。

レベルアップの変わりに、プレイヤーキャラクタのアクションのバリエーションが増えるわけです。 これはよくあるシステムで、ぜんぜん珍しくありません。

しかし、このアイテムを入手し、アクションを増やすこと自体が、ゲームを進めるためのキーになっているところが秀逸です。 アイテムを手に入れて装備が増えたという報酬と同時に、その装備を使って行ける場所が増えているわけです。 似たような構造は、「ゼルダの伝説」も持っています。

これはアイテムを手に入れることで、操作のバリエーションが増えるので、非常に面白い「報酬」であると言えます。


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質問 1 あなたが今作りたいゲームの中に「ツァイガルニックの入れ子」を構築するとしたら、それぞれの段階でどういうツァイガルニックを盛り込みますか?


■5・インパクトを作り出す方法

インパクトとは「衝突・衝撃」と訳されます。 ゲームデザインにおいて、どういうふうにプレイヤーを驚かせるかは、非常に重要です。

このインパクトを作り出すことができただけで、ヒットしているゲームもあります。

●思い込みを確実に作る流れ

インパクトを作り出すひとつの方法として、アンカリングテクニックを説明します。

アンカリングのアンカーとは、船の錨(いかり)のことです。 アンカリングとは、錨を下ろして固定する、つまりプレイヤーの思い込みを作り出す、ということです。

例えば、宝箱を開けると、ゴールドが入っている。 次の宝箱を開けるとやはりゴールドが入っている。 次もやっぱりゴールドが入っている。 何度も続くと、プレイヤーは「その次の宝箱もゴールドだろう」と予想するようになります。 つまりそれが当たり前になっていくのです。 同じ行為に対して、何度も同じ結果が続くと、次も同じ結果になるだろうと思うのです。

そうした思い込みを作ったところで、宝箱をを空けたら大音響とともにモンスターが出てきて、かじりついて離れない! どんどんHPメーターが減っていく! というようなしかけをしておくと、 プレイヤーは大いに驚いてくれるのです。

ほかの例を挙げましょう。 例えば、「バイオハザード」はインパクトでヒットしたゲームの代表格です。

洋館を歩き回っているうちに、プレイヤーは、

・ドアを開ければ、部屋にゾンビがいるかどうかを確認できる
・ゾンビはとても遅い。離れて落ち着いて対処すればOK

というような体験を何度もするので、思い込みを自然のうちに作っていきます。 同じ経験を何度もする、というのが大事です。

そして、その思い込みを作ったあとで、

・ドアを開けたあと、ゾンビがいないと思わせたところで、大音響とともに窓を突き破ってゾンビ犬を出す
・ゾンビ犬はとても早い

という、「思いこみ破り」をするのです。 これにプレイヤーは非常に驚きます。 なにせ、それまでの「常識」が通用しないことが起こるわけですから。

もうひとつ、例を挙げましょう。 ファミコンで「夢工場ドキドキパニック」というゲームがありました。

このゲームは、基本はスーパーマリオと同じ横スクロールアクションですが、草を引き抜いて、出てきた野菜を持ち、それを敵に当てて倒す、という操作があります。

草を引き抜くと、大根やカブが出てきます。 何度引き抜いても野菜が出てきます。

すると、プレイヤーには徐々にそれが当たり前になっていきます。 そしてそれが当たり前になったところで…。

草を引き抜いたときに、大きなロケットが

「ゴーーーーッ!」

と飛んでいくしかけがありました。

これも、やはり思い込みを壊され、プレイヤーは非常に驚きます。

このように、アンカリングによって思い込みを作り、それを破るというプロセスを経ると、プレイヤーにインパクトを与えることができます。


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質問1 あなたが今一番作りたいジャンルで、アンカリングテクニックを使うとしたら、それでどういうインパクトを作りますか?


■6・プレイヤーを焦らせる・パニックに陥らせる方法

ゲームの目的は、プレイヤーの感情を刺激することです。 いろいろな感情の渦に、プレイヤーを巻き込むことです。

感情の中でも、緊張感を刺激すると、その後の感情が、さらに際立ったものになります。 なので、ゲームの冒頭で緊張感を作り出しておくことはかなり大事です。

それができれば、プレイヤーはその後のゲーム展開に「期待」をし、プレイのモチベーションをキープしてくれます。

あなたの刺激したい感情が、恐怖の場合はもちろん、感動でも、笑いでも、緊張感を間に挟むことで、その感情はより大きく感じられるようになります。

そこで、プレイヤーに緊張感を感じさせる方法について、もう少し深く考えましょう。 そして、緊張感が焦燥やパニックにまで高まるすべを考えます。

●緊張を生み出すための基本

緊張感を醸し出すには、時間制限がよく使われる手法です。 基本は、時間制限を設けて、その制限以内に目的を達成しなければならないと思わせるこ とです。

これまで何度も説明しましたが、時間制限は、大・中・小と、「ツァイガルニックの入れ子」にすることで、プレイヤーにプレイの強力なモチベーションを持ってもらうことができます。

例えばTVドラマの「24」では、テロリストが核ミサイルの発射を狙っているので、それを阻止せよというのが、全体としてあります。

その中に、中目標として、核爆弾のスイッチを持っている犯罪者を見つけろ、という中目標があります。

そして、時間内に犯罪者の居場所を知っているキーパーソンに会うために、あの列車に乗らなければならない、そのためには、このタクシーに乗り込まなくてはならない、などの小目標があるのです。

ゲームでも、このように3重の時間制限を重ねるのです。


●ソリッド・シチュエーション

焦らせる方法として、閉じ込めるという方法もあります。

「バイオハザード4」を例に取ります。 「バイオハザード4」は、「アンカリング」によるミスリードを使ってから、「閉じ込め」でプレイヤー をパニックに陥らせるという、非常に賢いプレイヤーの「騙し方」を実現しているゲームです。

冒頭から、何回かゾンビを倒します。 ゾンビをすべて倒すと、音楽がやみます。 これにより、「危険は去った」とプレイヤーは思います。

これを何回か繰り返すことで、ゾンビを全部倒せば音楽が止み、安全になるのだ、とプレイヤーは「思い込み」ます。

その先に進むと村があり、ゾンビが大量にいる場面に遭遇します。 弾が足りないので、全て倒そうとすると、当然弾切れになります。 弾が隠されているのだろうと村を駆け巡りますが、その数はあまりありません。

ここで試行錯誤が発生します。 どうすればゾンビをすべて倒し、ひと安心できるのか?

