エモーショナル・ゲームデザイン 実践マニュアル 第二章

■目次

■この章で学ぶこと                    
■2-1 コンセプトの立て方                
●埋もれるゲームを考えてはいけない            
●埋もれるゲームとヒットするゲームの違い          
■2-2 数多くの作品から飛びぬける方法          
●プロ意識とはなにか?                  
●なぜ、作った作品が埋もれてしまうのか          
●主流との差別化を図る                  
●トレンドには波がある                   
●流行と普遍性                      
●普遍性とは?                      
●ヒットを作るための普遍的な方法             
■2-3 「ウリ」の作り方                
●USPとは                         
●ウリとなるポジションの考え方               
●フォーカスの考え方と、口コミのパターン         
●フォーカスを定める                    
●だらけ、づくし、三昧にせよ               
●自分のゲームを、販売する前に売ってみる          
●ファンがどのくらい存在すれば、ゲーム会社としてやっていけるのか?                       
●「ウリ」を作る目的                    
■2-4 新しいものを作れ。しかし新しいというな      
●新しいものとはなにか?                 
●未知のものに親しみを持たせて興味を引く         
■2-5 ブランドを作るために               
●ブランドとは?                     
●ユーザーの期待を裏切らないこと

■この章で学ぶこと

この章では、「コンセプト」について考えていく。

ゲーム制作において「コンセプト」というのは、そのゲームの中心的な概念となるアイデアのこと である。 ゲームの「背骨」になる部分だ。 そして、ゲームのすべての部分の方向性を決定づけるアイデアである。 例えば、「リアリティのあるゲーム」がコンセプトの一部にあるのなら、グラフィック、音楽、SE、 そしてゲームデザインは、すべてそのコンセプトに従い、リアリティを追求する方向に進む。

これを最初に決めることで、ゲームに統一感を出すことができる。

コンセプトを決めておかないと、何を伝えたいのか分からない、アイディアてんこ盛り、でもちぐ はぐなゲームになりがちだ。

大手の会社であれば、物量を入れた力技が使える。 資金も人材もふんだんに使えるからだ。 しかし中小、もしくは個人のデベロッパーは、資金や人員の面で難があり、力技は不可能で ある場合がほとんどだ。

だから実現するアイデアをひとつに絞り、それに集中したゲームを作る戦略が功を奏する。 そのほうが注目されやすく、小回りの効いたゲームを作れるからだ。

大手では実験的なゲームをなかなか作りづらい。 一点豪華なゲームを作ることはブランドイメージに慎重にならなければいけないし、四半期に 一度の稟議を通すときに、個性的なゲームは通りづらいからだ。 大手の企業はなんだかんだで保守的になりがちなのである。

特徴があり、個性的で、話題になるゲーム。 そのためのコンセプトの決め方をこれから説明していく。

まずは次ページからの設問を埋めてみて欲しい。 その問いに対する自分の回答を探しながら、読み進めていって欲しい。

●質問1 あなたが今主流だと思うゲームは、何だろうか?

●質問2 現在「ゲームのお約束」となっているものは、何だと思うだろうか? ジャンル別に 埋めてみよう。

ゲームジャンル1

お約束

ゲームジャンル2

お約束

ゲームジャンル3

お約束

●質問3 あなた自身が「この分野なら、徹底的に極めつくせるぞ!」という分野は、どのよう なものだろうか?

●質問4 熱狂的なファンのいる分野はなんだろうか?

●質問5 質問 3 で答えた分野にフォーカスしたゲームを作るとする。どのようなゲームになる だろうか?

■ 2 - 1 コ ン セ プ ト の 立 て 方

●埋もれるゲームを考えてはいけない

コンセプトの説明の前に、まずはゲームを作る際の心構えについて再確認をしておこう。

ゲームはユーザーの感情を動かすことを目的としている。 ユーザーの感情を動かすのならば、その感情に制作側も敏感になる必要がある。 そしてその感情を実現したいという熱い気持ちがなければ、長期に渡るゲーム制作には耐え られない。

どういう気持ちで企画書を書くか? 精神論のようだが、これでどんなゲームを作ることにな るのかが決まるのだから、重要なことだ。 このマニュアルを手にとってゲーム制作をするあなたには、プロ意識を持って欲しいと思ってい る。 では「プロ意識を持つ」とはどういうことか?

それは「どんな条件下であってもヒットするゲームを制作する!」と決断することである。

つまらないゲームを作ることに満足していること、他の模倣を繰り返すこと。 二次創作に甘んじること。 アマチュアに甘んじること。 そこそこのゲームを作って満足すること。 それはプロではない。

ゲームは、人々に感動や興奮をあたえ、人生の彩りとしてプレイされるものだ。 そして子供や少年、青年に「世の中にはこんな興奮に満ちたものがあるのだ」という夢を与 えるものだ。

彼らの人生に衝撃をあたえ、できうるならば、彼らの現実世界に良い影響をあたえるものを 作る。 それがクリエイターにとっての社会貢献であり、あなたの存在価値になる。

だからユーザーに対し、衝撃をあたえる作品を作ることを目指すことである。

なんとなくの模倣を繰り返してはいけない。 それは、あなたの存在に何の意味も与えないからだ。

「自分はなんのためにこのゲームを作るのか?」 それを考え抜いて欲しい。

●埋もれるゲームとヒットするゲームの違い

埋もれてしまうゲームとは、一言でいうと「オリジナリティがないゲーム」のことである。 周りの作品に影響を受けていることが、一発でわかってしまうゲーム。 売れ線を狙おうとして、ヒットしたゲームを「なぞって」しまったゲーム。 そのようなゲームが、埋もれていってしまうのだ。

ではオリジナリティとはなんなのか? それは、独自性であり、唯一性であり、個性である。

多くのクリエイターは、 「自分なりのものを作ればオリジナリティが出るはずだ。なぜなら自分の考えは自分しか持って いないからだ」 と考えがちである。

しかしそれは大きな間違いだ。 ほとんどの場合、人は他人の作ったものから大きな影響を受けており、さらに「常識」に照ら し合わせて、他人から「これは変だよ」と言われないものを作ろうとしてしまう。 すでにその時点で、オリジナリティは失われてしまっている。

オリジナリティのあるものを作るなら、逆に、他人から「これは変だよ」「これはおかしいよ」「こ れはやっていいの?」と言われるものを作り出さなければならない。

なぜなら世に出したときに、お客にそう言われなければ、なんの話題も波紋も生み出さない からだ。

そして、こうしたものは「意図して」作られなければならない。 よほど尖ったアーティストでもない限り、素のままで表現したものが他との差別化を図れてい ることはまずないと思っていい。

ヒットゲームとは、群を抜いた、大きな感情をプレイヤーに与えるものである。 それは、他との大きな差別化から始まる。 どこか1つ、大きな「感情的な」違いが、計画されているのである。

次から、その作り方を説明していく。

●質問1 なぜ、多くの作品は埋もれてしまうのか? 簡潔に述べよ。

●質問2 あなたの企画を、他の企画と差別化を図るにはどうしたらよいか?