しかし、ゾンビはどんどん湧き出てきます。 いなくなる気配がありません。

プレイヤーはその難度の高さに絶望します。 弾がないので、殴りながら逃げます。 逃げ惑う中、どうすればいいのか? と、絶望感は深くなる一方です。

すると突然、時計がボーン、ボーンと鳴りはじめ、ゾンビが教会の中に入っていきます。 つまり、ゾンビは全部倒すものだとばかり思っていたけれど、この場面は一定時間耐えること がクリア条件だったわけです。 (がんばって20匹倒してもクリアになります)

思い込みを作ってからプレイヤーを閉じこめ、パニックに陥らせたわけですね。 ここで重要なのは、やはり「アンカリング」です。

アンカリングによって思い込みを作り、ステージの解法を「ミスリード」させたことが、大きな緊張を作ることにつながっています。 ミスリードについては後述します。

●勝てる敵なのに絶対勝てないと思わせる方法

私は「ギャップ理論」という理論を提唱していますが、これは

「絶望の状況からクリアの状況に持って行くと、感情は大きく変化する」

という理論です。

この理論で感情を大化するには、まず「絶望の状況」が必要です。 絶望の状況とは、例えば、現れた敵に対して「こいつには絶対勝てない!」という思いを抱かせることです。

単純な手段としては、ゲーム全体で自分と同じサイズの敵―それもけっこうてこずる―とたくさん戦わせたあとで、自分より「かなり大きな」敵を用意するのです。

すると、今まで小さい敵であってもてこずってきたので、こんなにでかいのには勝てないよ、と思うわけです。

人は自分より大きなものに対して単純に「勝てない」と感じます。 それを助長する流れを作るわけです。

グラッフィック的に、自分の何倍もある敵を見せます。 しかしこれまでと同じように攻撃すれば、多少てこずるけれど倒せるようにしておくのです。

後のボスだからと難度を高にしておく必要はなく、こうした演出的な流れを入れておけば、プレイヤーは「勝てない」と錯覚します。

しかし、こうしたシンプルだけど効果的な方法を取っているゲームは、意外に少ないのです。


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質問 1 本文を参考に、プレイヤーをパニックに陥らせるしかけを10個考えるとしたら、どういう ものが考えられますか?


■7・ドキドキ・ワクワクを作る方法

緊張感をなぜ用意するのか? というと、その緊張を克服した反動によって、うれしい気持ちが増幅されるからです。

ここでは、緊張を克服したあとのことを考えます。

●ゲームの展開に希望を感じてもらうには?

基本的なことから考えましょう。

あなたにも間違いなく「うれしい」と感じた体験があると思いますが、その状況はどういう状況だったでしょうか?

単純に、「お小遣い」や「プレゼント」をもらったときはうれしかったと思います。 これはゲーム中でも同じで、プレイヤーはプレゼントをもらえば、単純にうれしい、と思います。

しかしゲームでは注意点があります。

ゲーム中の「モノ」は、ただの絵やデータでしかありません。 「ただの絵」をゲーム中で所有することになっても、あまりうれしくはないのです。

手に入るものは、以下の2つのいずれかの条件を満たしていなければなりません。

1・ゲーム中で役立つもの
2・プレイヤーにとって、意味のあるもの

例えば、アクションゲームで、城に大きなバズーカ砲がしまわれているとします。 それを手に入れれば、谷間にいるエイリアンを倒すことができます。 途中にいるゾンビも、楽に倒すことができます。

そうすると、プレイヤーはバズーカが欲しくなるわけです。 ゲームを進めるのに「役立つ」からです。

「意味のあるもの」とは、例えばなんの役にも立たないアイテムでも、恋人からもらったとか、 友人からもらった特別な名前のついているアイテムであれば、そのアイテムにはプレイヤーにとって「意味」が込められているものになります。

そういうものであれば、なんの役に立たないアイテムであっても、捨てるわけにはいかなくなるわけです。

●アイテムの価値を何百倍にも引き上げる方法

こうしたアイテムをプレイヤーにプレゼントする、もしくは宝箱などに入れてプレイヤーが手に入るようにするわけですが、このときに、アイテムの価値をさらに引き上げることができます。 「あのアイテムがどうしても欲しい」と思わせることができます。

それはいったいどうするのか? というと、

「情報を何度も与える」

のです。

情報を小出しにしていくのです。 段階的に教えると効果的です。 そうすると、プレイヤーはアイテムに対して期待します。 つまり「ワクワク」するのです。

先のバズーカの例で言うなら、バズーカには遠距離も狙えるスコープがついているぞ、とか、あのバズーカを手に入れればその後しばらくはモンスター退治には困らないだろう、とか、バズーカを守っているのはかわいい娘だとか、段階的に与えるのです。