●質問3 ヒット企画を作るのに大事な要素が2つあるとしたら、それはなんだろうか?

■ 2 - 2 数 多 く の 作 品 か ら 飛 び ぬ け る 方 法

●プロ意識とはなにか?

どのように自分のゲームをこの世で唯一のものにしていくか。

世の中には、有象無象の「作っては消費され、消えていく」ゲームが多くある。 それらのゲームは名も知られることなく、見向きもされず、うずもれていってしまう。 あなたの作るゲームは、決してそのようになってはいけない。

人生の貴重な時間を費やすのだから、あなたの情熱、知識や技能、あなたの全存在を入 れ込んだゲームを目指す、それほどの気概が欲しい。 そして作るからには、多くの人の心を揺さぶってやまないものを作ろう。

世の中のゲームでも、漫画でも、アニメでも、映画でも、うまくいったものを真似して、それに 追いつかなくて失敗しているものが多くある。

うまくいったものの真似をしても良いのだが、真似をした上で、独自のものを仕上げていかな ければならない。

そのために、このマニュアルを参考にして欲しいと思う。 だが、このマニュアルは、あなたの作るゲームの題材をあたえるものではない。 テーマを教えるものでもない。

私がこのマニュアルで伝えるのは、インパクトを与えるゲームに至る考え方だ。

●なぜ、作った作品が埋もれてしまうのか

なぜ、作った作品が埋もれてしまうのか。 それは、周りにあるものと似すぎているからだ。

多くの人はヒットしたものに追従して、似たようなものを作ってしまう。 その手法が通用するのは2 番手か、せいぜい3 番手まで。 その先は、「またか」と思われるのがオチだ。
例えば1986 年に、「ドラゴンクエスト」が出て大きくヒットした。 コンシューマ機初の、しかもよくできた RPG だったからだ。

翌年、スクウェアが「ファイナルファンタジー」を出した。

「ファイナルファンタジー」は、グラフィックやプログラム的にもよくできていたが、成功の要因は、 「ドラゴンクエスト」と方向性を変えたことにある。

「ドラゴンクエスト」は、あくまでもゲームであった。 しかし「ファイナルファンタジー」は「映画のようなゲーム」を狙うことで、差別化を図ったのだ。

両方の大きな違いとして、「主人公が自ら語るか否か」という点がある。

主人公が語ると、プレイヤーは「主人公が自分ではなく、第三者である」ということを無意識 に悟る。 「ドラゴンクエスト」は喋らせないことでプレイヤーキャラは自分である、ということを印象づけ た。 「ファイナルファンタジー」は、プレイヤーにしゃべらせることで、映画の臨場感に近づけようとし た。

もう一つ、「ファイナルファンタジー」は「キャラ劇」に相当な力を入れた。 さらに、シリーズの途中から、ムービーに相当な力を入れた。 これらも、映画に近づけるための努力である。

「ファイナルファンタジー」は、見せ場に美麗なムービーを入れることで、映画のような雰囲気 を出すようにした。

このように、「ファイナルファンタジー」は 2 番手でありながら、「ドラゴンクエスト」と差別化を図 り、ドラクエとは全く違う RPG として、存在感を高めた。

全く違う存在であるなら、「どちらか」を選ぶことはなくなる。 ユーザーとしては「どちらも」買うことになるのである。

その後、上記以外のRPGが多く出たが、そのほとんどは差別化を意識することなく作られ、 必然的に埋もれていってしまった。

RPGの市場が大きかったため、「グランディア」、「ファンタシースター」など各社の看板タイト ルのようなゲームソフトも出た。 しかし、中堅RPGのポジションを確保するにとどまり、2 タイトルほどの勢いはない。 差別化をして、独自のポジションを確保するまでに至らなかったためだ。

●主流との差別化を図る

主流との差別化を図っていくためには、主流と反対か、もしくは別のベクトルでコンセプトを 掲げなければならない。

例えば赤い看板がたくさんある場所で目立つためには、赤以外の色を出すことである。 黒か、青か、緑か。

そしてひとつ考慮に入れて欲しいのは、主流の流れには必ず反動があるということである。

流行には必ず反動がある。 ストーリー重視のゲームが流行っている。 すると反動があって、アクション重視のゲームに対する欲求が高まるのだ

アメリカに、「クラブペンギン」というゲームサイトがある。 http://www.clubpenguin.com/

ゲームの内容そのものは「どうぶつの森」のような感じだ。 しかし内容以前に、大きな特徴がある。

ゲームが出た当時、リアル志向の暴力描写満載のゲームがたくさん出ていて、その影響の 是非が問われている風潮だった。 しかしそんな中で「クラブペンギン」は、暴力性をまったく入れない、メルヘンチックな世界観を 持ったゲームを、子どもを持つ親に提示した。

子供に有害なメッセージを入力できないように、有害な表現が徹底的に排除するシステム になっている。

親にしてみれば、腕が飛んだり血が吹き出したりする残酷な描写が子供に与える影響は、 その影響の是非は別にしても、なるべく触れさせたくない。 この「クラブペンギン」は、そのニーズに応えた形となっているのだ。

このサイトは、ゲーム業界ではそれほど目立っていなかったのだが、そのコンセプトが認められ、 ディズニーに 400 億円で買収された。

「逆を行く」事を考えること。 反動を捉えること。

ゲーム以外でも同じで、逆を行くことは対抗するコンセプトとして立ち位置を確保しやすい。

絵本の例で言うと、松谷みよ子氏の「モモちゃんとアカネちゃんの本」という 6 冊のシリーズが ある。 著者の子育て体験を元に描かれたシリーズで、完結してから 10 年以上たっているもののい まだに固定ファンも多いシリーズだ。 では、このシリーズは、なにが特徴的で、これほどファンが付いているのか?

児童文学は、基本的に平和な内容の題材しか扱わない。 ところがこのシリーズでは、離婚や父の死など、かなりハードな内容が書かれているのだ。

著者が狙ったわけではないのかもしれないが、主流である平和な内容の逆を行き、そこがイ ンパクトとなって、新たなポジションを確立した事例となっている。

現在常識と考えられていることを疑うことである。 今までのゲームでありがちなこと、お約束を再確認してみよう。 ありがちな要素の逆を考えるのだ。

今のゲームで常識と化していることはなんだろうか? 今のゲームで「主流」とされていることはなんだろうか?

RTS でのお約束は何だろう? FPS のお約束はなんだろうか? シューティングゲームでありがちなことは何だろうか? アクションゲームの常識とはなんだろうか? パズルゲームで主流になっているゲーム性はなんだろうか?

主流と逆を行くことは勇気のいることで、まわりからの反対も多いだろうが、しかしそこをあえ て進むことで、新しいポジションを切り開くことができるのだ。

●トレンドには波がある

何かが流行すると、必ず反動が起こる。 これはなぜだろうか?

それは、「自分は他人とは違う存在である」ということを確認したいからだ。 要するに、人は、あまりに流行りすぎると、そこに埋もれたくなくて、離れたくなるのである。 これは、自己承認欲求のひとつの現れである。

人は、自分は特別な存在であると思いたい欲求がある。 流行から離れることで、自分が特別な存在であることを確認したくなる。

わかりやすいのはファッションだ。 ファッションの流行は、すぐに廃れてしまう。 なぜかというと、流行すると、みなが同じ服を着てしまうので、自分の独自性を表現するため、 別の服を着たくなるのだ。 流行にはこのような「波」があり、いったりきたりしている。

「ユニクロ」はそういうことを見越して、4 半期ごとに違う流行を提案している。 「しまむら」も、一店舗には一種類につき一着しか卸さないようにして、稀少価値感を演出 して、購買意欲をかきたてている。

ただ同時に、人間は最先端の流行を追いかけたいという欲求も持っている。 帰属意識、「仲間に入りたい」という欲求である。

人とかぶりたくなる分野―流行を追いたくなる分野とは、帰属意識が満たされる分野だ。 つまり最新の専門的と承認される分野」や「共通であった方が楽しそうな分野」である。 専門分野では、人は優越感を感じることができる。 祭りや流行など、「楽しい流れ」には、乗ってしまったほうが気持ちいい。

逆に人とかぶりたくない分野―流行云々でなく独自性を保ちたいと考える分野とは、帰属 意識が満たされない分野である。

楽しくない、つまらないことには帰属していたくないし、「みなが知っていて当然」なことはそれ を知っていても専門性、独自性が保てないので、「自分は特別なグループに属している」とい う帰属意識が満たされないのだ。

ゲームの話に戻ろう。

こうした「反動」をうまくつかむことが、ゲームをヒットに持ち込むきっかけとなるのだが、そんなこ とはお構いなく、日本のゲームはあまりにも偏り、画一的になってしまっている。 少数の例外こそあれ、海外にまったく通用しないゲームがほとんどだ。

PS2全盛期までは、日本のゲームといえば海外でも高評価だったが、最近ではランキング に1つか2つ、日本のゲームがあればいいほうである。

海外で通用しなければ、北米や欧州に販売することでの「1粒で2度3度おいしい」という 収益が得られない。 結果、外貨が稼げず、次に作るゲームの開発費を捻出できないという、ジリ貧の状態が続いているのが、今の日本のゲーム産業だ。

今までは内需とクオリティの高い日本のゲームということでやっていけていたが、今後は世界に 通じるゲームを作らなければ、世界と対抗していくことは難しいだろう。

だからこそ、日本の国民意識が持つ「反動」だけでなく、世界の国際的意識が持つ「反 動」をつかまなければならない。

流行の影には、その流行を良く思わないグループがある。 その流行の反動的活動をしている人に注目することである。

●流行と普遍性

流行を追い、その反動をつかむだけでは、短期的な影響力を及ぼすことはできるかもしれな いが、それで終わってしまうことが多い。

では流行を長く続くものにするためにはどうしたらよいか?

それには、普遍性を流行で包むことである。 流行を盛り込みつつも、普遍性を表現することだ。 これは、具体的にはどういうことだろうか?

マーケティングでは、新商品や新サービスの開発に際してマーケットインとプロダクトアウトとい う 2 つのアプローチがある。

マーケットインとは、市場調査をして需要があるものを見出して商品を作っていくという方法 だ。お客様のニーズ主導のアプローチである。

プロダクトアウトとは、新しい商品コンセプトを考えてそれを市場に投入して試してみる、とい う考え方だ。商品主導、企画主導のアプローチだ。

ではこの2つのどちらが、新しいゲームを作るときに有用なのだろうか? 答えは、両方である。

マーケットインとは、流行、時代の趨勢を追うことだ。 しかしそれだけでは足りない。 普遍性を持っていないと、単なるイロモノになってしまって広がらないからだ。 つまり、プロダクトアウトが持つ、普遍性を押さえる考え方が必要なのである。

ゲーム制作でも、全く同じことが言える。 ヒットするゲームを作る場合も、アプローチは流行と普遍性を押さること。 そうすることで、ヒットの確率を高めることができる。

普遍性とは、どんな時代でも受け入れられるものである。 愛、親子の絆、誠実、生と死など。 これらは普遍性のある概念だ。どんな時代になっても、廃れることはない。 その普遍性を時代の流れに合わせて表現することが、ヒットするための必要条件だ。

●普遍性とは?