そうすると、バズーカに対する興味は格段に上がっていきます。 こうした情報は、基本は文字情報で与えていきます。

●あらかじめ恐怖を与えるということ

ドキドキを作るには、「流れ」を意識する必要があります。 先の例のように、「情報を何度も与える」のです。

ドキドキは、要するに先の展開に待っている「謎」や「恐怖」との対峙が予想されていて、それにどんどん近づいているのがわかるから、ドキドキするわけです。

「メトロイド」を例に取りましょう。

シリーズ初のディスクシステム版「メトロイド」では、「誰も倒したことのない、メトロイドという無敵の敵がいる」という情報だけが、マニュアルに書かれています。

これがなんとなく不気味で、でも知りたいと思い、メトロイドが実際に出てくる終地点までプレイヤーを後まで引っ張る動機になったわけです。

そして無敵、という触れ込みから、どれだけ強いのか、どうやって回避すればいいのかが、まったくの謎になっています。 メトロイドと遭遇するのが「恐怖」になっていたわけです。

実際のところは、メトロイドは通常の攻撃こそ効きませんが、アイスビームで凍らせてミサイルをぶつければ倒すことができ、取り付かれても丸まってボムを爆発させれば脱出できるという敵でした。 それでも、メトロイドと初めて遭遇したときは非常に怖かったのを覚えています。

不完全な情報を先に与えることで、プレイヤーは勝手に想像を膨らませます。 そして追加の情報を与えることで、ますますそれに拍車がかかるのです。

それは、正体を見極めたい、という欲求にもつながっていきます。

このしかけは、「敵」だけでなく、「先のステージ」や「先の展開」にも応用することができます。

●「先に体験させる」ということ

「ギャップ理論」は、絶望からクリアに持っていくと、感情は大きく変化する、という理論です。

しかし、絶望からクリアに行くには、プレイヤーに強いモチベーションが必要になります。

絶望の状態から始めて、クリアするまでには、まず目標が必要です。 しかし、ゲーム内では目標に対するモチベーションはそんなに高くすることはできません。

なぜかというと、ゲームの中の目標は「虚構」であり、達成してもなんら現実にいる自分にメリットがないからです。 なので、ゲーム内の目標は「とりあえず向かうべき方向」という意味での目標になります。

では、その目標に向かうためのモチベーションを強めるにはどうすればいいでしょうか?

これはこれまでもその構造的な方法について説明してきましたが、さらにもうひとつ、根本的 にモチベーションを高める方法を紹介します。

それは、

「先に体験させる」

ということです。

「メトロイド プライム」の、初フル装備で始まり、途中でそれが全部なくなってしまうと、フル装備までのモチベーションができる、ということは前の章で説明しましたが、「先に体験させる」とは、まさにこのようなことを言います。

この流れは、映画にもよく使われています。 冒頭で幸せな家族の幸せが暴漢によって失われ、後に失ったと思っていた妻が生きていた…とか、冒頭で栄華を誇っていた一族が敵国によって没落し、再起して敵を滅ぼす…など。

先に最高を体験させることで、それがなくなった最悪の状態を認識することができ、また、フル装備の状態を知っているので、それ以上の最高の状態を手に入れたときの喜びも高まることになります。

漫画や小説でも、似たような構造はよく使われます。

初め、主人公が成長していく物語を作り、ある程度強い存在にしたら、その主人公の手の届かないところで悪がはびこるようにします。

すると、読者は「ここで主人公が現れたら…」と考えるわけですが、主人公はすぐにはその悪に気づきません。 というより、気づかないような話の作りにします。

そうすると読者は「じれる」わけですが、悪があと少しで悪な悪行をしようとする直前で、主人公を「なんとか」間に合わせるわけです。 こうなると、読者のワクワクはもう止まりません。 その後の展開に目を離せなくなるのです。

ゲームでもこれと同じことができます。 主人公をプレイヤーに置き換えて、悪がなにをしようとしているか、逐次プレイヤーに伝えるようにするシステムが考えられます。


●「謎」を盛り込むということ

「謎」をゲームに盛り込むことは、ゲームの魅力を引き上げ、ゲームの寿命を延ばします。

昔、「隠れキャラ」というものがはやりましたが、これなどはそのたるものです。

おそらく、「隠れキャラ」の原型は、海外のRPGから始まった、出る確率の非常に低い「レアアイテム」でしょう。 これは、「ウィザードリィ」のレアアイテム「ムラマサ」などで有名になりました。

隠れキャラそのもの発端は「ゼビウス」でした。 ゼビウスは縦スクロールシューティングゲームでしたが、このゲームを伝説のゲームしたのは、明らかに隠れキャラの「ソル」でした。

このキャラクタが「ゼビウス」のステージのあちこちに散らばっていたので、その場所探しに全国 のプレイヤーは熱くなったのです。

その後、隠れキャラブームが起こり、カプコンの「ソンソン」、ナムコの「パックランド」などに引き継がれ、ファミコンでも多くのゲームが「隠れキャラ」を盛り込んでいました。

そして、空前の大ヒットとなった「スーパーマリオブラザーズ」は、「隠れキャラ」を拡張しました。

「隠れコインブロック」や「隠しワープゾーン」だけにとどまらず、「隠れ部屋」や「透明ブロック」なども発明、盛り込まれていました。

もちろん、「スーパーマリオ」はそれだけでなく、アクションゲームとしても秀逸だったので、あれだけのヒットを起こしたわけですが、隠れ要素を探す楽しみは、明らかにゲームを何度も楽しむための要素として働き、友達同士での口コミを生み出していました。