では、普遍性とはなんだろうか? 普遍性を捉えるための分かりやすい概念として、マズローの5 段階欲求がある。

マズローの 5 段階欲求は、低次の欲求であるほど緊急性が高い。 だが現代では低次の欲求は、普段の生活でかなり満たされている。 日本はモノで満たされ、治安もいいので命が危険にさらされることもない。 性愛的な欲求も、ゲームで擬似的に満たすことができるほどである。

これは動物的本能からいうと、実は退屈な状態だ。 現代は退屈で満たされている時代なのである。

ゲームで表現されるものは、現代ではすでに満たされてしまっているものを欠乏させ、改めて 満たすというものが多い。

特に多くのゲームは、安全欲求のシミュレーションである。 危険で一歩間違えれば死にそうなシチュエーションの中、安全を確保するために冒険を続 ける…そういうゲームが多いのは、命のやりとりのない時代に生きているから、そういう体験が枯 渇しているからだ。 だからゲームを使って、本能的な緊張を味わうわけだ。

親和欲求とは、人と親しくなりたい、触れ合いたい、という欲求である。 これも現代ではウェブサービスやメールによる、感情の伝わりづらいインスタントなコミュニケー ションが増えたため、コミュニケーションの量は増えたものの、より親密な欲求に対しての渇望が 増えている。 特に都市部では人と出会う機会は多いものの、浅いコミュニケーションばかりなので、深いコ ミュニケーションへの欲求が高まっている。

ゲームでも、ソーシャルゲームによる、親しい人とのより密接なコミュニケーションを実現できれ ば、そのゲームは高い評価を受けると予想できる。

自我欲求とは、「認められたい」「自己承認されたい」そして「尊重されたい」という欲求であ る。 現代は、ちょっと優秀なくらいでは「普通」と評価される時代である。 ちょっとやそっとのことでは、認められないのだ。

だから現代では「褒められたい」という人が爆発的に増えている。

ゲームは、小さな成功体験の積み重ねで、大きな目標を達成するシミュレーターでもあり、 小さくたくさん褒めてあげることが可能だ。 もちろん大きな目標を達成したら、それだけ褒めてあげること。

そして、できるだけ困難な目標にチャレンジしてもらい、クリアしてもらって、盛大に認めてあげて、大きな達成感を味わってもらうことだ。

自己実現欲求とは、「自分の能力や可能性をすべて発揮して、なんらかを成し遂げたい」 という欲求である。 自分が持っているスキルや性質、そして「のびしろ」としての可能性をすべて発揮して、なにか を成し遂げたい、人は承認を超えると最終的にそういう欲求を抱くようになる。 自分の持てるものをすべてを使い果たして、貢献をしたいという欲求に至るのだ。

持てる力を全て駆使して、クリアまで至るゲームはけっこうある。 ゲーム内世界、要するに「虚構世界」におけるプレイヤーキャラクタの可能性は無限であり、 どんなことでもシミュレーションできる。

だからさまざまな形で、自己実現をゲームで達成させてあげることだ。 そこにある快楽は、人間が感じることのできる感覚の中でも最高のものになるだろう。

●ヒットを作るための普遍的な方法

目立つために、注目されるもの・権威あるものを流用して注目を集める手法は、どんな時 代でもよく使われる。

アメリカ合衆国のスポークスマンが、国旗やホワイトハウスの建物の絵をバックに話すのは、ア メリカの権威をバックにしていることを明確にしている。 これを「アンカーを盗む」という。

「アザラシのタマちゃん」がテレビで話題になったときは、タマちゃんを題材にした楽曲が多く出 た。

また、「生キャラメル」のヒットに合わせ、「生キャラメルパン」「さつまいも生キャラメルクリーム」 「白みそ生キャラメル」などの関連商品が続出した。 流行に乗じるとは、そういうことである。

流行というより、時代の流れとマッチしたことでヒットした作品に、「エヴァンゲリオン」がある。

「エヴァンゲリオン」は、時代と寝たといわれる。 「エヴァンゲリオン」は、当時の少年少女たちが世界に対していだいている心象風景を良く 表現したからこそ、社会現象になるほどの人気を博した。

・主人公のシンジは当時の年代の少年少女を映し出している。消極的でひきこもりっぽい性 格をしており、自己評価の低い様子を投影していた。

・レイはあらゆることに無関心だが、人間性を取り戻したいと思っている人たちを象徴してい る。

・アスカは元気で強がりだが、心の拠り所がなく、自分の居場所が分からない。自分のルーツ を探す人々を象徴している。

各キャラクタは、その当時の少年少女のメンタリティをよく表していた。 ちょうど「ひきこもり」や、(少し後だが)ニートという言葉が社会的に認知されてくる時期とか ぶっている。

「モノ」の足りない時代が終わり、生まれた時から「モノ」に満たされている子供たちが、成長 して思春期に入ったとき、そしてモラトリアム(成人になるまでの、不安定な猶予期間)の最中 に、「モノ」に満たされ、欲求のはけ口がない状況で、抱いたであろう思い。

そしてその状況から社会の価値観に順応できない若者が、自己評価を低くし引きこもって 自己の殻に閉じこもってしまった姿を、「エヴァゲリオン」のキャラクタ達は良く映し出したのだろう と思われる。

そして、作品が時代とシンクロすると、それを読み解こうとする人たちがどっと現れる。

「エヴァンゲリオン」の例だと、死海文書、ATフィールド、「エヴァンゲリオン」そのもの、使徒、 MAGI(マギ)システム、人類補完計画、あるいは、登場人物の性格類型などなどについて、 いろいろ解釈がなされてきた。 制作者の意図とは関係なく憶測や解読が行われ、ファンがさらにファンを呼んでいく。

ただ、注意しなければいけない点がある。 流行を追いかけるといっても、安易な流行りものは短期間しか続かないということだ。 大きな流行のうねりを作るには、常に情報を仕入れ、現代というものがどういうものであるか、 どういう世相なのか、ということを読み解く努力をすることだ。

そうして、それをゲームの登場人物やシステムに反映させていく。

そして忘れてはならないのは、普遍性を描くこと。 時代の流れに乗せて、普遍性を描くのである。

「エヴァンゲリオン」では、シンジとレイとが互いに惹かれあって愛を深めていく様に、万人が共 感した。 消極的なシンジが、レイを救うため、感情を剥き出しにして行動するところに、愛が表現さ れていた。

疲弊した時代の流れに共感しつつも、それを包む愛という普遍的な要素が物語に組み込 まれているのだ。

時代を捉えつつ、それを普遍性で包みこむ。 これが、時代を超えて語り継がれるメガ・ヒットの作り方である。

●質問1 ヒット商品は、なんらかの分野でナンバーワンにならなければならない。それはなぜ か?

●質問2 話題を作るために、なにをするのが効果的か?

●質問3 ターゲットとなるプレイヤーは、どうやって絞り込んでいくのがいいか?