「隠れキャラ」は、今ではあまり注目されない要素ですが、やりこみ要素として盛り込んでおくと、非常に粘りのあるゲームを作ることができます。

プレイヤーは、ゲームで手に入れられるリソースをすべて手に入れると、もうそれ以上遊ぶ理由がなくなるので、「極めた」気持ちになります。 これが「極め感」です。

つまりすべてのアイテムを手に入れ、新しいグラフィック(背景、敵なども含めすべて)をすべて見ると、ゲームは消費し尽くされてしまうわけです。


これが、非常に出る確率が低いアイテムがゲーム中にあったりすると、極めるまでの時間が長くなり、ゲームが「粘り」を持つ、ということになるのです。

●「謎」のレイヤー

ゲームに盛り込む「謎」は、いくつかのレイヤーとして考えることができます。

これは「ツァイガルニックの入れ子」とは違いますが、やはり3段階くらいのレイヤーとして考えると、わかりやすいです。

・目の前の謎

これは、プレイヤーのアクションで常に探す行為のできる「謎」です。

レアアイテムを探すために特定の敵を倒しまくる。 土管の上で下を押す、ブロックを壊しまくって隠れブロックを探す、など。

こうした「謎」は、例えば集めると1UPするコインを追加でたくさん集められたりする、追加報酬型の隠れ要素と、ゲーム中でかなり強い武器を入手できたりする、レアアイテム型の2種類があります。

追加報酬型は、普通にプレイするのと比べて報酬が多くなりますから、ゲームを進めるのが早くなったり、欲しいと思っているアイテム(やフィーチャー)の入手が早くなります。

レアアイテム型は、例えば購入できる武器にはない、非常に強い武器を手に入れたりできますが、これは普通にプレイしてもクリアできるのに対しての追加ですので、より「極め感」を強くすることができます。

・中規模の謎

中規模の謎は、なにかを時間をかけて集めて、それで始めて謎が解ける、というイメージです。

例えばRPGで、ゲームの本編とは関係ないけれど、隠されている銅版のかけらを集め、それが全部揃うと、店では売っていない魔法が手に入る…といった感じです。

ゲームの本編と関係ない、というところが肝心です。 ゲームの本編に関係あるとしたら、それは謎というよりも、「こなすべきイベント」になってしまいます。

それでは、「謎」の希少性がなくなり、ゲームに「粘り」が生まれなくなってしまいます。

あくまで本編とは関係なく存在するから、「隠された謎」になるのです。

「中規模の謎」で大事なのは、その「謎」の存在をプレイヤーに時々教えてあげて、思い出させる、ということです。 そうしないと、「謎」の存在自体が忘れられてしまい、謎を解くためのモチベーションが続かなくなってしまいます。

・大規模な謎

大規模な謎とは、「驚くべき謎」です。 謎が解けたとき、プレイヤーが「これは!」と驚くような秘密がそこになければいけません。

例えば、クリアしたと思っていたゲームで、ある謎を解いたら、裏面が待っていて、真のエンディングはそこにあった…など。

複雑な謎の解法があり、そのヒントがゲーム中にちりばめられていて、それを集めると秘密の入り口が出現、そこで手に入れたアイテムは、ゲーム世界の敵キャラの強さを2倍にし、新しいボスを出現させる。 それをクリアして、始めて真の勇者の称号が与えられる…など。

また、ARG(Alternative Reality Games)という、現実と虚構の間にプレイヤーを置き、謎を解かせる、という手法もあります。

これは、映画「ブレアウィッチ・プロジェクト」から有名になった手法ですが、フィクション(作り話)をあたかも現実に起こった出来事のように見せ、本当なのか嘘なのかの議論を巻き起こすくらいにリアリティのある出来事として見せるやり方です。

ゲームの中の出来事だと思っていたら、URLが出てきてそれにアクセスすると、あたかも本当にゲームの中のキャラクタがブログに日記をつづっている…しかも、そこからリンクされているサイトには、本当に存在するようなカルト教団組織があり、その悪事を止めるべく仲間を募っているキャラクタがいる…というように、現実のメディア、現実の存在と織り交ぜてゲームを進行させるのです。

ある海外のARGでは、謎解きの途中で電話ボックスを使ったら、その電話ボックスのまわりに大勢の人だかりができた、という話もあります。

それ以外に、TシャツやCDの音の中に謎を解くヒントが盛り込まれていて、それを買わないと謎解きを進められない…というような、販促にもARGは使われています。

日本ではまだまだ流行ってはいませんが、海外には賞金1000万円のARGもあり、ハリウッド映画の有名な映画監督や、有名な小説家を使って、けっこうな盛り上がりを見せています。

ARGは、現実と虚構の境界を使うことで、ゲームにアクティヴィティ(体を使ったイベント)を持たせられるところが、一番の特徴です。

シンプルに考えるなら、ゲームの中にある謎を解くために、現実世界に用意されたメディア、例えば、CD、電話、メール、ウェブサイト、街頭の看板を見る、などの行動が必要になる、という作りになります。

●社会現象を起こす「謎」を作り出すには?

謎を盛り込み、引っ張るということは、大化するとどういうことになるのか、という例を、「新世紀エヴァンゲリオン」を上げて考えてみましょう。

「エヴァンゲリオン」は初から謎だらけです。 使徒がどこから来るのかわからない。 ネルフという組織の全貌も目的も分からない。 人類補完計画という意味不明かつ不気味で印象的な言葉が出てくる。

ストーリーが進むと、かえって謎が増えていきます。 しかし、制作の進行が間に合わなくなって、結局TV版では謎が解けないままでした。

これはある意味ARG的な流れです。 アニメだけでなく、製作のほうはどうなっているのか、という興味を引き出しています。

「謎解きの答え」として劇場版が用意され、それで深まった謎が解けると思って見に行くと、納得のいかない展開がまた待っている。

劇場版第1部ではまだ完結しなくて、半年後に公開された第2部までいって、やっと完結という触れ込みでしたが、第2部ではまた物議を醸すような展開で終わり、わだかまりを残しながら一旦幕引きとなったわけです。

そしてそれを完全に解決すべく、数年立ってから、刷新した内容の「エヴァンゲリヲン 序・破・急」が製作されています。

仮説としてですが、この「エヴァンゲリオン」の、製作現場の現実をも巻き込んだARG的展開が、すべて計画されたものだとしたら、どうでしょうか?

というよりも、これだけの社会現象を生み出した「大きな謎」としての作品を、計画して作り出せれば、非常に大きな影響力を持つことができます。

そこまで計算できるものなのか…と思うかもしれませんが、実際、海外ではARGという流れで、それを現実に作り出そうという動きがあるのも確かです。

より大きな枠組みから、大勢を巻き込む「プラン」とは、こういう形を取るものなのでしょう。


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質問 1 目の前の謎、中規模な謎、大規模な謎のアイデアを、それぞれ30個ずつ書き出す としたら、どういうものがありますか?


■8・圧倒的な恐怖を作り出す方法

ゲーム中で感情を大きく揺らす方法のひとつとして、恐怖の感情を刺激する方法を考えます。

恐怖は、人の動物的・本能的な感情です。 おそらく人の持っている感情の中で、も強い感情です。 そのために、恐怖映画、恐怖ゲームは、刺激を求める人に大きな人気を誇っています。

●人間が本能的に最も恐れるものとは?

人間は生理的に暗闇を恐れます。 そこになにが潜んでいるのかわからず、また見えないために行動にも困るからです。

この恐怖は、何百万年と獣と追いつ追われつしてきた経験が、まだ私たちのDNAに息づいているからなのでしょう。

この本能的な恐れをゲームに応用するにはどうすればいいでしょうか?

まず単純に、ゲームのグラフィックで暗闇を表現することです。 全体的に暗いトーンでゲーム画面を構成します。

アクション系のゲームシステム的では、自分のまわりしか見えなくなる、というような、視界を制御する要素をゲームに入れることも考えられます。

次に「音」です。
暗闇でする音とは、どういうものでしょうか? 暗闇で鳴ったら戦慄を覚える音とは、どういうものでしょうか?

どういうゲームかによってそれは変わってきますが、重要なのは、生理的に怖くなる音を入れこむことです。

寂しさを増幅させるような、未開の地で鳴く虫の声や、ふきすさぶ風の音。 人の叫び声、得体の知れない動物の鳴き声、等々。

多くの人が今まで体験したことのある、「ナマの」寂しさと暗闇の空間をゲーム内に表現すれば、そのゲームは恐ろしい雰囲気を持ったものになります。

●死の恐怖を演出するための重要な「状態」

これは、怖いゲームを作るための要素として、一番大事な要素です。

プレイヤーをドキドキさせるためには、常に、ヒットポイントが少ない状態にすること。

なぜかというと、瀕死の状態であるほど、人はその状態に危機を感じるからです。

なので、生かさず、殺さず、というバランスを保つ必要があります。 肝心なのは、その瀕死の状態をなるべく長く保つことです。

すぐに回復できて、常に体力満タンでは緊張が続かないし、プレイヤーがすぐに倒されてもこれまた緊張が続きません。

なので、回復は時折しかできないようにする必要があります。

敵は、例えば、突然出てきてヒットポイントの1/5~1/3のダメージを与える敵を、まばらに配置します。

このような大ダメージを与える敵を、まばらに配置することで、瀕死の状態は長く続きます。 また、いつ敵が出てくるのか、という恐怖も煽ることができます。 最悪の未来が予測できるので、怖いのです。 人間は、悪いことがおこるかもしれない、という状態にかなり弱いのです。

敵と回復アイテムの配置は、敵の攻撃でPC(プレイヤーキャラ)の体力が1/3~1/5以下になったあたりで、回復によって半分~2/3ほどの回復をすると、ちょうどよいバランスです。

上記で紹介したバランスは、これまでに強い恐怖を実現した実績のあるバランスですが、このバランス以外にも、PCを瀕死に保てるバランスはあります。

何度も言いますが、大事なのは「PCを瀕死の状態に保つ」ことです。 それも、なるべく長時間。

それが、緊張感のある恐怖を演出します。


●恐怖と臨場感の関係

「バイオハザード」などのホラーゲームは、なぜ3D技術を駆使したゲームと親和性があるのでしょうか? なぜ、ホラーゲームがもてはやされるのでしょうか?

それは、3Dの表現力が、現実の生々しさ、臨場感を表現できるからです。

つまり、リアリティがあるからです。

ではなぜ、リアリティがあるとよいのでしょうか? それは、人間は過去に体験したことを思い出すことで、強い感情を呼び起こされるからで す。

恐怖心も同じです。 過去に味わった恐怖体験を再現することで、強い感情が呼び起こされます。

現実で体験していないことには、強い恐怖心を抱きません。 ですからできるだけリアルなほうが、過去に味わった恐怖を思い出しやすいのです。 なので、できるだけリアルなグラフィックスを用意するように動いたほうがいいでしょう。

過去に味わった恐怖体験には、どういうものがあるでしょうか? 人に共通する体験には、以下のようなものがあります。

・暗闇
・閉所
・怪我、病気
・死体
・高所
・大きな音
・殺人事件の報道
・暴力
・幽霊
・etc.etc…

視覚的にリアルであれば、それがかつて見たことのある風景と重なり、感情が呼び起こされます。


●人間が生理的に嫌がるものとは?