●質問4 あなたの作品の「ウリ」を作るための、単純な方法があるとしたらなんだろうか?

■ 2 - 3 「 ウ リ 」 の 作 り 方

●USPとは

これまでに、主流と逆を行くこと、流行と反動を見極めることなどについて話したが、それに 関連して、マーケティングの世界での差別化の話をしたい。

「差別化」を表す用語に、マーケティング用語で「USP」という言葉がある。 USP とは

U unique                               S selling                               P proposition                            の頭文字をとったもので、市場において独自性のあるポジションを確保することである。

ここで、ポジショニングについて具体的な説明しよう。

●ウリとなるポジションの考え方

例えば、RPGを作るとする。 するとRPG市場があり、すでに他の会社のゲームがあるわけだ。 「ドラゴンクエスト」や「ファイナルファンタジー」、そのほか別のRPG大手が作っているもの。

それらの後を追ってしまうと、当然不利になる。

なぜかというと、先行してノウハウや技術を蓄積しているところに追いつこうとするのは時間が かかるし、非常にコストがかかる。

そして相手も対抗策を打ってくるし、なにより競争が激しくなると、値下げ競争という悪いス パイラルに入りがちになってしまう。

それよりも、RPGというジャンルにおいて、誰も確保していない、独自のポジションを得ること を考えた方が賢い。

なぜなら、人はナンバーワンしか記憶に残さないからだ。 だから、ナンバーワンになれるポジションをまず確保するのが、戦略として妥当なのである。

新たなポジションを作るうえでの注意点は、全く新しいものを考えるというよりは、「すでにある 大きな市場で、独自のポジションを確保する」ほうが、お客様を見込みやすいということ。

例えば、誰も手を出していない分野のゲームを作ったとしても、それに手を出して人柱になろ うとする人はあまりいない。 新しいものの実験台になろうとするのは嫌だと感じる人が多いからだ。

だから、既知の要素に、新規要素を付け加えるようなポジションを確保することである。 現在人気のある要素やジャンル+新規要素、というように。 このことについては詳しくは後述する。

人気がある要素には、普遍性が含まれていやすい。 そこに流行を交えた新規要素を加えていくと、目立つし、話題性がつかみやすく、ニュース記 事にもなりやすい。 そこから、口コミによる爆発的なヒットの可能性が生まれる。

ではそれを前提に、新規要素-ポジションの要となる要素-をどのように決めればよいの か?

それは、フォーカスを定めることである。

●フォーカスの考え方と、口コミのパターン

フォーカスするとは、「何かに的を絞る」ということ。

例えば、売れなかったゲームだが、その変わった世界観でちょっとだけ話題になった「猫侍」と いうゲームがある。 このゲームは、埋もれがちな RPG でなぜか「話題」になった。 この、話題になったきっかけに、ヒットの可能性が潜んでいる。

残念ながら「猫侍」はヒットには至らなかったが、話題性という意味では、だいぶ健闘したタイ トルだ。

では、なぜちょっとだけ話題になることができたのか? それはこのゲームが、一般に馴染みやすい「新規性」を持っていたからだ。

このゲームのフォーカスの絞り方はこうだ。

RPG+猫+侍

フォーカスを絞るとは、このように言葉の組み合わせを考えていくことである。 組み合わせを作っていくことで、コンセプトが絞られてくる。

「猫侍」の場合は、RPG という既知の人気ジャンルに、猫+侍という、奇妙な世界観を組 み合わせた。 奇妙であるがゆえに「クソゲー」感が漂うが、以外にもこのゲームはよく作られていることが発 売前のレビュー、前評判で伝わり、「今までにない世界観」ということで、少しだけ注目された のである。

ただ、奇妙であるがゆえに、「地雷」(試しに買ったら損するソフト)として躊躇されたことは確 かで、購入の安心感はなかった。 そこがヒットに至らなかった理由として大きい。

ヒットするゲームは、既知のジャンルに、安心感と新規性のある世界観が組み合わさってい ることが多い。 その安心感は、別の市場の既知のジャンルであることが多い。 例えば、映画や小説、ドラマ、漫画などにすでにある世界観である。

その表面的な安心感で買ってみて、遊んでみたらゲーム部分で大きく感情を揺さぶられ、 人に伝えざるを得なくなってしまうのが、口コミのパターンだ。

絞り込みの考え方としては他に、年齢と共通体験の要素がある。 例えば、

・「30 代」だと、「ガンダム」などのアニメの共通体験 ・「40 代」だと「ウルトラマン」など「特撮」の共通体験

といったものだ。 このように、世代ごとに共通体験が絞られたりする。

特定の世代、例えば一番層の厚いと言われる「団塊の世代」を狙いつつ、その中の特定の 属性を持つ人に注目して、

20 代後半+女性+子持ち

のゲーム世代を狙ったゲームを考えるとする。

すると、それを元に「扱うとウケるであろう題材」 が明確になってくる。

こうした方法でも、売れるゲームを絞り込むことができる。

ここで、 「絞り込んでいくと、購入する人の数が少なくなってしまうのではないか?」 と心配する人もいるかもしれないが、実際、ゲーム好きを100人連れてきて、なるべく多くの 人にゲームを売ろうとすると、その内容はとても無難な内容にせざるを得なくなる。

これではヒットは狙えない。 なぜかというと商品というものは、最初、「イノベーター」と呼ばれる、新製品に飛びついて試 してみる層が購入し、それをレビューするところから、売れるかどうかが決まるからである。 この「イノベーター」が評価しない、端にも棒にもかからないゲームは売れようがないのである。

しかし絞り込んで作ると、狙った条件にマッチする「イノベーター」は、高い評価を下してくれる ので、「イノベーター」が評価する商品を好んで買う「アーリーアダプター」という層が、さらに商 品を買ってくれることになる。

この「アーリーアダプター」は、良い商品であれば積極的に伝えてくれる層なので、この層が評 価するようなゲームを作れるかが鍵になる。

そこから、「アーリーマジョリティ」、「レイトマジョリティ」に広がり、最後に一番保守的な「ラガー ド」という層にまで伝わるということになる。

これは、「イノベーター理論」と呼ばれる理論なので、興味のある人は以下の URL で詳細 を見て欲しい。 http://www.jmrlsi.co.jp/mdb/yougo/my02/my0219.html