人は過去の経験で体験したことを想起することによって、そのときの感情がよみがえるわけですが、赤ちゃんのころから本能的に恐怖を感じるのは、

・高所からの落下
・大きな音

この2つです。 この2つが人間にもともと備わっている恐怖の対象です。

この2つの例以外にも、恐怖を感じさせる対象はあります。 たとえば傷ついたときの「痛み」も恐怖の対象のように思われますが、「痛み」を感じるときはすでに傷ついているときであって、恐怖はその前に感じるものです。

ですので、恐怖はその「痛み」を与えるものに対してなので、ナイフや銃などの痛みを与えるものへの恐怖は、後天的なものになります。

恐怖ゲームを作る場合、先天的な恐怖を基本に、後天的な恐怖を盛り込むと、しっかりとした恐怖を作り出すことができます。

後天的な恐怖はさまざまなものがありますが、基本は「痛みを与えるもの」です。

ゲームに後天的な恐怖を入れ込む場合は、「VAK」を考えると、恐怖が立体的になります。

Vとは視覚的なもの。 Aとは聴覚的なもの。 Kとは触覚的なものです。

視覚は、「痛み」を想像させるものを表現します。 聴覚は、例えば蚊の集団の飛んでいる音、叫び声、ぐちゃっというような音など。 後天的に覚えた「恐怖を感じる」「嫌な」音を使います。

触覚は、ゲームには触覚を刺激するデバイスとして振動コントローラなどがありますが、これだけでなく、「イメージとして」触覚をプレイヤーに感じさせることを考えます。

例えば、文字情報で「ぬめぬめした」「ズキズキしている」「腐ったものを触った」「ねばねばしたものを吹き付けられた」などと表現すると、プレイヤーはそれらの触覚を想像します。

また、PC(プレイヤーキャラ)の状態でも、触覚を表現することができます。 これまでにない表現ですが、キャラクタのステータスで、毒を受けて「吐き気がしている」「頭痛が続いている」「体が重い」などと表現すれば、プレイヤーはその状態を想像し、実際にその感覚を思い出すことになります。

そしてその状態からなんとか脱出しようとすることでしょう。 表現次第で、プレイヤーに「ある感覚」を体験してもらうことができます。

そしてその表現だけでも、プレイヤーを行動させることは可能なのです。

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質問 1 あなたのこれまでの経験の中で、も怖かった体験を5つ挙げるとしたらなんですか? その状況を詳細に書き出してください。


■9・ゲームを何度も何度も遊ばせる方法

単純に言うと、ゲームは何度も何度も遊んでもらうことで、プレイヤーの記憶に残るゲームになります。

時間を費やせば、それだけ記憶に定着し、思い入れも増すからです。 しかし、その時間を「費やしてもらう」ためには、「ハマる」ものを作る必要があります。

やりこみなどのプレイヤーをゲームに「ハマらせる」テクニックについてはここまで多く語ってきたので、ここでは、「プレイヤーの感情を大限に高めつつ、何度も遊んでもらう」ゲームの作り方の基本を説明します。

●ミスリードテクニック

「ミスリードテクニック」とは、プレイヤーを間違った方向に導くことです。 間違えてもらうことで、正しい答えを見つけ出し、攻略したときの喜びを増幅させます。 これは、例によって、「アンカリング」を使います。

「デスクトップ・タワー・ディフェンス」という、大ヒットしたFLASHゲームを例に取ります。 http://www.kongregate.com/games/preecep/desktop-tower-defense-1-5

ここから説明することは、ある意味、「ゲームの種明かし」になってしまいますので、そこをご了承の上、読んでください。

このゲームは、タワーを配置して迷路を作り、タワーから出る弾を当ててモンスターを倒し、モンスターを出現位置の反対側に行かせない、というゲームです。

このゲームでは、お金のある限りタワーを大量に配置できるのですが、これが、まず1つの「アンカリング」になっています。

つまり、大量に置ける、ということ自体が、「大量に置けば、モンスターの対処ができる」という錯覚につながっているのです。 ここで、まず1つ、ミスリードがあったわけです。

すでに理解されていると思いますが、タワーを大量に置いただけでは、モンスターをすべて倒すことはできず、途中でゲームオーバーになります。


まずここで、1つの壁にぶつかります。 プレイヤーは中途半端なところで終わってしまうので、「ではどうすればクリアできるのだろうか?」と考えることになります。

このゲームのタワーは、配置する以外に、強さのレベルを上げることができます。 タワーのレベルを上げれば、その分砲台から出る弾の威力は強くなります。

しかし、タワーのレベルを上げている間は、そのタワーは弾を発射できません。 しかも、レベルが高くなればなるほど、次のレベルになるための時間は、非常に長くなります。

そのため、プレイヤーは、タワーをある程度のレベル以上上げることを止めてしまいがちになるのです。

ですが、数は少なくても、高いレベルのタワーを置けば、先に進めるバランスになっています。 量より質を選ぶと先に進むことができるわけです。

これでやっとクリアできる…と思っていると、実はまだミスリードがあります。

●二重三重にミスリードを張る

タワーのレベルを上げる戦略をとった。 しかし、先の面に行くと、どうしてもモンスターが硬くて、通過されてしまいます。 そしてゲームオーバーになります。 2つ目の壁です。

プレイヤーは、打つ手を失ったかのように思います。 絶妙なバランスで、レベルを上げるタワーの個数を調整しないと、クリアできないのだろうか? そう思い始めます。 (実際はそういうゲームなのですが、これは非常に難度が高い)

実はここで、「ジャグリング」というテクニックが使えるのです。 これは、タワーの道の一部をキャンセルして、迷路の作りを変え、モンスターに元来た道を戻らせる、というテクニックです。

これを使うと、行ったりきたりさせられる分、モンスターが大量に弾に当たるので、倒すことができるというわけです。 これを知れば、2つ目の難関をクリアすることができます。

「タワーのレベルを上げれば、クリアすることができる」というミスリードが、ここにまたあったわけです。

つまり、このゲームでは、ミスリードが2段構えになっていた、というわけです。 (正確には、作者はジャグリングは意図していなかったようですが…)

2段構えのミスリード

「デスクトップ・タワー・ディフェンス」では、このような「壁」と「それを解く方法」が2段構えになっていたことから、簡単にクリアできず、しかしできることの幅がそんなにないゲームであったため、 なんとか解法を見つけ、クリアしようというプレイヤーが多く現れたと予想できます。

ここで注目したいのは、ミスリードによって、「多段階の攻略法探し」が生まれ、ゲームの奥深さが増している、ということです。

攻略とは、壁があって、そこを乗り越えるために考える戦略ですが、普通のゲーム制作では、 単に難易度を上げて壁を作ることが多いのです。 しかし「デスクトップ・タワー・ディフェンス」は、その壁をミスリードによって作り出しているわけです。 ここが、普通のゲームとの大きな違いでした。

ミスリードとは本来シナリオの用語で、例えば観客にいかにも「この人が犯人だ」と思わせる登場人物を見せておき、クライマックスになって、実はその人は犯人ではなく、別の人が犯人 だったという、「どんでん返し」を作るための要素です。

つまり、「おとり」と「真犯人」がいるわけですが、ゲームにおけるミスリードは、「おとり」、つまり間違った攻略法の思い込みを「アンカリング」で作り、間違わせる部分にあたります。

そして「真犯人」、つまり真の攻略法を発見したときに、プレイヤーは大きな満足を得る、と いうわけです。
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質問 1 今ある既存のジャンル(アクションゲーム、RPG、FPS、シューティングゲーム、RTS 等々)でミスリードを作るとしたら、どうミスリードをさせることが考えられますか? 各ジャンルごとに考えてみてください。


■10・ゲームの面白さを倍増させる方法

●ゲームの本来の役割

ゲームはもともと、人と人とを媒介するツールでした。 いえ、今も昔も、ゲームが人と人を媒介するツールであることは変わりがありません。

ゲームは近代でいうと、トランプや花札、オセロ、将棋、チェス、囲碁、マージャンなど、複数人数の遊びから一般化しましたが、その後、コンピュータが相手をしてくれる、ひとり遊びに発展します。

しかし、ひとり遊びであっても、他人との交流が楽しかった思い出はなかったでしょうか? 学校や職場で、

「俺はあそこまで進んだけれど、お前はどう?」 「あそこの扉って、アイテムで開けるの?それとも、何かイベントがあるの?」 「あそこの城にいるボスがとても強くなかった? 強いったらなかったよねえ」

などと、友人や知人と話題を共有できたことを、ゲームの思い出として語る人は非常に多いのです。

ゲームの楽しさ、興奮をほかの人と共有できたときに、ゲームはゲーム本来の楽しさを発揮できます。

コンピュータゲームはひとり遊びから、ネットゲーム、ソーシャルゲームと、再度、人と人との直接の媒介物になる時代が戻ってきました。

「ゲームの外」にある人間関係を盛り上げること。

今後のゲームは、いかにこれができるか、それが高い評価を得るための指標になってくるでしょう。

●他人同士に「よい交流」をさせるには?

「ドラゴンクエスト9」では、すれ違い通信という機能がありますね。 すれ違って、イベントのもとである「地図」を交換する機能です。 これが、ゲームをプレイしている人の間で非常に話題になりました。

この機能は、ゲームを持ち歩いているときに、イベントを勝手に交換している、という機能ですが、ではなぜ、「勝手に」なのでしょうか? なぜ、意図して交換するのが流行らないのでしょうか? それは、他人同士だと緊張するからです。

人には、多様な人がいます。 いろいろな人達との交流は刺激になります。 ですが、見知らぬ人同士で交流しようとすると、相手の素性も性格も知れないので、初めはちょっと緊張します。

そこを交流させるには、少しコツがいります。

ひとつの方法としては、コミュニケーションの方法を、非常に簡単にすることです。

具体的に言うと、ボタンを1回押すだけで、コミュニケーションできるようにするのです。 これが、もシンプルなコミュニケーション方法になります。

SNSの「GREE」では、「クリノッペ」というモバイルペットアプリがあります。 そこには、「つっつく」というアクションがあります。

つっつくと、歌ったり踊ったり、着替えたりいろいろなことができるようになります。 ですが、自分一人でつっついていても、あまり育たない仕様になっています。

他人につっついてもらうことで、ぐんぐん育っていくのです。 そして、つっついた人の名前が残ります。 このクリックには、「好意」の意味が込められているのは、おわかりのとおりです。 1クリックで、好意を伝えられるわけです。

SNS「mixi」の「あしあと機能」は、訪問のあしあとが残るという自動的な機能ですが、クリノッペのつっつくという行為は、能動的なアクションのため、プレイヤーが意図してこちらに好意を向けている、ということが伝わりわけです。

この小さなコミュニケーションが、人と人との親密さを増していく大きな第一歩になり、「GREE」におけるコミュニケーションの増大に貢献している、というわけです。

初のコミュニケーションは、も簡単な操作でできるようにすることが大事です。

そこから、徐々にコミュニケーションの方法を多様にしていきましょう。

●コミュニケーションの段階を作る

では、単純なコミュニケーションから、徐々に深い、親密なコミュニケーションを作るには、どうしたらいいでしょうか?

それには、プレイヤーのコミュニケーションのゴールから、逆算して考えます。

では、コミュニケーションのゴールとはなんでしょうか?