●フォーカスを定める

すでに釈迦に説法かもしれないが、ゲームを作るとき、ごてごてとたくさんの要素や画面、ゲ ーム要素を、ひとつのパッケージに入れてはいけない。

繰り返すが、それは大手企業だけができる物量作戦だ。

無駄に最先端のグラフィックや、物量を目指す必要はない。 それは、大手企業の得意分野であり、コストの面で勝てない勝負に挑んでいる。

コストがかけられないうちは、シンプル・イズ・ベスト、「テイクワン」を目指そう。 「テイクワン」とはなにか?

take one -それは何かひとつだけ選び取り、「徹底的にこだわること」である。

ひとつだけ、「テーマ」を選ぶ、                    ひとつだけ、「伝えたい感情」を選ぶ                  ひとつだけ、「作りたいシーン」を選ぶ                 ひとつだけ、「伝えるメッセージ」を選ぶ

そうすれば、そのゲームは「唯一のもの」になる。ユニークなものになる。 そうなれば、自然に目立つようになる。 先に出てきた、「20代後半+女性+子持ち」を狙う場合でも、その要件を満たすコンセプ トを、1つだけ選ぶことだ。

これが、フォーカスを定める、ということである。

ゲームで使うインターフェイスデザインについても同じで、

「ひとつの画面だけでゲームを作る」

ことを薦める。 これはどういうことかというと、つまり、1つのゲームに複数の画面モードを入れてはいけない、と いうことだ。

ほとんどの場合、コンフィグ画面やアイテム画面を作った場合、画面ごとのインターフェイスが 必要になる。 これは覚えることが多くなり、複雑さにつながる。 ライトなユーザーほど、「覚えることが多い」ことを嫌う傾向にある。
だから、インターフェイスにおいても、メインになるゲーム画面の上で、すべての操作が行えるよ うにすることが好ましい。

またコストの面でも、コンフィグ画面やアイテム画面をメイン画面とは別に用意すると、作業 コストがその分増え、時間的、金銭的コストもそれだけかかることになる。

ひとつの画面で完結させれば、それだけ小さい作業量でゲームを制作できるようになる。

作業量が減る分、こだわりたいひとつのことに集中しやすくなる。

ゲームが小、中規模のうちは、時間不足による作りこみの甘さができてしまうのを避けるため、 「ワンフェイス」(1つだけ顔を持っている)ゲームを作ることをお薦めする。

●だらけ、づくし、三昧にせよ

作品に強烈な個性を持たせる簡単な方法のひとつは、だらけ・尽くしにすることである。

例えば、以下のゲームは、少数だが特定のグループのゲームユーザーに、熱狂的なファンを 作れそうに思わないだろうか?

・戦車だらけのゲーム ・やたら銃の知識に詳しいゲーム ・馬だらけのゲーム ・夜釣りのノウハウが満載のゲーム ・さまざまな忍者がてんこ盛りのゲーム ・銀行強盗にフォーカスしたゲーム

こうしたひとつの物事にフォーカスしたゲームは注目を集め、取り上げられやすくなる。 そして、狙いどころを間違わなければ、必ず一定のファンを獲得することができる。

すでにある熱狂的なファンを抱えた市場を狙って成功したのが「ダービースタリオン」であり、 「グラン・ツーリスモ」である。

ゲーム業界の外の、熱狂的なファンのいる市場をねらうのは、ヒットの法則のひとつである。

熱狂的なファンのいる市場を探すには、どうすればよいか? ひとつの方法は、本屋に行くことである。

どこの本屋に行っても、必ず熱狂的なファンのいる分野のコーナーがある。
古くから残っているコーナー、分野ほど、流行り廃りがなく、熱狂的な固定ファンが多くいる 市場であると考えられる。 それを題材にすると、ヒットの可能性が高くなる、というわけだ。

そのような分野の例として、

・スポーツ                               ・ 野球
・ バスケットボール
・サッカー
・空手                                 ・ 柔道、剣道等の武道                          ・ カメラ                                ・ パソコン                               ・ 囲碁                                ・ 将棋                                 ・ ビリヤード                              ・ 釣り                                 ・ ミリタリー                              ・ 銃
・軍艦
・戦闘機                                ・ 乗り物                                ・ 飛行機                                ・ 車
・鉄道
・船
・バイク                                ・ 盆栽                                 ・ 競馬

などがある。 上に挙げた分野の中には、ゲームをプレイする年齢の問題もあるが、まだそれほど掘り下げ られていないものがある。 そこには熱狂的なファン層があり、そこをターゲットにすればヒットするゲームが作れる可能性 があるのだ。

だらけ、づくし、三昧以外の、ゲームを特徴付ける考え方は以下。

・どういう点において、全てのゲームと比べ、ナンバーワンなのか?      ・ どこがアウトスタンディング(非常識、群を抜いている)なのか?
・どういう感情の高さを実現するから、ヒットの可能性があるのか?

何かで突出しているゲームは希少性があり、特徴がはっきりしているため、注目されやすい。

例えば「プリンス・オブ・ペルシャ」というゲームは、キャラクタの動きの滑らかさや、アニメーション の細かさにこだわることで注目され、流行った。

大企業の出すゲームと比べてもひけを取らないゲームを作るためのコツは、一点集中するポ イントを、コストのかからないところにすることである。

「プリンス・オブ・ペルシャ」であれば、今なら3Dモデルをプリレンダリングした2D画像を使えば、 どこの会社でもそれほどコストをかけずに美麗な動きのゲームを作ることができる。

そのように、コストをかけずに大きな違いを出せるポイントを探すことだ。

●自分のゲームを、販売する前に売ってみる

次に、他のゲームとの差別化を考えるため、自分のゲームが他のゲームと一緒に販売店の 棚に並べられたらどう見られるか? を考えてみよう。

「ドラゴンクエスト」、「ファイナルファンタジー」、などの RPG がある中に、あなたの作ったゲーム が置かれたとする。

その際に、どのようにすればお客様は手に取ってくれるのか、買ってくれるのかを想定してみて 欲しい。 それが、販売する前に売ってみるという意味である。

「ファイナルクエスト」など名前をつけてしまったら、どう思われるか? 当然、「ドラクエとFFの組み合わせじゃん! パチモンだ!」 と思われてしまう。 そこで、どのように、対象プレイヤーを絞り込んでいくか、これまでの方法を思い返して欲し い。

あなたのゲームは、比較されている。

・他のゲームと比べて、どのような優位性があるのか?            ・ ありがちになってはいないか?                     ・ ほんの少し他と違うだけのゲーム―パチモンになっていないか?      ・ 埋もれるゲームになっていないか?                   ・ 差別化は図れているのか?
・どういうポジショニングになっているのか?