まずは、オンラインからオフラインにつなげるということをゴールに考え、「オフ会を開いて会う」ということをゴールとして考えてみましょう。

ゲームは媒介物ですから、媒介となるサービス、機能を考えます。

先ほどの「GREE」の例で言えば、「クリノッペ」が媒介物です。

ゴールがオフ会であれば、その前はなんでしょうか? 掲示板や、オフ会を促すコミュニティのような機能が考えられますね。 ゲームの運営側が、オフ会やイベントを促すという企画も考えられます。

その前はなんでしょうか? コミュニティに集まるきっかけが必要ですね。

集まるきっかけはなんでしょうか? ゲームの情報交換が考えられますね。 なにか、攻略法のようなものを求めて、プレイヤーは情報収集しにくるかもしれません。

この場合だと、ゲームに攻略の対象が必要ですね。 これ以外にも、ダイレクトに「掲示板で謎を解くヒントをもらえ」などと、コミュニティに積極的に参加したくなるアイデアがいろいろあると思います。

掲示板に来たときに、「クリノッペ」の「つっつき」ような、なにか好意を与えるコミュニケーション手段があれば、「この間はつっついてくれてありがとう」というような、お礼から始まるコミュニケーションが生まれることが考えられます。

「つっつき」から、もっと段階の上がったプレイヤー同士のコミュニケーションはなんでしょうか?

アイテム等の交換が考えられますね。
例えば、「どうぶつの森」では、種の交換、「ポケモン」ではポケモンの交換がありました。

まとめましょう。

・オフ会(ゴール) ↑
・掲示板 ↑
・ゲームの攻略への欲求 ↑
・アイテム交換などで交流を深める ↑
・コミュニケーションのもと(クリノッペのつっつき的なシンプルなもの)

このように、ゴールから逆算していくと、プレイヤーに深いコミュニケーションをしてもらうために必要な要素が見えてきます。

ほかにも、交流の手段として、

・あしあとシステム
・情報の交換
・会員証、グッズの配布での共有意識
・ゲーム内でチームを組むシステム
・システム側から提供されるアイテムを他人にプレゼントできるシステム

など、いろいろなものが考えられます。

他のプレイヤーへコミュニケーションを促すことは、ゲームの楽しさを本来の人間の欲求へ近づけます。

終的に、人がも興味を持つのは人そのものだからです。

ゲームはもともと人と人を繋げるところから始まりました。

ゲームデザインも、終的には人と人の関係を、いかにエキサイティングなものにするか、というところに収束していきます。


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質問 1 本文中の例のほかに、交流を促す手段として使えるものには、どのようなものがあり ますか?


■終わりに

ゲームデザインはこれまで、「基準」というものがわからないまま、語られてきました。 というより、いまだに語られている、といったほうがいいでしょう。

「基準」とは、ゲームとはなにを指標にして、面白いと判断したらいいのか? という判断基準です。

そして、なにを足がかりにして、ゲームデザインの是非を決定したらいいのか? という決定基準でもあります。

これがわからないために、数学的にゲームデザインを分析してみたり、アイデアレベルの要素をとりあえずグループ化してみたり、落としどころのない抽象論を掲げてみたり、単にゲームの要素を取り出してみただけだったりという、試行錯誤が延々と繰り返されています。

「メガヒットゲームのためのゲームデザインパターン2」の基準は明らかです。

それは「感情」です。

どれだけプレイヤーの感情を揺さぶることができるのか? それが、判断基準であり、決定基準です。 これほど明快なものはありませんし、本質を突いているものはないと思います。

いかに感情を揺さぶられたか?

これはゲームだけでなく、あらゆる消費活動の判断基準になっています。

小説でも、漫画でも、映画でも、ゲームでも、買い物でも、ビジネスでも、ギャンブルでも、コンビニでペットボトルを選ぶときでも、「感情」が判断基準になっています。

今日、あなたが選んだペットボトルは、少しでも感情が揺さぶられたから、選ばれたわけです。 感情の多寡で、ほとんどのものは選ばれています。

この本質は、具体的には「マーケティングの神様」と呼ばれる人たちから教えてもらったものですが、私がそこで気づいたのは、マーケティングであれ、ゲームデザインであれ、シナリオデザインであれ、結局は「人」にすべては収束する、ということです。

なぜなら、どんなものであれ、終的には「人」の判断で、よいのか、悪いのか、好きなのか

嫌いなのか、欲しいのか、欲しくないのか、面白いのか、面白くないのかがが、決められるからです。 人の反応が、終決定を下すわけです。

だから、「人を動かす」ための研究は、終的に「人間の研究」に行き着きます。

人はどういうときにどういう反応をするのか? どのような提示をされれば、判断を変えるのだろうか? どのようなときに、感動するのだろうか? どのようなときに、驚くのだろうか? どのようなときに、人に好意を抱くのだろうか?

こういったことをマスターすることができれば、ゲームであれ、ビジネスであれ、映画であれ、面白いものを作ることができるようになるはずです。

私は主に、

・ゲームのケーススタディ
・マーケティング
・NLP(神経言語プログラミング)

の3つで、ゲームデザインを研究、もとい、人を動かすための研究をしていますが、あとの2つは、 真の人間研究の結果が反映されており、非常に奥が深く、興味深いジャンルです。

ぜひ、あなたもこれらのジャンルの習得に挑戦してみてください。

きっと、あなたの人生に大きな衝撃を与え、人生観が変わるほどの叡智を得ることができると思います。

私はこれらのジャンルに大いに触発され、このレポートをここまで作りました。

それでは、また次のレポートでお会いしましょう。

ゲームのしくみ
新田 法継

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