あなたのゲームは、ゲーム販売店に置いてあっても、これなら手にとって買うだろう、というもの になっていなければならない。

似たようなものになっていないか? 似たようなものになっているのであれば、お客様は迷い、より優れていると思うものを買ってし まう。 そこにあるのは、果てしない物量戦だ。

どういうことかというと、こういうことだ。 ゲームの中身はRPGなのに、おまけがいっぱいついている。 ミニゲームやらカジノやら、「面白さ」がてんこ盛りになっている。

テレビショッピングで、本体のすばらしい商品に加えて、 これもつけます。 これもつけましょう。 これも、これも… これだけ付けて、しめて、○○○○円です! …それと同じ状態だ。

だが中小企業や個人は、コストの関係でそのボーナスをつけることはできない。 そこで、フォーカスが大切になってくるのだ。

例えば、銃にこだわった RPG にフォーカスする。 ゲームを進めていくと、最近主流になっている銃を覚えることができ、さらにはそれらの音や重 さ、挙動、どこの軍で主に使われているか、などを、楽しみながら覚えられる。 その銃ができた経緯や、どこの会社がつくっていて、どういう点でほかの銃と比べて優れている のかなど、マニアックな知識も得られる。

こんな感じにすれば、銃好きにはたまらない。 「銃の経典」のようにまつり上げられ、「ガンをやるなら必ず買え」とまで言われるようになるだ ろう。 かつて、「ダービースタリオン」が馬好きの経典になったように。

あるいは、RPG+戦車。

ミリタリーマニアに「戦車のことであればこのゲームをやれ!」と言わしめるゲームを作ったら? 洗車の熱狂的なファンが、このゲームに集まるはずだ。

このように、あなたが一人勝ちできるゲームに仕上げることだ。 フォーカスを定めよう。

●ファンがどのくらい存在すれば、ゲーム会社としてやっていけるのか?

フォーカスを定める話をしてきたが、本当にフォーカスを定めてしまっていいのか? と思う人も まだいるだろう。 そのフォーカスした点に興味のない人たちを逃してしまうのではないか、と。

前にも説明したが、それは杞憂である。

どのくらいのファンがいれば、会社としてやっていけるのか、そこから考えてみよう。

日本に「面白いゲームなら買う」という人が、1000万人いるとする。 日本の労働人口は2000年で6000万人くらいだから、その約1/6である。 実際、ゲームを買う層はそれくらいの数に登ると思われる。

その中で、100人に一人しか興味のないものにフォーカスしたソフトを作ったらどうだろうか? そうすれば、熱狂的な1万人のファンができる。 会社的な利益を考えるとすると、粗利2000円のゲームを作ったとして、1万人×2000 円で、2000万円である。

粗利2000円のゲームというと、ヤフーゲームズで売っているゲームがそのくらいの値段で、新 しいゲームを出すと、そこそこ売れると週に1万本売れる。 この手のゲームを、年に数本作ったらどうだろうか? これは、れっきとしたゲーム会社として 経営できていることにほかならない。

どうだろうか? これくらいの利益が出るのであれば、十分なファンがいると考えていいのではないだろうか? これがさらに、日本の10倍の人口がいる英語圏にゲームを売ったとしたら、利益は単純に 10倍になる。

●「ウリ」を作る目的

あなたの作ったソフトがフォーカスされたものであればあるほど、そこに希少価値を感じて高確率で買ってくれる人が多く出てくる。

熱狂的なファンだから、次に販売するシリーズ化したゲームのリピート購入も期待できる。 気をつけたいのは、フォーカスするだけでは熱狂的なファンを作るには足りないということ。

ではなにが必要かというと、フォーカスされたものの面白さが、他と比べて群を抜いていなけれ ばならない。

面白さは、人の感情をどれだけ揺り動かしたかで決まる。 何度も言うが、ここが肝心なところで、この部分を実現できるかどうかで、ヒットするかどうかは 決まる。

どうしたら、ヒットするほどに感情を高めることができるのだろうか? これは他の章で詳しく説明するが、これを徹底的に追求してほしい。

緊張、感動、興奮、笑い、悲壮感、罪悪感、恐怖、などなど。

どんな感情にフォーカスするのか? 自分がプレイヤーにいだいて欲しい感情は何なのか?

徹底的に「感情の実現」を追求して、プレイヤーに、

「今までプレイしたゲームの中で、一番感情が揺り動かされた」

と思ってもらえれば、プレイヤーの中であなたの作ったゲームが、ナンバーワンになる。

そうすると、そのゲームはヒットの可能性がとても高くなる。

今まで観た映画や書籍、絵画などを見てきた経験など、あなたの実体験を通じて一番感 情が揺り動かされた場面を、ゲームに盛り込み、それを実現するべく、ゲームシステムを組も う。

あなたが「高い感情」を作り出せば、新しい基準が生まれる。 世の中に、守らなければならないお約束などない。 読まなければならない空気などもない。 世間の顔色を伺う必要はない。

業界初を目指せ。 新しい基準を作れ。

●質問1 「新しいもの」とは、なんだろうか?

●質問2 新しい企画は、そのままだと新しいがゆえに受け入れられない。ではどうしたらいい だろうか?

■ 2 - 4 新 し い も の を 作 れ 。 し か し 新 し い というな

●新しいものとはなにか?

新しいものというと、イロモノを作ってしまう人が多い。 それは流行にも普遍性にも配慮せず、突飛なものを作ろうとしてしまうからだ。 それは目立つものの、購入するには厳しいものになる。 誰も実験台にはなりたくないからだ。

8 本足の宇宙人だけが登場するプロレスのゲームを作ったとする。 珍しいことは確かだ。話題にもなるだろう。 しかし、そのようなゲームを誰が買うのだろうか?

新しいものとは、既存のものの新しい組み合わせに過ぎない。 だから今まで組み合わされていない組み合わせを見つけ、試すことが、新しいものを作る端 緒となる。

しかしだからとって、ただ組み合わせればいいわけではない。 その組み合わせの仕方如何で、ゲームが売れるのか、売れないのかは、明らかに変わってく る。 ここでは、その組み合わせ方について説明する。

●未知のものに親しみを持たせて興味を引く

人は、未知のものに手を出すのに大きな抵抗がある。 先の、8本足宇宙人のプロレスゲームは、ほとんどの人にとって未知であり、購入には大きな 抵抗がある。買って失敗するかもしれない、という公算が高すぎるのだ。

だから馴染みのない目新しい要素のあるゲームは、お客様の興味を引いても、そのまま埋も れてしまう可能性が高い。

そこを乗り越えてもらい、新しい要素を扱った自分のゲームに興味を持ってもらうためにはどう すればよいのだろうか?

それには、未知のものを既存のものと結びつけることである。

かつてカセットレコーダーが出て間もないころ、認知を深めるため「音のカメラ」というキャッチコ ピーを使った会社があった。

これなどは、当時認知が進んでいたカメラと結びつけてわかりやすくした好例である。 音を録音する機会というものがまだ世に出まわっていなかったために、それをどう使うのか、ど ういう場面で使うのか、という認識が、まったく一般人にはできていなかった。

そこで、当時すでに世の中に出まわっており、「記録する」ということの意味や楽しさの認識が 既にあるカメラを引き合いに出して、それと同じですよ、と、わかりやすさを引き出したわけであ る。

別の例で言えば、例えば面積を言う際に「何ヘクタール」というとわかりにくいが、「東京ドー ム何個分」と言うと分かりやすくなる。 これも、既知のものと組み合わせて、わかりやすくした例だ。

このように、既知のものや概念と結びつけると非常に理解されやすくなる。 だから新しいゲームを作ったときでも、これまでのジャンルの新しい派生というようにプレイヤー に提示することである。

世界観、ゲームシステム、ビュー、スクロール方向など、新しい組み合わせは無限にある。

そこに普遍の要素や流行の要素をうまく組み合わせ、これまでのものの延長線上として提 示するのが、一般への認知を広めるセオリーだ。

ただし、だからといって、既存のものの延長線上にあるものを作れ、というわけではない。

要は、「ゲームをどう説明するか」というときに、既存のものに照らし合わせたほうがわかりやす い、というだけで、ゲームの内容的には、まったく新しいものでもいい。

ゲームのしくみ研究委員会 http://www.n2gdl.net/
-38-
●質問1 ブランドとは、なにを作り出せばいいのか? 具体的に述べよ。

●質問2 ブランドを維持するために、なにをしなければならないか?

■ 2 - 5 ブ ラ ン ド を 作 る た め に

●ブランドとは?

ブランドを作るには、ひとつの色に染まることである。 たったひとつの特徴を持つことである。

例えば「斑鳩」や「グラディウス V」を作った、トレジャーという会社がある。 ここはアクションゲームの制作に定評があり、固定ファンも多い。 トレジャー=アクションゲームという認識が、ゲームプレイヤーの頭の中にはできている。

そのほかにも、あなたの頭の中には、こういう認識がないだろうか?

国民的アニメと言ったら? = ドラえもん、ちびまる子ちゃん、サザエさん 日本のRPGと言ったら? = ファイナルファンタジー、ドラゴンクエスト 日本の車メーカーと言ったら? = トヨタ、ホンダ 高級ファッションブランドと言ったら? = ルイ・ヴィトン、シャネル、コーチ Just do it. と言ったら? = ナイキ IMPOSSIBLE IS NOTHING と言ったら? = アディダス ソーシャルゲームと言ったら? = サンシャイン牧場

この、「◯◯=△△」という、イコールの認識を作るのが、ブランドを作るということだ。

では、このブランドはどうしたら作ることができるのだろうか?

まずは、自分が「=」にしたいキーワードを決めること。 そして、そのキーワードを常にアピールすることである。

例えば、自社を「ソーシャルゲームと言ったら?」とイコールにしたかったら、ゲームのロゴだけに とどまらず、ウェブサイト、マーチャント(関連商品)、自社ステイショナリー(文房具)、取材の 記事、とにかく露出するものすべてに「ソーシャルゲーム企業」という文字を入れる。

そして肝心なのが、ソーシャルゲーム市場の中で、確固としたポジションを確保することであ る。 つまり、ソーシャルゲームの中のどのゲームジャンルでもいいから、ナンバーワンを確保するこ と。 プレイヤーはナンバーワンしか記憶に残さないからだ。 これが最も強いアピールとなる。

ナンバーワンになるには、実力を示すしかない。 実力を示す上で必須条件として言えることは、「新しいこと」を初めてやったゲームが、ナンバ ーワンを狙えるということ。

できれば、エッジの効いたことをしたり、業界に問題提起をしたり、常識を覆す、「新しい」内 容であることが望ましい。

ゲームの面白さの実力だけでヒットするゲームもあるが、ヒットを確実にするために、話題にな る要素がいる。

そしてその話題の要素は、「あったほうがよい」という理由でとってつけたものではなく、ゲーム の「基準」を変えるべく、あなたが本気で考えた、非常識な要素でなければならない。

●ユーザーの期待を裏切らないこと

ひとつブランドができたら、そのクオリティを維持しなければならない。

維持し続けるには、忘れ去られないうちに、次のシリーズ作品を打ち出すこと。 しかし、それは前と同じようなレベルのものだと、目新しさがなく、だんだんと初代のインパクト が薄れていってしまう。 ではどうすればいいのか?

それは、ブランドイメージを維持しつつ、常に新しいことに挑戦し続けることである。 それが、ブランドのイメージを担保し続けることに繋がる。

ゲームの軸となる要素は変えないよう、ブランドのコンセプトを維持し、統一感を保つ必要が ある。 それには、そのブランドのコンセプトを明確につかんでいなければならない。 どうしても壊してはいけない部分を、はっきりと定めておく必要がある。

そうしないと、長期に渡ってブランドを維持した際、必ず飽きたからとそのコンセプトを破ろうと するスタッフが出てきてしまう。 コンセプトの定義が曖昧だと、「ブランド破り」が入り込む余地ができてしまうのだ。

最初のコンセプトを裏切らず、なおかつ常に以前作ったものを超えるチャレンジをしていくこ と。 これが末永く残っていく、強固なブランドを作っていくための必須事項だ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください